(002)絆 (百年文庫)

  • ポプラ社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118849

作品紹介・あらすじ

「いやじゃ!おれは一生やつに口をきかぬと決心したのじゃ」-。極端に性格の違う二人の家老が引き起こす珍騒動。競い合いながら老年を迎えた男たちの人生に決着はつくのか?(海音寺潮五郎『善助と万助』)。職を求め、恋人を残して海を渡った男の運命の物語『五十年後』(コナン・ドイル)。才能に恵まれつつも僻みを捨てきれず堕落していく孤独な男の再起をえがいた『山椿』(山本周五郎)。いずれも膝を叩きたくなるラストシーン、人を信じる忍耐力と希望を伝える名篇。

感想・レビュー・書評

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  • 3つの「絆」が紹介されています。

    海音寺潮五郎「善助と万助」
    戦国の世。兄弟の約束を交わした二人の絆です。歳月を経て老年を迎えた二人は、城主長政の面前である騒動を起こします。その結果、弟の兄へと心根に秘めていた想い、そして自分よりも体が大きく、性格も乱暴な弟へと兄が拳にこめる愛情が、表立って見えてきました。
    それは熱く、そしてほろりとくる絆でした。
    と、同時に城主の前だろうと遠慮などない二人の様子に、きっとみんなが何でも言い合える組織なんだろうなと、長政と家臣たちとの太い絆を感じました。

    コナン・ドイル「五十年後」
    音信不通となった恋人ジョンをずっと待ち続けるメアリー。どんなに周囲に煙たがれようと、憐れと思われようと、必ずジョンは帰ってくるとメアリーは信じてます。タイトルが示す「五十年後」
    メアリーの胸に過るのは、怒りでも悲しみでもありませんでした。
    いつ帰ってくるとも分からぬ愛する人を信じて待つことはとんでもなく難しいです。愛してるはずなのに、その想いが絶望や憎しみ、苦しみに変わってしまうこともあるでしょう。メアリーも悩んだはず。それでも愛を貫き通したその想いの強さに心打たれました。

    山本周五郎「山椿」
    もう、これは梶井主馬の男気ですね。裏切られようと騙されようと、男はぐっと堪えます。そして自分のことより、そんな目にあわされた相手のことを思んばかり行動します。誰ひとりに自分の胸のうちを明かすことなく……
    主馬はきっと、自分が勝手にやったこと、見返りを期待するわけではないと思っていたのではないでしょうか。これって無償の愛ですよ。人を信じることは難しい。でも、その先には希望があることを伝えてくれます。
    ……このお話が一番好きでした。

  • 漢字一文字をテーマに、古今東西の名短篇3篇を収めた百年文庫、読むのは2冊目。日本人作家と海外作家、どちらも入っているのがいいな…と思って選んだのが「絆」。
    ●海音寺潮五郎「善助と万助」
    黒田家の家老2人の物語。大河ドラマの「黒田官兵衛」のキャストを思い出しながら読んだ。強情な万助に半分呆れかけたところでの、ほろっとする展開がよかった。
    ●コナン・ドイル「五十年後」
    今回一番好き。ホームズ以外の作品も味があってよいですね。冒頭の喩え話がまわりくどいかなと一瞬思ってしまったが、その後語られる、離れ離れになった恋人達の波瀾万丈な歩みを思うと、なるほど…である。格調高い訳文も素敵。
    ●山本周五郎「山椿」
    新妻のつれない態度に初めはイライラさせられるものの、その理由を知ってからの夫の主馬の行い…「男」です、惚れ惚れします!伏線は張られていたはずなのに、気付かず「やられたぁ!」と思ってしまった。

    どの作品も、「絆」というより「忍耐」だなぁと。いや、耐えて耐えてこそ、絆は一層強まるということなのか。ベタではあるが、決して野暮ったい展開にならず、カタルシスを感じさせてくれるところが名作たる所以なのかなと。
    活字も大きく、読み易い分量のこの百年文庫。名作短篇に触れるいい機会、これからも読んでいきたい。

  • 海音寺潮五郎と山本周五郎が同じ本に入っているだけでも読む人は読むし、読まない人は絶対に読まないだろうという感じだが、果たして期待を裏切らない。
    まぁしかし山本周五郎のはちょっと反則が入ってますよね。
    32/100

  • 『固い絆に想いをよせて…人を信じきることの尊さ』

    【漢字一文字で一冊に編む】をコンセプトに3人の作家の名短編を纏めた『百年文庫』の第2巻『絆』。時代や国は違えど、深い絆で結ばれた人たちにとって、時間でさえも障害にならない、そんな強い希望を感じました。日本や世界の文豪の名短編がテーマに沿って手軽に読める、この『百年文庫』シリーズ、オススメです。全100巻完読目指そう!

  • 時代小説、海外文学と、なかなか合わせて読むことのない作品を読めるのもこのシリーズの楽しさ。
    いい。

  • めでたしめでたしの読後感が良くて面白かった。
    日本海外問わず有名作家の作品が収められている
    というところも面白い。

  • 「善助と万助」は名前がかわるのがわかりづらかった。
    「五十年後」記憶喪失におちいっていて約束を忘れてしまったとは。切ない話だった。コナンドイルはこんな話も書いていたんだ。
    「山椿」は山本周五郎さんらしい人情あふれる温かい話だった。信じられるということくらい人間を力づけるものはない。

  • どの話も単純でシンプルなストーリーだったが、それなりに楽しめた。

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著者プロフィール

(かいおんじ・ちょうごろう)1901~1977。鹿児島県生まれ。國學院大學卒業後に中学校教諭となるが、1929年に「サンデー毎日」の懸賞小説に応募した「うたかた草紙」が入選、1932年にも「風雲」が入選したことで専業作家となる。1936年「天正女合戦」と「武道伝来記」で直木賞を受賞。戦後は『海と風と虹と』、『天と地と』といった歴史小説と並行して、丹念な史料調査で歴史の真実に迫る史伝の復権にも力を入れ、連作集『武将列伝』、『列藩騒動録』などを発表している。晩年は郷土の英雄の生涯をまとめる大長編史伝『西郷隆盛』に取り組むが、その死で未完となった。

「2021年 『小説集 北条義時』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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