引き出しの中の家 (ノベルズ・エクスプレス) (ノベルズ・エクスプレス 7)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591115961

作品紹介・あらすじ

時を経て約束をかなえた、"花明かり"と二人の少女たちの感動の物語。朽木祥渾身の長編ファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  • 継母との折り合いが悪い七重は、亡母の実家で、祖父母と叔母夫婦とともに暮らすことを選んだ。そこには、亡母が子供の頃に作ったミニチュアがたくさんあって、彼女が持参した引き出しの中の家にちょうどよく収まった。その家に「小さい人たち」が住んでいたという言い伝えとともに、あちこちに隠し収納や扉があり、その一つには、「花明かり」についての覚え書が入っていた。七重は、花明かりのために自分の引き出しの中の家が使えるのではないかと考える。祖父から小さな人の目撃情報がある木を教えられた七重は、その木の穴に小さな花瓶を入れてみたところ、しばらくしてそれが消えていた。後に入れたものも次々に消えていった後、彼女はついに花明かりと遭遇する。

    女の子と小さな人たちとの世代を超えた交流と、周囲の人達の温かい眼差しを、繊細に描いた物語。






    *******ここからはネタバレ*******

    ロニコさんがくださったメッセージにこの本があったので、読んでみました。

    どうも私は、ファンタジーにうるさいらしくて、ヤービとか守り人シリーズとか、富安陽子さんものは好きなんですけど、その世界に入れないものはダメなんです。

    で、同じ朽木祥さんの「月白青船山」が私には今ひとつだったので、これは私がうるさすぎるのか?と思って、作者さんが同じこの本を読んでみました。





    なんと可愛らしいお話なのでしょう。
    ドールハウスに憧れる女の子たちは(男の子たちも)虜になってしまうのではないでしょうか。
    小さい人たちと少しずつ心を通わせていく様子には、心躍るものがあります。

    七重が果たせなかった約束を、世代を超えて薫が、周りの人を巻き込んで果たしていく姿は、先日読んだ「月白青船山」を思い出させますが、それよりは遥かにシンプルでわかりやすいお話です。



    七重の物語の中で、継母がとても嫌な役割を果たしていますが、それはなぜなのでしょうか?
    彼女を居づらくさせて、亡母の実家で過ごさせ、挙句の果ては離婚して再婚までしている。そしてもちろん、実家では「意地悪な継母」と呼ばれている。
    ……いやぁ、世の中の継母の憎まれっぷりに、久しぶりに気が悪くなりました。
    実は私、継母経験者で、今はもう継子ふたりは大きくなって自分の家族を持っていますが、それなりにいろいろあったので、こういう書かれ方をしているのを見ると胸が痛みます。だって、実の子相手でも、そういう親っているじゃないですか。……少ないかも知れないけれど。



    認知症を心配された薫のおばあちゃんは、薫がいる間は、全く普通のおばあちゃんですね。寂しさからくる、一時的な落ち込みだったのかも知れませんね。

    七重さんが生きていることがわかっても、どうして薫たちは七重さんにすぐに連絡を取ろうとしないのでしょう?年齢的にも、急いであげたほうがいいと思うのに。

    薫がミニチュア物を集めて桜子に送って、リカちゃんのドレスをパンプスを桜子が着たエピソードは、私にはちょっと興醒め。だって、花の香りをさせたり、花を照らす彼らが、そんなプラスチックものに身を包んでほしくなかったから。後でお直ししてくれたときは、ホッとしました。でも、きっと、着心地は良くなかったでしょうけど。


    自分の家の周りにも出てこないかなぁと思わせる一冊。
    高学年からオススメです。

    • ロニコさん
      図書館あきよしうたさん、こんばんは^_^

      こちらにもコメント書かせて頂きますね。
      しつこくてすみません。

      あきよしうたさんのレビュー、本...
      図書館あきよしうたさん、こんばんは^_^

      こちらにもコメント書かせて頂きますね。
      しつこくてすみません。

      あきよしうたさんのレビュー、本当に読みやすく、お上手だなぁといつも思います。
      ご紹介した割に細かい部分を大分忘れていたので、レビューを読ませて頂き、思い出しました!
      また時間をみつけて再読したいと思います。
      2020/06/14
    • 図書館あきよしうたさん
      ロニコさん、コメントありがとうございます。

      レビュー褒めていただけて恐縮です。
      素敵な本を教えてくださって、ありがとうございました。...
      ロニコさん、コメントありがとうございます。

      レビュー褒めていただけて恐縮です。
      素敵な本を教えてくださって、ありがとうございました。

      私自身のファンタジーの嗜好が偏っているようでちょっと悩んでいたんですけど、楽しめる作品があったので安心しました。

      またいろいろ教えてくださいねー。
      2020/06/22
  • ハッピーエンドで良かった。
    2部構成になっていて
    最初の時代が淋しい終わり方だったので
    ドキドキしたけれど
    ちゃんと回収されてホッとしたよ。

    一時期ドールハウスの本が好きでした。
    あんな風に引き出しの中の家を作れば
    この本の「花明かり」と
    主人公の女の子たちのように
    優しい交流が生まれるのかもしれないなぁ。

    ちなみに小さい人と言えば…で
    『床下の小人たち』が出てくるのが
    平成の作品っぽいわ。
    昭和ならコロボックルだぜ…。

  • 個人的に大好きな朽木祥さんの作品の中でも、「かはたれ」「たそかれ」に続いて心に残る作品でした。

    旦那が建築関係の仕事をしていて少しは建築物に興味があるので、ライト式の家を想像するだけでも素敵な気分になれました。

    第一部の終わりはショックでしたが、全く違う話かと思っていた第二部に時代を超えてつながっていて、登場人物一人一人の感情が痛いほど伝わってきて、すべてが明らかになったわけではないけれど、余韻の残るいい終わりだと思います。

    おもちゃなどなかなか買ってもらえませんでしたが、粘土で家具などを作ってままごと遊びをしていた頃を思い出しました。

    高学年の子、そして大人にもおすすめです。


  • 思いがけず良い物語だった。二組の女の子の友達、両方すてきだ。おばあちゃんだって、女の子だったんだから。

  • 多くの女の子が夢見る手作りのドールハウス。
    そこに、もしも本物の小人さんが住んでくれたら…。
    そんな、素敵な願いのいっぱいつまった物語。

    1960年代と2000年代、ある田舎の洋館を訪れた二人の少女は〈花明かり〉呼ばれる小人と出会う。

    時代が変わっても人から人へ受け継がれてゆく気持ち。
    特に、薫という女の子のがんばりには、心温まる思いがした。
    不器用ながらも、まっすぐに周りを思いやる彼女の温かい気持ちが、彼女の作る形は悪いけれどびっくりするほどおいしいクッキーによく表されていると感じた。

    何度でも読み返したくなる良作。

  • 『花明かり』と呼ばれる小さな人たちと、女の子の心暖まるお話。

    二つの時代の二組の女の子たちのお話です。(それぞれ血縁者で舞台は同じ)

    小さくて可愛いもの、古いお家、隠し部屋、お菓子づくりなど、昔ながらの児童文学を彷彿とさせる。

    文も装丁も美しい。

    上質なお菓子みたいな本。

  • 小さな小さな人たちと、時代を隔てた二人の女の子たちのあたたかな交流を描いた、朽木祥、渾身の感動長編物語。

    いつもはお堅い政治や自己啓発の本やばかり読んでますが、家族に勧められて読んでみた・・・

    いい年した おじさんの私にも しんみり来るお話でした!

  • 仕事のための、再読。

    大好きな本なので、ほんとうは、
    しばらく読み返さないで、こころのなかで
    大事にしていたかったのだけど。

    たまらなく、かわいらしいこもの、美しい自然、
    ロマンチックなこびとたちを、描きながら、
    時を経ても変わらないものの存在を、
    やわらかい糸でふんわりと包むように示してくれる、ファンタジー。

    小さなもの、生きているもの、人の想いのこめられているもの
    ひとつひとつ、愛しみをこめて、丁寧に描き出され、
    ものがたりに、息吹を、吹き込んでいます。

  • 「時を経て約束をかなえた、"花明かり"と二人の少女たちの感動の物語。朽木祥渾身の長編ファンタジー。」

    この物語に出てくる継母は、著者の実母がしていたことであるらしい。
    「大人になったわたしが振り返って思うのは、このような状況を読み解くキーワードは、たてい親が自分のしていることに「無自覚である」ということです。どこかで子どもの気持ちを無視して自分の価値観や趣味を押し付けてしまう。そうういう親は虐待をしているわけでも育児放棄をしているわけでもなく、むしろ親のつとめをはたしていると見えることが多いので、だれかに責められることもなく、残念ながら自分を省みる機会も少ないのです。ーもしもあなたが自分の気持ちを大切にしてもらっていないと感じ、そのためにご両親のことが好きでないとしたら、それはむしろ自然なことです。あなたは自分を悪い子などと責める必要はありません。」
    (『10歳の質問箱ーなやみちゃんと55人の大人たち』小学館 p163 Q「お父さんとお母さんのことがきらいです。わたしは悪い子ですか?」の返事より)

    「引き出しのなかに小物や紙粘土で作った小さな家具を並べる。お母さんと一緒につくった大切な場所だ。ベッド、台所、お風呂もある。ある日、ちいさなソファにだれかがすわっていた!」(『キラキラブックガイドより』)

  • 大人が読んで、とても入り込んでしまった。あっという間に読み終わりながら、もう一度読み返したくなった。 切なさとかわいらしさと美しさが同居する、どの世代の人が読んでも共感できる1冊

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著者プロフィール

広島出身。被爆2世。
デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学習研究社)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞、福田清人賞受賞。『あひるの手紙』(佼成出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。ほかの著書に『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『月白青船山』(岩波書店)、『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)などがある。
近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。

「2023年 『かげふみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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