([か]5-1)いのちの代償 (ポプラ文庫 か 5-1)

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  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591111581

感想・レビュー・書評

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  • 第1章「死の彷徨」は圧巻である。ノンフィクションなので、史実に基づいて書かれている。冬山遭難でリーダーの野呂さん以外、10名の命が失われる。メンバーそれぞれの人となりについて、詳細に記載されているが、特に印象にはのこらない。一人生き残った野呂さんが、教師をへて事業で成功するくだりは、数行で語れば十分のような気もする。第1章で受けたインパクトがだんだん薄らいで完読。

  • 大変な遭難事故の本です。野呂さんの巻末エッセイは本文を読んだあとだと重みが違います。
    私は軽登山やキャンブをしますが、出来る準備はしたいと改めて思いました。

  • 遭難ものとしても良いし、遭難後の話が読めるのが魅力だが、遭難後の話が少し冗長にも感じた。とても良いのだが。

  • 1962年12月、北海道学芸大学函館分校の山岳部員が行った大雪山
    での冬合宿は、悪天候に襲われ北海道山岳史上最悪の遭難事故と
    なる。

    参加した11名中10名が遺体となって下山した。たったひとり、
    生き残ったメンバーが45年の時を経て事故の全貌を語る。

    体力の消耗から滑落する者、昏睡状態に陥り動けなくなる者と、
    10人の部員は次々と下山出来なくなって行く。

    自分だけでも下山して仲間の遭難を伝えなければとの思いで、
    凍傷に罹った両足を引き摺るように動かし、リーダーは山を
    降りる。

    生きていて欲しいとの願いも虚しく、悪天候と深い雪に阻まれ
    6か月を費やした捜索の末、10名全員が遺体となって山を降り
    ることになった。

    唯一の生還者に向けられる報道の集中と遺族の避難は如何ばかり
    であったか。両足共に踵を残しての切断手術に耐えたリーダーは、
    山の仲間たちの合同葬儀の為に追悼の言葉を録音する。しかし、
    その言葉は遺族によって会場で流すことを拒否される。

    生き残った者も、肉親を亡くした者も、深い悲しみを懐に抱えた
    ことだろう。

    だが、気になることもある。初めての冬山合宿で既に体力を消耗し
    ていた者がいた。加えて、気象情報で天候の悪化が分かっていた。
    それなのに、早目に下山行動に移ることなく予定していたスキー
    訓練を行っているのだ。

    結果論にはなるが、やはり判断ミスがあったことは否めないのでは
    ないだろうか。

    たったひとりの生還者の証言を元に、遭難当時の様子を丹念に追って
    いるのだが、本書後半部分の社会復帰を果たした後のリーダーの成功
    譚は興醒めである。

    生還者本人へのインタビューが基調になっているので仕方ないのかも
    知れぬが、最愛の息子を失った側の証言がないのは片手落ちか。

    良書ではあるのだが、読後感がすっきりしない。

  • 雪山で起こった悲劇
    生き残ったのはリーダーたった一人
    彼は死んだ仲間10人分の命を背負って生きている

  • 冬山の怖さは『八甲田山死の彷徨』で知ったが
    この物語でさらに強く印象づけられたのは
    天候の変化ではなく、人の、リーダの決断の難しさ。
    そして、魅入られたように不運が重なり最悪に導かれる運命。

    凍死体を見つけられない/見つける、凍死体の状態を描く部分に
    リアルな遭難の事実を感じる反面、
    生き残ったリーダーのその後の成功譚を描く部分に
    少し違和感を覚える。
    でも、これが人の命を背負った人間の精一杯な「生き抜く」 姿なのだろう。
    そうでなければ。。。

  • 時系列に沿って書かれた遭難手記です。
    といっても記録や会話を目で追って、「わあ、大変!」と読者に思わせる意図は全く感じられなかった。
    野呂さんにとって山に登ることは人生であって、遭難に遭ったからといって登山に対する情熱は何も変わらない。
    遭難から無事に生還した男は勇敢だと一人ひとりは思っていても、"1人っきりで"という部分にメデイアは惹かれたんでしょうね。
    野呂さんの人生、不謹慎な言い回しとは承知ですが、「山あり谷あり」まさに山登りです。

  • 遭難死に至った描写は迫力。当時「有名大学山岳部」に実績で大きく差をつけられていた「無名地方大学山岳部」元部長(絶対的立場)の「劣等感・功名心」が引き起こした悲劇。その後のこの人物の半生は真にルサンチマン的。当初は「リスクを知りつつ自らの意思で冬山々行した」メンバー遺族の一部が元部長を恨み続けたことが不可解だったが、こうした自己愛的人間性を感じ取っていたからでは?と自分なりに総括して読了。45年経た告白の真意を知りたい。

  • 1962年12月、北海道芸術大学函館分校山岳部のパーティー11名は、
    冬山合宿に入った大雪山で遭難した。
    部員10名全員死亡、生還したのはリーダーだけ。
    45年の沈黙を破り、遭難事故の全貌を明らかにした山岳ノンフィクション。

  • 常に前進
    壮絶

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。北海道生まれ。札幌在住。主な著書に、『永訣の朝』(河出書房新社)、『凍れるいのち』(柏艪舎)、『100年に一人の椅子職人』(新評論)ほか。『大きな手 大きな愛』(農文協)で、第56回産経児童出版文化賞JR賞(準大賞)受賞。

「2020年 『ラストアイヌ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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