([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)

著者 : 小川糸
  • ポプラ社 (2010年1月5日発売)
3.62
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591115015

作品紹介

同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時にあまりに多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。山あいのふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。巻末に番外編収録。

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 本書の主人公が作る料理は、「私が考えたステキ」か「私のためのステキ」で出来ています。
    一事が万事「私」で味付けされた料理からは、こんなお店ステキでしょ、こんな料理ステキでしょ、料理は私の祈りなの!という、独りよがりなエグみばかりが感じられ、恋人の喪失や家族の死といった大事件さえ、その主張の前では単なる付け合せに過ぎません。

    作中に登場する料理の種類は豊富です。
    けれど、こだわりの食材紹介や調理手順については事細かに描かれる一方、肝心な筈のお客の食事描写があまりに乏しく、殆ど印象に残りません。
    食べる、料理の出来を褒め称える、料理のおかげで奇跡が起こる、この流れが当然のように繰り返されるだけなので、まるで空っぽのお皿を前に、おしゃれな料理写真を延々見せられているような気分になります。

    主人公の料理に対する信条にも疑問が残ります。
    完全予約制、おまけに事前に面接日まで設けて相手の好みやプライベートを事細かに調べ上げるとしておきながら、店作りの恩人に振る舞うカレーは、結局自分と恋人との思い出にまつわる一品であったり、長年喪に服しているお妾さんに対しても勝手な献立を立て、「万が一料理を残されたら自分が食べればいいのだから」と開き直る主人公からは、お妾さんの食事の時間を台無しにするかもしれない事への罪悪感が微塵も感じられません。
    食材の生産者に対して直接お礼を伝えたり、家畜に対する感謝を語る場面もありますが、食育的な思想だけが上滑りしているように思えました。

    後半は家族の絆と哀しみからの再生が主軸となりますが、それまでの物語があまりに貧弱なため主人公に感情移入できず、唐突に差し挟まれる下品な表現に顔をしかめつつ、台本通りに事が進むのを見守る他ありませんでした。

    おとぎばなしの食卓にしては生々しく、現実の食卓にしては胡散臭い。
    小説としても、お世辞にも上質とは言えないように思います。

  • ずっと読もうか悩んで読まず、『蝶々南々』を先に読んで、
    割と良かったのでこちらも読んでみました。

    たぶん、こっちを先に読んでいたら『蝶々〜』は読んでなかったかも。

    『蝶々〜』にも感じましたが、この作家さんは、美しく書いた物を、
    わざと汚す…と言うか、リアリティを出そうとしてなのか、理解できない表現をするところがあります。
    それが唐突でわざとらしく、違和感があり、私には受け付けない部分で、
    『食堂かたつむり』の方によりそれを強く感じました。
    こんな方法を取らなくても、いくらでも雰囲気を壊さずにリアリティのある、素敵な作品を作れるだろうに。
    その最たるものがエルメスの下りであり、また食堂に嫌がらせをする客であり、
    ネオコンのセリフだったりするのです。

    おかんとりんごちゃんの関係を、もっと掘り下げるか、お客さんとのやり取りに重点を置くか、熊さんとの関係を発展させるか、
    しぼって書いて欲しかったです。
    この食堂に来たお客さんがどんな風に幸せになったか、伝わって来たのはお見合いカップルの部分だけでした。
    残念。
    勝手に高田郁さんのような物語を想像した私がいけないんでしょうけど。

  • あらゆるものを失っても力強く生きている倫子、何かかっこいいなぁ。
    ゼロからの出発。再生の物語。
    言葉を発しなくても、自分を表現する方法がいくらでもあるのだ。
    生きるってこういうことだったんだ。
    まわりのせいにすることなく、一人で立ち上がること。

    心を込めて料理をすること。
    そうすると、自分も幸せになる。
    まわりも幸せになれる。

  • えぐい、としか言いようがない。かわいらしいマカロンの中に、魚の臓腑が詰め込まれているようなえぐさ。
    倫理観がどうのとかそういう問題じゃなく、ただただ不快。文章軽いのにな…

  • いろんな意味で後悔。
    時間もったいなかったなぁ…。

  • くそうくそう。
    『映画化!』にまた釣られました。

    風景や料理のひとつひとつの描写には「巧いな〜」と唸らせる箇所がたくさんありましたが、ひとつの作品として見渡した時に、雑というか強引というか都合がいいというか・・・。

    一般受けしそうな「要素」を並べただけのおはなしでした。
    めでたしめでたし。

  • この本の良さがさっぱり分からない。客を選ぶ食堂ってなんだかなぁ(食堂に限らずだけど)。美味しい料理は人を幸せな気持ちにさせると思うけど、なんだか上手く行き過ぎ。そして「声」も取り戻しちゃうし。そんなに人生甘くないと思うけど。深いようで浅くて、暖かいようで冷たい話。母親が死んじゃう意味も、エルメスが食べられちゃう意味も本当に浅い。エピソードとして必要なのかな?病気や死が描かれていれば、深みが出るなんて思ってないよね?あー、久しぶりに無駄な小説読んじゃった。テレビの批評ってあてにならないのね。映画化されるからって原作が良いとは限らないのね。

  • 小川糸さんの本はつい最近「サーカスの夜に」を読みました。それもこの「食堂かたつむり」もどちらもいいですね。他のももっともっと読んでみたくなります。

    恋人にひどい捨てられ方をした主人公が地元に帰り、食堂を開くお話なんですが、来てくれるお客さんその人のためだけにメニューを考えてサーブします。その特別感と言ったら半端ない。
    肉も野菜もひとつひとつに丁寧に向き合って、命を頂くことに感謝しながら料理する。その光景が読みながら鮮やかに頭に浮かびます。

    おかんが大事にしていた飼豚(!)のエルメスの最期も描写されていて、読みようによってはグロテスクなんですが、命を頂くというのはこういうことなんですね。

    食堂かたつむりのような店が近くにあったらいいな。
    これ映画にもなったんですね。知らなかった。

  • 主人公(25歳女性)と同棲していたインド人の恋人が家財道具を一切合切持ってドロン。
    主人公に残されたものはおばあちゃんの遺品でもあるぬか漬けの壺だけ。
    ショックで主人公は声が出せなくなってしまう。
    ぬか漬けだけを持って失意のうちに実家に帰った主人公は、料理の腕を活かして、仲の悪い母親などに助けられて食堂を開く。
    この食堂が変わっていて、1日のお客は1組だけ。
    メニューは特に決まっておらず、お客と事前に面談を行なって希望を聞いてメニューを決める。
    この食堂で食べると希望が叶うというような不思議な評判も立ったりしてして、そこそこ順調。
    そうこうしているうちに母親が言ったのは…

    というような内容でおとぎ話的な純粋なほんわか小説ならまだ許せるんだけど、なんか主人公の考え方が気持ち悪いんだよ。
    自己中っていうか。
    あと作者が何を考えているのか、「どうしてここにそういう表現を入れるのかなあ?」というのが多数。
    早朝のバス停から実家に帰る途中でおしっこがしたくなって草むらで用を足した、という記述がなぜ出てくる?
    おそらく、まあ生きるってことはファンタジーじゃないんだよ、ということなんだろうけど、それにしても。

    あと、主人公を殴りたくなったのは次のシーン。
    主人公が小学生だった頃からの知り合いの熊さん(40~50歳くらい? アルゼンチン人の奥さんとは別居中)は食堂のリフォームなどを手伝ってくれた恩人。
    クリスマスの夜、熊さんに手伝って貰って、普段はやらないケータリングをやった。
    その帰り、雪が止んで、一瞬綺麗な星空が見えた時のシーン。

     ほんの一瞬雪が止んで、そこには無数のかすかな光が、灯し火のようにまたたいていた。
     熊さんが望むなら、一回くらいキスしてあげてもいいよ、と思えるくらいの、魔法をかけたみたいな星空だった。冷たい空気が、五臓六腑にまで染み渡っていく。(文庫版 157頁)

    あー 殴りたい! 殴っていいよね?

    あと、主人公(倫子)の実の母親だが、不倫でできた子供だから「倫子」と名付けたのだと子供の頃の主人公に言うのはいかがなものか。照れ隠しだったそうだが気持ち悪すぎる。
    ぬか漬けもあとで活躍するのかと思ったらそんなこともなかった。
    最後は、とあるものを食べて主人公が元気を取り戻すんだけど、ここの話の流れも唐突。
    感動すべきシーンなんだろうけど「なんじゃそりゃ」と本を一瞬投げ捨てたくなった。

    ということで★1つ。読むだけ時間の無駄でした。

  • エビカツという読書会で知った一冊、さらっと読めました。

    とある事から声を無くして故郷に戻った料理人が、
    一日に一組しかとらない食堂を始めることになります。

    自然の恵みに囲まれた中で、物語を彩る料理がおいしそうなこと。
    特にザクロカレー、食べたくなりました。

    - 私にとって、料理とは祈りそのものだ。

    そんな"想い"につつまれた料理は、人々に静かな幸せをもたらしてくれます。
    おかんの話がちょっと荒唐無稽な気もしましたが、とてもやさしい物語でした。

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