コンビニたそがれ堂 星に願いを (ポプラ文庫ピュアフル)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118306

作品紹介・あらすじ

読者や書店員さんからの反響続々――。
心に癒しの風が吹く好評シリーズ第3弾、文庫書き下ろしで登場!
巻末解説は、星占いウェブサイト「筋トレ」主宰の石井ゆかり氏。

「思い出や過去は、人を裏切らない。
それは事実で、何よりも真実だからだ。
村山さんは、そのことをとても丁寧に説明してくれている。
『過去と思い出』が、決して人を縛りつけたり
停滞させたりするものではないことを、
登場人物の自然な気持ちの動きを通して、語りかけてくれている。
『後ろ向きな生き方』なんかじゃない、
ちゃんと真正面に過去を見るやり方を、静かに教えてくれている。
――石井ゆかり(解説より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、夜空の星に何か”願い事”をしたことがあるでしょうか?

    “流れ星に願い事をすると願いが叶う”、そんな言い伝えをよく聞きます。しかし見つけようとして見つけられるものでもない、偶然目にする流れ星に”願い事”をするということ自体、なかなかに高度な行為だとも言えます。そもそも流れ星を見つけた時点で即座に願う何かしらの”願い事”をその人が常に持っている必要もあります。あなたは、常日頃からそんな強い想いのこもった”願い事”を持っているでしょうか?確かに漠然と”○○したい”、”○○になりたい”、そういった思いというものは誰にでもあるように思います。しかし、そんな想いを流れ星が流れ切るまでに反射的に思い起こして願い切れるかというとなかなかにそれは難しいことだと思います。また、そもそもそんなことで”願い事”が叶うはずがない、とクールに言い切る方もいらっしゃるかもしれません。確かに『世界は目に見える通りの世界で、もうすでに、何もかも、計算できたり、論理的に分析とかされてしまってい』て流れ星に”願い事”をするなど荒唐無稽ということも否定できないと思います。そう、『魔法も神様も、奇跡も、この世には、存在しない。それが、「ほんとう」の世界』であるという現実。しかし、本当にそうでしょうか?そんなに簡単に物事を割り切っていくことが正しいと言い切れるものでしょうか?『魔法』、『神様』、そして『奇跡』とはそんな風に簡単に切り捨てて良いものなのでしょうか?

    ここに、『見えない流星に』祈ったその先に主人公が偶然にも行き着いた『不思議なコンビニ』を舞台にした物語があります。『心の底から探しているものがあれば、そのひとは必ず、ほしいものをそこで見つけて、買うことができる』というそのコンビニ。それは、”こうしたい”という未来を強く願う主人公たちが、そこに『奇跡』を見る物語。未来を願う先に、自身の過去に未来の手がかりを見る物語です。

    「コンビニたそがれ堂」シリーズの第三作目に位置付けられるこの作品。いつもながらに、

    『風早の街の 駅前商店街のはずれに
    夕暮れどきに行くと
    古い路地の 赤い鳥居が並んでいるあたりで
    不思議なコンビニを 見つけることがある
    といいます
    見慣れない 朱色に光る看板には
    「たそがれ堂」の文字と 稲穂の紋』

    という、もうそれだけでゾクゾクしてしまう決め口上から始まるこの作品は三つの短編から構成されています。それぞれの話に関連はないためどの話から読んでも問題ありませんが、同じ『コンビニたそがれ堂』が登場してもこんなにも描かれる世界は幅広いんだ、この三作目では改めてそんな風に感じる世界が広がっていきます。どのお話も不思議世界に溢れていますが、私のこのシリーズに対するイメージに一番近いのは表題作でもある一編目〈星に願いを〉でした。

    『街はまだ、お正月の飾りが残っている、一月三日』に『夜の駅前商店街を、お弁当を探して、歩』くのは、主人公の愛。開いているお店も少なく『これというお弁当箱にであえ』ない愛は『今夜どうしても、お弁当箱がいるのに…』と涙ぐみます。『今日の真夜中までに、大好きなひとのために、とびきりのお弁当をつくりたい』、そして『心をこめたお弁当にするための、とっておきの、お洒落で素敵な、お弁当箱がほしい』と思う愛。『一月三日の夜、しぶんぎ座流星群が、いままさに、この街の空に降りそそ』ぐ中、『お兄ちゃんの家の庭で、真夜中に、愛はお兄ちゃんとふたりで、流星群を見る』という今夜。年に三回ある三大流星群の夜にはいつもそうしてきたという愛。『お兄ちゃんの家は、もうじきに、遠くに引っ越してしまう』ため、『お兄ちゃんの家の庭で流星を見る最後の夜にな』ると思う愛は、いつも星を見ながら食べるためのお弁当を両親の不在もあって自身で作ろうと思い立ちました。『がんばろう。もう、中学生になるんだから』と思う愛は、お兄ちゃんのことを思い浮かべます。『お隣のおうちに住んでいる四歳年上の男の子』というお兄ちゃんとは兄妹のように育ってきたという二人。しかし『お兄ちゃんは愛にとって、童話の中の王子様か、騎士様のような存在』となっていきます。お兄ちゃんが高校生になってあまり会えなくなるも、『会いたいのに、会うと胸が苦しくなる感じ』に襲われる愛は『これって、「初恋」というものなのかな?』と気づきます。友だちに『愛ちゃん。それって、「告白」しないの?好きっていわないと、ずーっとお兄ちゃんと妹のままになっちゃうんじゃない?それでいいの?』と言われた愛。そんな時お兄ちゃんの引っ越しが決まり『隣の家にいた妹みたいな女の子のことなんか忘れてしまう』と思う愛は『好きですっていったら、忘れないでいてくれるのでは』と考え、『がんばれ、自分。がんばれ、がんばるんだ、愛』と自身を鼓舞します。そして『どこかに一軒くらい』とお店を探す愛は『ひときわ強い風が吹いたような気がし』て目を閉じました。そして、再び顔を上げると、そこには『赤く輝く看板と、一軒のコンビニがありました』。『四角い行灯のようなその明かりには、「コンビニたそがれ堂」の文字と、稲穂のマークが描いてあ』るのを見て、きょとんとする愛。『いらっしゃいませ』と『赤と白の縞々の制服を着て、長く輝く銀色の髪と、金色の瞳をし』た店員が迎えてくれたそのコンビニ。そんなコンビニで、”必要なもの”を手にした愛、そして…というこの短編。小学六年生の愛。お兄ちゃんに対するその強い想いのほどが痛切に伝わってくる、ピュアの極みが描かれるその作品世界は、主人公・愛がほろ苦さを味わいつつも『たくさんの空に流れる星が、今夜だけは特別に奇跡を起こしてくれたのかもしれない』という奇跡を見る中に美しく幕を下ろします。私がイメージする「コンビニたそがれ堂」の世界観のまさしく王道を行くような好編でした。

    村山早紀さんの作品というと、兎にも角にも『風早(かざはや)の街』が舞台となります。村山さんの作品を読んだことがない、もしくはこの作品が初めてという方には、そこに描かれる世界にファンタジーを感じるのだと思いますが、すでに村山さんの作品に出会って10冊以上となると、もっと何かが起こって欲しい、もっと奇跡が見たい、そんな感情が読む前から湧き上がります。それほどまでに魅了されるのがこの『風早の街』の世界観です。そんな街の中に『ひっそりとあいているコンビニ』。この作品では三人の主人公がそんなコンビニを訪れることになります。引っ越してしまう隣家のお兄ちゃんにいつまでも『忘れないでいてくれる』ことを願って流星群の降る夜に『告白』を考える小学六年生の愛の奮闘が描かれる〈星に願いを〉。『風早の街』で永らく喫茶店を営む宗一郎。永年連れ添った妻と毎年恒例にしていたコスモス畑を見に行けなかったことを悔い『とっておきのプレゼント』を探す様が描かれる〈喫茶店コスモス〉。そして、子供の頃『ヒラタマン』というヒーローになりたかったという良太がリアル世界とネット世界のいずれでも人生をもがき苦しむ中に、『この世界で生きてくってことが、俺は好きだ』と生きる喜びを見出す未来が描かれる〈本物の変身ベルト〉、というように描かれる内容は様々です。そして、そんな主人公たちが訪れるのが『コンビニたそがれ堂』です。『世界中のお店にあるどんなものでも売っていて、それどころか、他のどんなお店にもないようなものまで売って』いるというそのコンビニ。作品世界の中とはいえ、正に夢のようなお店が本当にあるのなら是非訪れてみたいと私だって思います。しかし、そんなお店は『心からほしいと願ってその品を探さなければ、そもそもその店に』であうことさえ叶わないとされています。まさしく、『魔法のお店』だと思いますが、三人の主人公たちは心からの願いの先にそのコンビニに行き着くことができました。しかし、三人の主人公たちは必ずしも個別具体的な品物を求めていたわけではありません。愛は『お弁当箱』を求めましたが、その他にも思いがけず『万年筆』を手にしました。そして、宗一郎は妻への『プレゼント』を漠然と求め、良太は『胃薬』を求めていただけで、いずれも最終的に手にしたものは、本人が個別具体的に思っていたものではありませんでした。

    この三作目では石井ゆかりさんによる〈解説〉が絶品です。石井さんは、三人の主人公たちがそれぞれ手にしたもののことをこのようにおっしゃいます。『村山さんが描く「コンビニたそがれ堂」は、その人たちが「欲しいもの」ではなく、「必要なもの」を提供してくれる』というその一文は、この作品世界のポイントを的確に言い当てていると思います。私たちは生きていく中で、何かに思い悩み、どうすべきか立ち止まったままになってしまう、長い人生を生きていればそんな時代が必ずあるように思います。そんな時、”こうしたい”、”こうなってほしい”という気持ちを持てたとしても、それに向かって進むための道筋が見えなければ前には進めません。この『コンビニたそがれ堂』は、そんな時に、まさしく”必要なもの”を提示してくれる場所です。世界中のどんなものが売っていても、その人に必要でないものはないのと同じです。たった一つしかなくてもその人が”必要なもの”を手にすることができる、それがこのお店のまさしく『不思議』の力であり、『奇跡』でもあるのだと思いました。

    『良太さんも、愛ちゃんも、宗一郎さんも、「ここから先」に向かっていくためにまず、必要としたのは「思い出」をちゃんと作り上げることだった』と語る〈解説〉の石井さん。そんな『思い出』の中にある人々の思いを丁寧に確かめていく中で『いつのまにか、未来の時間の中に立つことができていた』と続ける石井さんがおっしゃる通り、私たちはまだ見ぬ未来へと歩みを進める中で自身がそれまで歩んできた道、そしてその道を一緒に走り、もしくは支えてくれた人の想いの先に生きていることを忘れてはなりません。しかし、実際には前を、遠くばかりを気にして、過去をついつい忘れがちになってしまいます。しかし、三つの作品の主人公たちが『コンビニたそがれ堂』で手にしたものは、何か未知の新しい世界のものではありませんでした。それぞれの人生の中、歩んできた人生の中に、実はそんな過去に、未来に進むための手がかりがあったのだと気付かされます。そして、ふんわりとしたファンタジー世界の根底に流れる我々の生き方にも通じるリアルな考え方をそこに見るこの物語を思う時、作品世界にお決まりのように繰り返される次の言葉が浮かび上がってくるのを感じました。

    『そのコンビニには、世界中にある、ありとあらゆるものが売っています。そのコンビニには、ないものはないのです。心の底から探しているものがあれば、そのひとは必ず、ほしいものをそこで見つけて、買うことができるのです』

    いつもながらに描かれる不思議世界の中に、人の優しさとあたたかさを感じる物語。それは、人が自分に誠実に向き合い、心の底から幸せを願うその想いを見る物語なのだと思います。そして、それは“流れ星に願い事をすると願いが叶う”という強い思いの先に、自らの中に願いを叶えたいと強く願うその心こそが自らの人生を未来へと繋げていくものなのだとも思いました。

    人が人を想う優しい気持ちが紡ぐその先に光輝く未来を見る物語。その作品世界にすっかり夢中にさせていただいた、そんな作品でした。

  • お隣に住む、憧れのおにいさんと並んで流星群を見る最後の夜に
    弱火と強火の違いもわからないまま、素敵なお弁当を作ろうとする少女には
    姉御肌のつくも神つきのお弁当箱と、フランス語が堪能なキザなつくも神つき万年筆。

    奥さんと想い出のコスモスの草原を訪れる約束を守れぬうちに
    急病でこの世を去った喫茶店のマスターのためには、
    12月も間近い四十九日に、奥さんへと届けられるコスモスの花束。

    失恋した日に、その相手の目の前でさんざん仕事を失敗して
    自分には何の価値もないと空しさに沈む新入社員の男性には
    幼い頃彼が想像し、細かい設定まで創り上げた
    正義のヒーロー「ヒラタマン」の変身ベルト。

    今回も、コンビニたそがれ堂の店長さんが用意してくれるのは
    大事な探しものを求めて辿り着いた人たちの予想をちょっぴり裏切った
    素敵なおまけやサービスつきの逸品ぞろいです♪

    そして。。。
    あっけなく死んでしまったはつかねずみのぴーちゃんの痛みを
    ちっともわかってやれなかったと後悔する愛ちゃんのために
    「ちゃんとおじいちゃんになるまで生きて、幸せだったよ」と
    お弁当に飾るハーブの花束を抱えたぴーちゃんに語らせ

    天に召される宗一郎さんには、50年近く愛用してついに壊れた
    古い目覚まし時計の、薄緑色の小さな魂をちゃんと寄り添わせ
    戦争中軍用犬として徴用されたシェパードのサンダーや
    食事にも事欠いた日々に、盗んできた干物を置いていってくれた野良猫親子を
    宗一郎さんを迎える光の庭でうれしそうに走り回らせ

    人を怖がらなかったばかりに心ない誰かに耳を切り落とされた野良猫シロタには
    人が信じられるようになるまで根気よく可愛がり、餌を与え
    獣医さんにまで連れて行く心やさしい人間との巡り会いを用意して

    1作目から変わることなく、動物や、日々の暮らしを支えてくれた「モノ」にまで
    濃やかに注がれる村山さんの愛情に心の底まで温められる、第3弾なのでした。

    • PYON*さん
      こんにちは。コメントありがとうございます。

      たそがれ堂のコーヒーがおいしそうですよね。
      店主も見てみたいような。

      まろんさん本棚に ひょ...
      こんにちは。コメントありがとうございます。

      たそがれ堂のコーヒーがおいしそうですよね。
      店主も見てみたいような。

      まろんさん本棚に ひょっこり遊びに行ったら
      けっこう好みの本があったのでフォローしてみました。
      プロフの絵は昔 マウスでお絵描きしました。

      これからも 素敵な本と出会えますように。
      2013/02/13
    • まろんさん
      PYONさん☆

      こちらこそ、コメントありがとうございます!

      そうですよね、コンビニたそがれ堂、店主さんをうっとり眺めるのも含め
      他のコン...
      PYONさん☆

      こちらこそ、コメントありがとうございます!

      そうですよね、コンビニたそがれ堂、店主さんをうっとり眺めるのも含め
      他のコンビニにはない珍しいものが並ぶ棚をじっくり眺めてまわったら
      1時間くらいは余裕で過ごせてしまいそうです。

      プロフのイラスト、なんとマウスで描いたのですか!ほのぼのしていて、とても素敵です♪

      好みの本がPYONさんと重なったこと、とてもうれしいです。
      おすすめの素敵な本を、これからもたくさん教えてくださいね!
      2013/02/13
  • シリーズ第3弾。
    なかなか手に入らないシリーズで、やっと次の作品が手に入ったので、読むことに。
    今作は近所のお兄さんに恋する小学生、戦後から風早の街で喫茶店を営んで来たマスター、そしてヒーローに憧れる普通の若者の3人を主人公とした3編からなる。
    太平洋戦争の話や、現在の日本の武器製造の話など、これまでよりとても大人向けの話が多いのが特徴的。「星に願いを」と言うサブタイトルから勝手にもう少しキラキラした内容かと思っていたが、読んだ後に心に重く残るものがある。
    作者も後書きに書いているが、戦後から平成そして令和まで生きてきた人々の記憶を私も未来へ引き継いでいきたいと強く思う。
    その為に自分で出来ることをいろいろ考えているが、やはり作家さんの文章に乗ると言葉の重みが違うなぁ、と感じた。
    これからの未来を生きる人々がいつまでも平和でありますように…
    もう二度と意味のない命を奪う戦争が起きない世の中が続きますように…
    星に願いを。

    後書きに作者さんが書いているように、私も作者さんからTwitterでメッセージをいただきました。
    とても嬉しかったです。
    その意味が今作の後書きで分かって、納得です。
    私も「言ってあげられる一言」が呟けるようになれたらいいなぁ…

  • シリーズ3作目。
    短編集で、1話ごとに独立しているので、この本から読んでも大丈夫です。

    海辺にある風早町の駅前商店街の外れ。
    赤い鳥居が並ぶあたり。
    たそがれ時に、不思議なコンビニが現れる…
    大事な探し物がある人は、そこで見つけられるという。

    「星に願いを」
    素敵なお弁当箱を飼いたくて探し歩く少女・愛。
    ダッフルコートが大きすぎる小学6年生。
    真夜中に、お隣のお兄ちゃんの家の庭で流星群を見る約束をしていました。
    お隣はもう引っ越してしまうので、4歳年上のお兄ちゃんと一緒に過ごせるのもこれが最後。
    お弁当を作って、告白しようと思ったのです。
    でも、お料理は大苦戦!
    不思議なコンビニで買ったお弁当箱と万年筆が見かねてガタガタ言い出します。それぞれに、つくも神がついていて…
    お弁当作りに協力するために、思いがけない登場もあります。

    「喫茶店コスモス」
    宗一郎さんがある朝目覚めると、奥さんの鳩子さんは喫茶店を開ける準備もせず、口もききません。
    毎年、一緒に海辺のコスモス畑を見に行っていたのに、今年は宗一郎さんがゴルフなどの予定を入れてしまい、時季を逃したのです。
    一面に広がったコスモスの群れは、実は二人が若いときに何度も種をまいたもの。
    ちょっと喧嘩してしまったのを反省しつつ、宗一郎さんが気づいたことは…
    そして、たそがれ堂での買い物は、鳩子さんに届きます。

    「本物の変身ベルト」
    新入社員の良太は、8月の暑い日、失恋してしまいます。
    急に何もかもが空しくなり、会社を休んでしまう。
    アパートの人間関係はゆるいけど快適でしたが、一人暮らしなので、落ち込むときりがありません。
    ネットでツイッターをやるのが楽しみだったのに、「失恋しました」と書き込んだきり。
    パソコンの画面には、子どもの頃考えた正義の味方「ヒラタマン」の画像があります。
    同じアパートの隣の部屋に住む女の子・ののちゃんにはヒラタマンの話をしてあげたこともありました。
    風早三郎神社の大祭が行われるという日。
    神社といっても小さいのですが、それには理由がありました。
    事件を起こそうとしているネットの書き込みを見た良太は、駆けつけます。
    そして…

    ごく普通の会社員の良太が見本だからと貰った「本物の変身ベルト」
    これがなかなか面白いお話でした。
    特殊じゃない人だから、良かったのかな。
    風早町の戦後の復興の話までが出てきて、宗一郎さんの思い出から繋がりますね。

    宗一郎さんを出迎えてくれたシェパードには、もう…
    泣きました。

    どこまでも優しい雰囲気に包まれた作品です。
    何気ない日常生活や可愛らしいモチーフの奥にある、響きあう心と心は熱いのです。
    急いで読まないで。
    ゆっくりしたペースで、読み終わったら目を閉じて、お茶を飲むように、味わってみて下さい。

    • まろんさん
      「急いで読まないで。」
      「お茶を飲むように、味わってみて下さい。」
      sanaさんらしい、素敵な言葉に感動しました!

      人間だけじゃなくて、動...
      「急いで読まないで。」
      「お茶を飲むように、味わってみて下さい。」
      sanaさんらしい、素敵な言葉に感動しました!

      人間だけじゃなくて、動物や身の回りの電化製品や文房具にまで注がれる
      優しいまなざしが胸に沁みる、大好きなシリーズです♪
      風早のまちを舞台にした、そのほかのシリーズも気になっているところです(*'-')フフ♪
      2012/10/08
    • sanaさん
      まろんさん、
      ありがとうございます~!
      わかりやすい文章なので、ぱーっと早く読むことも出来るんですよね。
      でもそれじゃあ多分…良さが味...
      まろんさん、
      ありがとうございます~!
      わかりやすい文章なので、ぱーっと早く読むことも出来るんですよね。
      でもそれじゃあ多分…良さが味わえなくて、もったいない!んじゃないかと。

      そうなんですよねえ…小さなものを大事にするまなざし、小さなものにも宿る何か…
      丁寧に悲しみを解きほぐしていくような言葉に癒されます。
      そうそう、他の作品も風早が舞台になっているのがあるんですね! どれから読もうかと迷ってます♪
      2012/10/08
  • シリーズ第3弾。
    「喫茶店コスモス」がよかった。
    コーヒーと共に、ゆっくりと手繰り寄せられる思い出。
    送る人、送られる人、双方の思いがあたたかく、じーんとくる。
    「星に願いを」と「本物の変身ベルト」は、ファンタジー色が強かった。

  • 「本物の変身ベルト」というお話が特に良かったです。物騒な事件や怪しげな団体、ツイッター、子どもの頃に思い描いたヒーロー、街、神様。僕らの世の中おかしいし、間違ってることも多い。自分にはどうすることもできないとか、もう訳が分からなくて頭や心がついて行けないと思う時もあるけど、このお話にでてくるような、ちいさい人のちいさなやさしい気持ちがどんどん他の人の心を動かしていって、そういう世の中が好きだって言えるっていいなと思った。神様がもしいるんなら、きっとちゃんと見てくれているんだよなー、と思えただけでも幸せだ。

  • 相変わらず、優しい雰囲気で安心して読める。
    何か最近しんどいなぁ〜って時に読み始める事が多い。

    毎回思うけれど、もしこのコンビニに出会えたら、僕は何を見つける事が出来るのだろう。

  • シリーズ第3弾。
    大事な探しものがある人は、必ず ここで
    見つけられるという
    店の名前は たそがれ堂
    不思議な 魔法の コンビニです。
    今回のお客様たちが願った事とは・・・

    ・星に願いを・喫茶店コスモス・本物の変身ベルト

    今回は、どんな切なさが待っているのかと期待してましたが
    やはり、読後感の温かさは裏切らないですね。
    正に、夜空の星に切なる願いをかけた時、やさしい奇跡が起こる。

    秘密結社で働くモノクル(片眼鏡)の男
    何気にまた出て来るので覚えておきましょう。

    MIDIのオルゴール・・・懐かしいぃ~
    文庫出版時の2010年当時は、MIDIファイルも普通に
    サイトで使ってたんだよねぇ~(^◇^;)

  • 愛ちゃんが、宗一郎さんが、良太くんが、大切な思い出と向き合って、「これから先」へ歩んでいきます。
    風早の町の昭和史が語られました。

  • コンビニたそがれ堂第3弾。たそがれ堂は心が弱ったときに出会えるのだろうか?そうか、たそがれ堂に出会えるのは、黄昏時なんだ。
    ひとり暮らしでもひととつながるっていいな。

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著者プロフィール

1963年長崎県生まれ。『ちいさいえりちゃん』で毎日童話新人賞最優秀賞、第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。著書に『シェーラ姫の冒険』(童心社)、『コンビニたそがれ堂』『百貨の魔法』(以上、ポプラ社)、『アカネヒメ物語』『花咲家の人々』『竜宮ホテル』(以上、徳間書店)、『桜風堂ものがたり』『星をつなぐ手』『かなりや荘浪漫』(以上、PHP研究所)、げみ氏との共著に『春の旅人』『トロイメライ』(以上、立東舎)、エッセイ『心にいつも猫をかかえて』(エクスナレッジ)などがある。

「2022年 『魔女たちは眠りを守る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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