([た]1-7)無芸大食 Tanabe Seiko Col (ポプラ文庫 た 1-7 Tanabe Seiko Collection)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591111963

感想・レビュー・書評

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  • テーマは「食」。いわしのてんぷら、ブイヤベース、オムライスなど…ストーリーにどんなふうに絡めて描くのか興味津々で読んだ。
    リズミカルな文章、軽妙洒脱な会話は相変わらず。フード描写は絶妙で、決して出しゃばらず埋もれすぎず、実に自然にキャラクターとストーリーを繋いでいる。時には何だか官能的。品を落としすぎないコミカルな下世話さが丁度いいんだよな。その匙加減って作者のセンスだよね。
    男女の悲喜交々が今回もあるあるで、よくわかっていらっしゃる…!と拍手ものです。発表された時代を考えるとジェンダー的には古いなと思うところが当然あるのだが、「古い」とは感じても、なくなったわけではないよね…今だって腹立つ物言いの旦那はまだまだいるよねと気付き、何とも言えない気持ちになったり。
    どの短編も楽しく読んだが、一番好きなのは「いわしのてんぷら」。男と女の駆け引きにドキドキ。丁度いい距離感について考えさせられる。そして今回も装丁がかわいらしいです!

  • 関西弁がこんなに可愛いなんて!!こんなに上品なんて!!ずるい。

    どきどきする恋も素敵だけど、穏やかに、そっと育む恋もいいなあ。大人の艶っぽい恋がしたくなりました。

  • 田辺聖子の描くおっちゃんらの可愛らしさったらなんなんでしょう。
    大阪弁でしゃべくるおっちゃんらは、よく食べ、よく笑い、よく遊ぶ。どうしようもない男であっても田辺聖子のてにかかると憎めないおっちゃんになってしまう。

  • 田辺さんの関西弁は大好き。小説は全く色褪せない。

  • 食べることも、料理を作ることも大好きな著者が送る、食にまつわる短編5編。

    田辺聖子さんの本、ずっと「読んでみたいなー」と思っていた。
    でも最近やたらたくさん本が出て(しかもどれも装丁がいい)、どれを読めばいいのかわらなくなっていたところ、「食」という文字に引かれて「これだっ」、と。

    とても読みやすくて、会話に大人になった楽しみともいうべき(?)軽妙な色気を感じたのだけれど、どうも私にはまだその雰囲気に入り込めない気がした。
    少なくとも、この本を読んで「歳を取るのっていいな」とは思わなかったのである。
    うーん、なんか、大人になって、大人になった自分を楽しむのにも、すごく紆余曲折を経なければいけないんだなぁ、と思ってしまった。まぁ、歳を取れば大人になれるわけではない、というのは当たり前といえば当たり前なのだけど。
    別の言い方をすれば、私はこの作品に出てくる人たちをそんな「歳を取っただけの」大人ではない、と思ったということなのかな。
    私が十年後とか二十年後とかにこの本を再読したら、どう思うのだろう。。

    もし田辺さんの作品で、もうちょっと低年齢層向けのおすすめ作品があったら、どうか皆様教えてください(^^;)。

  • 大人の恋愛小説です。特徴は「食」を媒介にしていること。キャピキャピしていなくて、色が綺麗に褪せていい色になったような落ち着いた文章です。

  • 大人な小説。なんだか艶っぽい感じがいいです。

  • はじめてしっかりと読んだ。食事のシーンが物凄く良い。いい大人がとても可愛らしい。

  • 2009.11
    料理が出てくる物語が好き。
    生活に密着している、家庭料理。
    関西弁のリズムがよくて、サクサク読めました。
    粋な大人になりたいもんです。

  • 今週に入り、いきなり冷え込んで、寒い。『We』入稿直前ということもあり、机でパソコンに向かっている時間が長く、あるいはちみちみと校正している時間が長く、寒さも加わって、この数日というもの肩まわりや腰まわりが凝っているようでちと痛い。

    2日前から湯たんぽを出し、昨日はヒーターを出した。そしてたびたび熱いお茶をすすりつつ、昨日はやっと最後の原稿が終わり(最初に書いたのを東京からオモロナイと言われ、書き直していた)、一息ついて、風呂でぬくもりつつ『無芸大食』(自分で買った本)を読む。ラッセルの『怠惰への讃歌』をだらだら読むために買うことにして、あわせて、読みたかったこれも一緒に買ったのである。ぬくぬくで布団にもぐり、眠くなるまで読む。

    食べるもんとおしゃべりとを書き込んだ短篇5つを編んだもの。食べるもんが出てくる小説集といえば、たしか『春情蛸の足』(私はむかしちくま文庫で読んだが、ことしになって講談社文庫でまた出ているらしい)があったなア、あれまた読みたいナーと思った。

    どれもおもしろかったが、表題作の「無芸大食」には、しっかり食べてすっとうんこを出すので上等やないのという秋江が出てきて、この秋江もええのやけど、夫の母のスエとの会話を読んでいると、

    「おいしおまっしゃろ」 とか、
    「おいしそうやな、よばれよか」 とか、

    生まれは高砂(兵庫)なれど、大阪のオバハンとして死んだ祖母の口吻を思い出すのだった。

  • このシリーズは本当に表紙が好きです。表題作は、タマゴの具合がどうのこうのというのが、セクハラもんだとは思いますが、「タマゴ」という卵子の比喩表現がそんな怒り?をも和らげてくれるような、実際いわれたらやはり怒髪天かなと思ったりもします。あとがきインタビュー?で、日本では食べ物のことを書いた小説は少ないと田辺先生がおっしゃっていましたが、山田詠美も同じことをどこかでいっていたなあと思い出しました。しかし、深酒をして、真夜中にスペイン料理を食べるなんて、おしゃれかつおいしそうだなとつくづく思った。

  • シリーズものが近ごろ続かない私にとって、この短編集のシリーズは数少ない例外です(笑)。今回はほかの巻よりも、登場人物の設定年齢がわりあい高めの、「食べる」場面をはさんだ会話劇。出てくる食べ物も、取ってつけたような高級なものではなく、フツーに商店街に買いに行くおかずだったり、男女の語らいに似つかわしいものだったり。『いわしのてんぷら』の、会社の元同僚との会話は、てきぱきしているものの、流れる雰囲気がいい感じ。『オムライスはお好き?』『はじめに慈悲ありき』の、さえない夫の堂々めぐりな考えには、「そうなんだろうなぁ」と思ったり。あとがき代わりのインタビューの、「ただ男と女が二人いてても色気は出るもの…(日本には)そういう色気を書く人があまりいない」とおっしゃるのには納得です。まぁ、好みも流行りもありますが、遠回りで、じりじりするほどの繊細なセクシーさが印象的な作品というのは、まだ海外作品のほうが多いかな?とちょっと思いました。まぁ、海外ものも「いきなりですか!」って感じのものが結構多いですが(笑)。今回は、「食べる」がメインの短編集だったからか、お洒落というより、家庭感のある作品が多かったです。田辺作品では『うつつを抜かして』の女性のような、衣装の描写を読むのも好きなのですが、今回は少なめかも。今回も楽しく読めましたが、いろいろな面で「うーん、私にはまだまだ修練が足りないな!」と思ったメニューのほうが多かったので(笑)、この☆です。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

田辺聖子の作品

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