- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591112496
作品紹介・あらすじ
だって、僕たちはつながってる。厳しくも美しい自然に囲まれた場所で、少年はかけがえのないものを知る。命のきらめきを描き出す、渾身の一作。新しい小川糸がここに。
感想・レビュー・書評
-
穂高の自然の美しさに魅了されました。
菊さんの生き様が、優しさが染み渡るような一冊ではないでしょうか。
こんなにたくさんいる生物の中で、唯一人間だけが、環境を破壊するだ
生きていれば、必ずいいこともあるよ。神様は、そんなに意地悪なことはしない。良い行いさえしていれば、いつか自分に返ってくる
菊さんが自分の体で手に入れた血の通った哲学。
私の地元、石川県は元日に思いもしない災害に襲われました。
大好きな能登の風景が変わり果てた姿になってしまいました。
震源から離れた地域に住む私たちにとっても、経験したことのない揺れでした。
被災した知り合いの人たちの生の声を聞くと居ても立っても居られなくなりますが、今できることは義援金を振り込むことしかないようです。
どうか、1日でも早く穏やかな日常を過ごせる日が来ますように。
The apple trees, insects, and grasses are as smart and cute as people.
We don't have to think that we are better than them.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「リリーは、空とおしゃべりするのが、大好きな女の子だ。ちょっと目を離すと、すぐに〈空の国〉に翼を広げて旅立ってしまう」から物語が始まる。いきなり「空の国」という言葉が出てきたので、これは前回のリボンのような鳥の話なのか?と、理解できないままに読み進めていった。が、後半は結構ハマってしまった。
穂高の恋路旅館に住む主人公・リュウ(流星)と姉・蔦子のところに毎年夏だけがやってくる従姉妹のリリー。
無邪気な子供たちが大人に成長していく心情と、穂高の自然を舞台に展開する物語。
子供の頃って、視界が下の方にあるので、今とは見ている世界も違う、思考も違う、1日の長さも違う。そんなことをこの物語を読んでいて、思い出した。私はサイドカーには乗ったことはないが、大抵のことが初めての経験で、経験するもの全てに驚きと感動があったなぁと、記憶をたどることができる。そして、その記憶も今となって薄れてきて、記憶は断片的になっている。
だから、リュウとリリーのように大人になるまで子供の頃の思い出を共有できる人が近くにいることは、素晴らしいことである。自分が忘れつつある記憶をともに補完し合うことができるだから、羨ましい。
そして、3人の子供たちが拾ってきた海。子供の頃、誰もが経験したことがあるであろうかと思うのだが、私も捨て猫や捨て犬を学校の帰りに拾ってきて、叱られたこともあった。その時の私にはリリーのように「生きとし生きるものは、みんな死ぬんだよ。死を怖がっていたら、誰とも、何とも付き合えないじゃない」なんて言葉は絶対に考えつかなかった。両親に言われて、無理矢理に自分を納得させ、諦めていた(あるいは泣き落としていたような気がする)。
こんなに強い言葉を発することができる子供って、感心する一方で、末恐ろしく感じた。
リュウのリリーと過ごす夏の描写でこんな一説がある。「夏だけが、太陽のような明るさで鮮明に輝いていた。山が色とりどりのパッチワークのようになる秋も、すべての罪をその下に隠してくれそうな雪景色の冬も、新緑の芽吹く躍動感あふれる春も、僕にとってはただただ夏を待つだけの退屈な時間に過ぎなかった。」
自然の季節の移り変わりが色の幅によって表現されていて美しく、うっとりとしてしまう。
自然、魂、生だと感じた表現が、リュウが菊さんに土に埋められた時「土の中があったかく感じるのも、こうしてたくさんの草が茂っているからだよ。人間はすぐ、雑草だからって抜いたり枯らしたりしてしまうだろ。でも、この世に神様がお造りになったもので、無駄なものなんて一切ないよ。無駄なものは、人間が金儲けのために作ったものだけだよ。地面に近い所にいると、いろんなことがよーく見える」と菊さんが説明している。菊さんが亡くなった時、リュウは、リリーに埋められた時のことを伝えているが、この言葉は伝えていないと思う。ただ、リリーは、リュウが言葉にしなくても、感覚で判っただろう。そして菊さんが土に埋められたリリーに耳打ちしている姿が目に浮かんだ。
「生きていれば、必ずいいこともあるよ。神様は、そんなに意地悪なことはしない。よい行いさえしていれば、いつか自分に返ってくる」誰もがそういう気持ちを常に持っていれば、世の中には犯罪がなくなるのに。これも菊さんの名言である。
本作はリリーの妊娠で話が終わっているが、リリーの妊娠でリュウがもう少し成長してくれたらいいなぁと、このふたりの家族の幸せを祈りたい。
余談であるが、本作で、「安曇野と穂高の違いが述べられており、穂高を安曇野と呼ぶのは、観光客と他の土地からのIターンでこの地に移り住んでいる人達だけだ。」を知った。長野の地理を全く知らない私にとっては、穂高は山の中で、安曇野は、穂高から降りてきたところかと思っていたのだが、イメージは正しかったのだと改めて知ることができた。 -
小川さんの本は 命がテーマなのかな。
この本も命に正面から向き合った内容でした。
人の命もそうだし動物も更に植物も含めて 生かされている命について丁寧に描かれていました。
家系図を描いていたら ファミリーツリーになったけど きっとこのファミリーっていうのは人だけじゃなく 他の生き物も同じって事。
この多くのツリーは 地球という大地に生かされているって事ですね。
-
表紙絵の中の草原を楽しげに駆けまわる白い犬を目にしただけで
涙が溢れてしまうほど、犬の「海」が素敵です。
曇りのない瞳で飼い主の流星をまっすぐ見つめ、
海の前だけでは正直で善良な自分でありたいと思わせてしまう
思慮深く、人間にも動物にも礼儀正しい海。
穂高での幸福感に満ちた日々と少年時代の純真さを象徴するのが海だとしたら
家族を襲った悲劇の後、喪失感に打ちひしがれて荒んでいく流星を
土の匂いのする叡智と慈愛で包む、ひいおばあちゃんの菊さんは
手にしたものも、手放したものも、清いものも濁ったものも全て受け入れて
逞しく命を繋いでいく、ファミリーツリーの象徴でしょうか。
自分の原付バイクに流星の自転車をロープで結びつけて山道を引っ張り
畑の穴の中に突き飛ばしてどんどん土をかけ、土風呂で心も身体も温めてしまう菊さん。
80代にして初めて上京して入ったスタバで食べた
ストロベリークリームフラペチーノの容器を大事に持ち帰り、野の花を飾る菊さん。。。
リリーが書いた立花家の家系図のてっぺんで
クリスマスツリーの星みたいに光る菊さんのように
そして、美しく清らかな記憶として流星にいつも寄り添い、支える海のように
後世に名を残すような偉業を成し遂げなくても
たくさんの人の心に残る名言を口にできなくても
この世に生を受けたからには
身の周りの誰かのために、
ささやかでも心尽くしの何かができる存在でありたい、と思わせてくれる物語です。-
はじめまして。
「ohsui」さんがこちらのレビューに花丸付けた事がキッカケで、まろんさんのレビューを知りました。
もっと、まろんさんの...はじめまして。
「ohsui」さんがこちらのレビューに花丸付けた事がキッカケで、まろんさんのレビューを知りました。
もっと、まろんさんのレビューが読みたくて、フォローさせて頂きました。私はあんなレビューしか書けませんが、よろしくお願いします。2012/10/17 -
kickarmさん、コメントありがとうございます♪
あんなレビューなんて、とんでもない!
もしもkickarmさんが、レビューに書いていら...kickarmさん、コメントありがとうございます♪
あんなレビューなんて、とんでもない!
もしもkickarmさんが、レビューに書いていらっしゃることを
もしもカフェの隣の席や電車の中で誰かとおしゃべりしていたら
耳を3倍くらいに大きくして聴き入ってしまいそうな、素敵なレビューです♪
こちらこそ、どうぞよろしくお願いします(*'-')フフ♪2012/10/18
-
-
小川糸ー好きな人と分かれるかな。
ツバキ文具店、キラキラ共和国、食堂かたつむり、ミトンに次いで読んだ本。
ツバキ文具店は凝って凝って凝りまくって
文具の多様さに脱帽した。
そして何より鎌倉に行きたくなる本!
ファミリーツリーは
穂高、松本にいきたくなる!
穂高や、松本が浮かんでくる「空気感」
はじめはなかなか作品に入れなくて
最後に、ファミリーツリーの意味に納得。
登場人物、菊さんはこんな風に描かれている。
植物だけでなくて
いろんなものに、いつもありがとう、ご苦労さんとか
話しかけている。
「自分の方が草や虫よりも偉いなんて思うなよ」って
流星とリリーの成長物語
読んでて楽しかった「この辺は」
そして彼らを取り囲む人たちの話
小川糸は
好きな作品と、受け付けないのと両方あるみたい。
好きな人は凄く好きかも、
自分は作品による
小川糸だからどれもこれも無条件にすきというわけではないかな。
今は作品に出て来た曲がわからなくても
ユーチューブで聞くことができる
今回は
「アクロスザユニバース」便利である。-
いつも拙いレビューを見てくださりありがとうございます。なかなか人様に伝わる文章が書けません。努力致します。いつも拙いレビューを見てくださりありがとうございます。なかなか人様に伝わる文章が書けません。努力致します。2020/04/23
-
-
2020(R2)2/24-2/29
「僕」と「リリー」の成長記。
小さなエピソードには心を動かされるけど、そこに一貫性を感じなかった。
主題は何?
「ファミリーツリー」だから、「命がつながっていくことの尊さと奇跡」?
それを、動物やら友人などと、「僕たち」を対比させることで描きたかったのかな?
淡々と読んで淡々と終わった。 -
遠縁の親戚のリリーと流星。
幼い頃から特別に輝いて見えたリリーと実際そういうことになるも、その関係は周りに祝福されず。。
愛人の子として育ったリリーが抱える複雑なもの。兄弟のように親友のように大切な犬の海を火事で失った流星。
戦争を経、人を好きになる気持ちや食べることの大切さを知り、野菜やハーブを育てながら恋路旅館を切り盛りしていた菊さん。
スバルおじさんと聴いたビートルズやハーレーダビッドソンの思い出。
ただの恋人同士でなく、親戚だから共有できた大事なものの数々。
命をつなぐ、ファミリーツリー。
ドロドロしたものをこれでもか!と詰め込んだ割にあたたかい読後感。 -
安曇野の中心地・穂高の旅館で育った男の子・リュウ(流星)。
曾祖母の菊さんが料理の腕をふるう古びた旅館の名は、恋路という。
両親を早くなくした父にとって祖母の菊さんは親代わり。
従姉というか、もう少し遠いややこしい関係の親戚だが年が一つ違いのリリー(凛々)は毎年、夏にやってくる。
スペイン人の血が少し入ったリリーは背が高く、子供の頃からエキゾチックな魅力があった。空を見上げて放心状態になる癖があり、どこか孤独な陰を背負っていた。
流星と姉の蔦子は3人で仲良く小学生時代を過ごす。
ドリームと書かれた部屋の大きなベッドで3人で寝たり。
スバルおじさんのハーレーダビッドソンのサイドカーに乗ったり。
遠出したときに見つけた捨て犬を海と名付け、みんなで可愛がるが…
思春期を迎え、リリーの複雑な家庭の事情を知るリュウ。
中学生で付き合い出すが、親の反対を受けて2年半会うのをやめる。
大学で東京に出て再会するが‥
沖縄出身の友達が出来るが、人妻に恋して大学をやめ、ホストになってしまう。
進路を見つけたリリー。進路を決められずに置いて行かれた気分になるリュウ。
親を気まずくなる思春期、菊さんのペンションの手伝いをしたりしていたが、大学になる頃には、かわいがってくれた菊さんともちょっと距離を置く。
穂高の風景描写が綺麗で、幼い頃の思い出が美しい。
十代後半の話には時々イライラするが、確かにそういう時期だよね。
いろんなことにぶつかり、やる気がなくなることも、苦しみあがくこともある。
カタルシスもあり、わかるところもあり。
感動的な結末へ。 -
人が
生き物が
生きて
死んでいく
そういう命のいとなみ、つながりを教えてくれる本だと思います。
たった2人の出会いから始まったファミリーツリーは、どんどん大きくなり、大木となる。
その間に、色んな生き物が死んで、生まれて
それを繰り返している
言葉にするのは難しいけど、生きるってままならないことばっかりだけど、悪いもんじゃないんだって、伝えてくれてる気がしました。
家族っていいなって思えました。
小川糸さんの描く物語は、しみこんでいくようです。
情景描写、心理描写がとてもリアルで美しい。
気が付いたらスーッとしみこんでいく感じです。
読んでる間は、切なかったり、悲しかったりするんだけど、読み終わったら「よかったね」って言いたくなる
そんな物語を書く人だなぁと思っています。
あと、20歳近くになってから出会って良かったなと思う作者ですね。
生々しさを、照れながら読むのではなく、受け止められる年齢になってから読めたのは私の幸運です。
隠さず伝えるまっすぐな文章がすごく好きです。