(P[に]2-2)猫は知っていた 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル に 2-2)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591116777

感想・レビュー・書評

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  • 昭和32年に出版された物語だという。
    驚いた。少しも古さを感じさせないストーリーとミステリーとしての面白さが詰まっていた。
    設定が昔なので、もちろん現代とは状況が違う。
    炭切りのおじさんが登場したり、テープレコーダーが珍しい機器のように登場したりする。
    巻末にある解説を読むまで意味がわからないところもあったりした。
    けれど、物語の展開には少しも影響していない。
    仁木兄妹の会話も軽妙で、陰惨な連続殺人事件でありながらどこか明るさを感じさせる。
    直木賞受賞というだけでなく、2012年版東西ミステリーベスト100にも77位でランクインしている。
    タイトルだけは知っていたのでいつかは読んでみたいと思っていた物語だった。
    そしていま、読み終えて思うのは読んでよかった!
    派手なトリックや大仰な仕掛けはないけれど、ミステリーの醍醐味が詰まった物語だった。

  • レトロな世界観だけど、古臭くない。60年前に出版された本とは思えない。
    軽めのミステリーが読みたいなと思って手に取ったけど
    真面目に,丁寧に,けれど楽しみながら書かれたんだろうなということが
    伝わってくる本。

  • 江戸川乱歩賞を受賞した、仁木悦子さんの代表作でありデビュー作です。
    仁木兄妹コンビシリーズ。
    物静かで洞察力のある、植物学を専攻する兄の雄太郎と音楽の才能をもつ、ちょっとお転婆な妹の悦子。
    今回彼らの巻き込まれた事件は、下宿したばかりの病院を舞台に起こります。
    病院の敷地内で次々と起こる奇怪な事件。
    倉庫に閉じ込められた老女、盗まれた指輪、謎の電話・・・そして殺人事件!
    全ての謎のパーツが仁木兄妹により解明されていきます。

    ジャンル分けするとすれば、謎解きミステリーという事になると思います。
    しばらくぶりに読み返して、私が感じたのは時代は知らない内に流れてた!という事です。
    この犯罪を現代にあてはめる事は出来ない。
    犯行動機、犯行方法、そして素人が事件にここまで深く入り込める状況・・・。
    当時は何の疑問も感じずに読めた本ですが、今のような複雑化している時代にこの犯罪はありえないと思いました。
    そういう意味で言えば、謎解きミステリーという分野は難しいと感じます。
    だけど、これも今の隣の時代、昭和だからそう思うので、この話があと数十年経てば、アガサ・クリスティーのようなミステリーとしてまた見直されるのかも知れないと思いました。
    今はこの作者の本を書店で見かけなくなった事からして、この本を読む人は今そういないだろうと思われますが、当時はわずか半年の間に13万部の売上を記録するベストセラーだったそうです。

    このお話はミステリーですが、ちっともドロドロしたところがなく、むしろ健康的だとさえ思えます。
    シンプルなストーリーで、気持ちよくよめるお話ではあります。

  • レトロな雰囲気がたまらなく良いです。
    殺人事件のおどろおどろしさやシリアスで重い雰囲気はなく、古い作品ですが現代との隔たりを悪い意味で感じることもありませんでした。
    むしろ、どこか懐かしい親近感があります。

    連続殺人事件、庭の防空壕、病院と事件自体はサスペンスフルですが、事件にちょくちょく顔を出す猫と、主人公兄妹がユーモラスで楽しく読めます。
    この仁木兄妹は仲が良さそうで本当に微笑ましいです。
    二人で事件の再現演技をしていたりと楽しそう。

    事件はまさしく「猫は知っていた」。
    散りばめられた伏線とトリックは正統派な本格ミステリーでした。

    この楽しい兄妹が活躍するシリーズ、まだまだ読みたいと思わせてくれます。

  • 時は昭和30年代。
    植物学専攻の兄・雄太郎と音大生の妹・悦子が引っ越した下宿先の医院で起こる連続殺人事件。
    現場に出没するかわいい黒猫は、何を見た?
    第3回江戸川乱歩賞受賞作品。

    先日、仁木兄弟シリーズを読み、気に入った仁木悦子さんのデビュー作。
    凄いです。これがデビュー作というのも驚きですが、今読んでも全く古臭さを感じませんでした。
    もちろんわからない言葉もありますが。
    ドライヴ・クラブ?って今で言うレンタカー屋だったり。
    炭を配達してもらって、適当なサイズに切り分ける炭切り?というのをしてもらったり。
    でもそういう昭和の日常を感じるのも面白かったです。

    とにかく筆致が爽やかで品があるというか。とても軽やか。
    思わず「日常の謎」系と勘違いしてしまいそうです。
    ですが事件はしっかり本格。
    医院だけに入院患者が出入りして、登場人物を把握するのに少々手間取りましたが、全ての謎は解き明かされます。
    皮肉な事件の流れややりきれない、けれども納得のいくラストを含め、とても好みでした。

    これはやっぱり童話のほうも読んでみなくっちゃね。

  • 初出は何と60年も前の
    ミステリーの名作!

    防空壕…って
    もう知らない人も多いのだろうけど
    昭和のノスタルジーが
    何とも心地よいのはなぜだろう…?
    古き良き時代を
    懐かしむ世代になったと言うことか。

  • 面白かった。
    好奇心旺盛で仲良しの兄妹が、下宿先で起きた殺人事件に首を突っ込んでゆく。
    1950〜60年代に書かれたこともあり、防空壕が残っていて効果的に使われたり、「疎開前に住んでいた〜」などと言ったセリフに、戦争がまだ近かった頃の時代を感じた。
    でも文章が全然古臭くなくて、するする読めるのが不思議だった。横溝や乱歩なんかだとちょっととっつきにくいというか、読み辛さが多少あると思うんだよね。この読みやすさは仁木悦子の特徴なのかな。
    死体の処理の仕方なんかにはやはり今とは違うというか、科学捜査の発達した現代では通じないトリックもあるけど、そんなことはやっぱり全然関係なくてとても面白い。

    犯人の最後の扱いは素人探偵ならではなのかな、とちょっと思った。時代も感じたというか…。
    雄太郎は犯人家族に情けをかけたわけだけど、被害者にも家族はあるわけだしさ。ユリさんとか、誤解は解けたのかなとか、英二くんはこのあとどうすんだろとか、ちょっと気になるなーという終わりかた。
    まあ、そういうのは余韻として残しておくのかな。

    タイトルの「猫は知っていた」はなるほど!という感じ。
    ほかの兄妹もの作品も読んでいきたいな。

  • 猫は知っていた
    200622読了。
    今年49冊目今月6冊目。
    #読了
    #猫は知っていた
    #仁木悦子

    初読み作家さん。
    著者の境遇とは反対に比較的明るめの雰囲気。時代が違うので道具立ては古いが、事件やアプローチは古臭さを感じない。

    ミスリードも多彩、衝撃度は高くないが、冒頭の違和感がそのままヒントなのは驚き。
    本人にしたら深刻だろうが動機それかよ!

  • 先日『ボタニカ』を読んで、来年の朝ドラを楽しみにしているところです。
    世田谷文学館へ行き、仁木悦子さんのお写真を久々に拝見して何か読みたくなった私にとって、「植物学者」と言えばこの人、仁木雄太郎。こういう兄貴が欲しかったなあ。

    中学時代、親父の本棚から拝借した箱入単行本が『棘のある樹』だった。以降、「大人の推理小説」にのめり込んだっけ(笑)

    何気に「(最初の)殺人動機が医療ミスの隠蔽」という…実に現代的。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/709466

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

仁木悦子の作品

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