(004)秋 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118863

作品紹介・あらすじ

子どもが風邪を引くだけで「死にはしないか」と気を揉む父親。神経質な主人と家人のやりとりが温かい志賀直哉の『流行感冒』。世評名高い「猫」の芸を伝授してもらおうと師匠に尽くす万之助。だが、飲み代ばかり払わされ、いつになっても芸の話にはならず…。師弟の心が響きあう正岡容の『置土産』。娘の結婚相手を探す未亡人の身を案じ、要らぬお世話をやく男たち…小津映画にもなった里見の『秋日和』。市井の人々の優しさが秋空のように美しい三篇。

感想・レビュー・書評

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  • ★★★★ 何度も読みたい

    志賀直哉『流行感冒』、正岡容『置き土産』、里見弴『秋日和』収録

    『流行感冒』は、一度の過ちで人の全てを評価することはできないし、状況が変われば今まで見えていなかったその人の一面も見えてくるというお話。
    一度子供を亡くした経験から娘に過保護になっている父と、そんな彼の目からは首にしたいほどいい加減に見える女中の話。
    ある時病が流行し、父は女中や妻に娯楽施設に出掛けるのはおろか、玄関先での立ち話すらも禁止した。しかし1人の女中がそれを破り芝居を見に行き、嘘をついた。そのため彼らの仲は険悪になり、彼は女中に暇を出そうとするが…
    あたたかい気持ちになるお話。

    『置土産』は、一見利己的な言動に見えても、その目的は自分のためかもしれないというお話。
    講釈師として生計を立てる主人公は両親と師匠を亡くし、有名な講釈師に声をかけられたことで弟子入りする。その講釈師の十八番で、他の人には真似のできない芸を教えてもらいたい主人公。しかし師匠はのらりくらりとかわすばかし、主人公に面倒を押し付けるばかりで…
    登場人物が講釈師であるためかもしれないが、口頭で説明するような文章で、軽い感じでオチまで読めた。

    『秋日和』は、亡夫の友人があまりにウザくて途中でやめちゃった…もっと歳とれば読めるようになるのかな

  • どの話も読後感はさわやかで、嫌みがない。

    『流行感冒』については、どうしても今の時代と重ねてしまうが、
    人間、考え方も行動も、そんなに変わっていないよなぁと思う。
    どこまでも神経質な主人公だが、完璧にはなれない人間を
    受け入れるあたたかさはどこかにあり、それが人間臭くてよかった。

  • 志賀直哉の「流行感冒」が一番好きだ。
    読みやすく、感情移入しやすい。
    やりすぎなほど、病気を警戒する様子や、石に対する猜疑心が、とてもすんなりと感じられた。
    終わり方もよかった。

    「置土産」も、とても楽しく読めた。
    如燕の飄々とした感じが印象的だ。
    もちろん、身近にいると、相手をするのが大変だけれど、魅力的な人物だ。
    病床で教える猫の演技の描写も、比較的さっぱりと描いているけれど、目の前で繰り広げられているかのような臨場感を持って読めた。
    楽しかった。

    「秋日和」は、ちょっと読みにくかった。
    題材も、それほど興味をそそられなかった。
    男が描く女の物語って、ちょっと違和感が残ることが多い気がする。
    そんな、ちょっとした違和感を感じた。

  • 漱石も「ようかかん」と感嘆した志賀直哉の文章は、確かに流れるようでいて、一種独特のものだ。正岡容は安藤鶴夫のライバルだったらしいが、物語る世界も単に寄席芸人を描いているというのを超えて確かに近しい。仲が悪かったのも、近親憎悪の類だろうか。
    里見弴は小津映画の原作と言われれば、スクリーンが目に浮かぶ。昔のサラリーマンは本当にヒマだったのだなぁと。

  • #読了 NHKでドラマ化した志賀直哉の「流行感冒」が読みたくて。ドラマも面白かったけど、やはり小説でも面白い。今も昔も、流行感冒に対する人の動きって変わらないんだなぁ。

    正岡容は存じ上げず、初めて読んだ。小説の題材そのままのような軽快なお話だった。師匠が病床で猫をやってみせたけど、その描写はわずかにも関わらず眼に浮かぶようだった。

    里見弴の「秋日和」は、周りのおせっかいにイラッとさせられながら、きっとその当時はこういうおせっかいをする人情がそこかしこにあったんだろうなと、少し寂しさを感じると共にあったかい気持ちにもなった。

  • 百年文庫4冊目。
    どこか牧歌的で濃密にも感じる人間模様。
    憧れる気もするし、少し濃すぎにも感じる。
    作品は凄くよかった。

  • 百年文庫いいなぁ。
    他もどんどん読もう。

    正岡容初めて読んだ。

  • よき

  • どの話も普通の人のありふれた日常が描かれ、ほっとさせられる。美しい国、日本‥‥なんてフレーズを思い出してしまった。

    このシリーズは短時間でスラッと読めちゃうので、隙間時間を埋めるにもちょうどいい。

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著者プロフィール

志賀直哉

一八八三(明治一六)- 一九七一(昭和四六)年。学習院高等科卒業、東京帝国大学国文科中退。白樺派を代表する作家。「小説の神様」と称され多くの作家に影響を与えた。四九(昭和二四)年、文化勲章受章。主な作品に『暗夜行路』『城の崎にて』『和解』ほか。

「2021年 『日曜日/蜻蛉 生きものと子どもの小品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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