(P[に]2-1)私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル に 2-1)
- ポプラ社 (2009年11月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591114452
感想・レビュー・書評
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植物学者の兄・雄太郎と、行動派の妹・悦子。そんな仁木兄妹の活躍を描いた短編集。キャラクターたちのコミカルなやり取りと、ミステリとして練られた展開で、初出こそ昭和30年代ながらも、今のユーモアミステリやキャラミステリと比べても、決して遜色はないように思います。
印象的な短編は「黄色い花」
植物学者である雄太郎ならではの視点から見つかる解決の糸口から、ロジックを突き詰めてのトリックの解明がお見事な作品。
「灰色の手袋」はクリーニング店での取り違えから、事件が展開されます。少しずつ明らかになってくる登場人物たちの不審な行動、そこの場面のつなぎ方が巧く感じました。少しずつ推理の材料がそろってきて、そして伏線の回収と推理と、短篇ながらまさに正統派の本格ミステリといった感じ。
「ただ一つの物語」は手作りで作られた絵本の謎をめぐる短編。悦子が今は亡き友人から贈られた絵本を狙う怪しい人物たち。絵本に隠された秘密が話を引っ張り、そして過去の事件も交差して、読み応えがありました。
この短編では悦子は結婚し子供もいるのですが、その子供たちの描写であったり、友人のことに想いを馳せる悦子の内面描写も印象的な作品。
最初に収録されている「緑の香炉」では二人は中学生ですが、最後に収録されている「ただ一つの物語」では悦子は二児の母になっていて、作中の時間の流れも楽しい作品でした。
また解説では著者である仁木悦子さんの人生についても紹介されていますが、これも興味深い。
仁木悦子さんは4歳の時に病気のため半身不随となりながらも、大人になってから執筆をはじめ、当時女流ミステリ作家が少ない中、1957年に江戸川乱歩賞を『猫は知っていた』で受賞。著者の性別や経歴で注目を浴び、作品は異例の大ヒット。その翌年に松本清張の『点と線』が発売され、清張につながる推理小説ブームの火付け役、そして今の女流ミステリの先駆者として解説の戸川安宣さん(東京創元社の元社長)は仁木さんを評価されています。
「ただ一つの物語」に関しての仁木さんと編集者のエピソードも面白い。本物のミステリ小説さながらのエピソードや、心温まるエピソードもあって、解説自体も面白く読めました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かわいいふりして結構、本格。
短編が五編。
大きな仕掛けがある訳ではないですが、隅々まで行き届いた伏線と思わぬ展開に引き込まれました。
意外と血なまぐさい事件も多いのですが、仁木兄妹の軽妙なやり取りに、ほっとさせられます。そしてなにより、作者仁木悦子の人間に対するまなざしが優しい。登場人物たちはちょっとずるいところがあったり弱いところもあるけれど、それぞれみんなちゃんと生きています。
トリックのための物語ではなく、物語として面白く、尚かつミステリとしてきちんと成立している。そんな作品が僕は好きです。
『ただ一つの物語』が特に素晴らしく、巻末の解説で作者の人となりを知って読み返すと、また味わい深くなります。 -
ありがとう戸川さん!と全力でお礼を言いたいです。日本の女流ミステリ作家の草分け、仁木悦子さんの傑作選。この仁木兄妹のシリーズが一番好きなんです。ほとんどが前に読んだことのある作品であっても嬉しい。登場人物紹介の悦子はもうちょっとふくよかな気もしますが、イラストもかわいらしいし。シリーズ中の時系列に沿っているので、仁木兄妹の中学生時代から悦子が二児の母になるまでを読むと、オバサン的な感慨深さもあります。ばあやじゃないけど「あのお転婆さんがお母さんだなんてねぇ…」と。シリーズ全作、文庫で復刊してくれたらいいなぁ。
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仁木兄妹シリーズ。
YAだからか漢字が少なめな感じ。最後のだだ一つの物語以外は既読。人間のちょっとばかり外に漏れ出た意地悪を書くのが上手い。 -
『猫は知っていた』を読んでみたいと思っていて、その前にこちらを読んでみた。これまで書籍に未収録だった話も入っているそうだ。
仁木兄妹が成長していって、さまざまな年代のお話があり、
「ただ一つの物語」がよかった。
昭和の話だと思って読んではいたが、さらっと「疎開していたとき」なんて書いてあるので思った以上に上の世代の話なんだなぁと逆に驚いた。とても読みやすいので、ミステリーの入口としてもオススメ。
表紙の絵もかわいい。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/684238
続編の『猫は知っていた』は第3回江戸川乱歩賞を受賞したベストセラーに。
装飾系男子な兄と好奇心旺盛な妹が、遭遇する事件に挑む「仁木兄妹」シリーズ。 -
仁木雄太郎・悦子兄妹の事件簿。5篇の短篇集で、兄妹の年齢順に並べられている。編者の戸川安宣による選りすぐりの作品だけあってどれも佳作。最初の事件は兄妹がまだ中学生の時分、最後の事件では悦子は2児の母になっている。収録作品は、みどりの香炉/黄色い花/灰色の手袋/赤い痕/ただ一つの物語。
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「猫は知っていた」に続く読了。猫は…のほうはキャラに全く共感出来ず残念…だったのですが、今作はなんともスイスイ読めて、悦子も雄太郎もすごく良いなぁと思いました。短編だったのが良かったのか、獅子文禄を読んで気持ちが変わったのか…とにかく昭和の時代背景も素敵だし、雄太郎の推理も悦子のちょっとおてんばぶりも良いなぁと思いました。そしてやっぱり表紙も素敵☆昭和が好き&ミステリ好きなら、読んでみても良い作品だと思います。また巻末に作者、仁木悦子さんの紹介がされており、それも興味深かったです。