- Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591118962
作品紹介・あらすじ
振り手と買い手の声が飛び交う古本市で、年下の小僧たちにさえ圧倒される青年・耕吉。生活力に溢れた庶民の仕事ぶりに、ほろ苦く自らを断ずる青春(島木健作『煙』)。遺言により封印された著名コレクターの蔵書をねらう男が繰り出す、抱腹絶倒の奇策の数々(ユザンヌ『シジスモンの遺産』)。同郷の文学青年に教えを請われ、作家のなんたるかを指南するうち、思わぬ人生訓にたどりつく『帰去来』(佐藤春夫)。「愛書狂」たちの、滑稽でちょっと切ない物語。
感想・レビュー・書評
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島木健作『煙』 は、いたたまれない。語り手の気まずい気持ちや弱さに共感。
ユザンヌ『シジスモンの遺産』 はコミカルでおもしろかった。筋もだけど文章もすごく愉快な感じ。
佐藤春夫『帰去来』は文体が独特で最後まで読めなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
島木健作『煙』
ひりひりする悲しさ。
自分の頼りなさ、おぼつかなさが、身にしみて痛い。自分が役立たずだということを、淡々と描く筆致が○。
ユザンヌ『シジスモンの遺産』
笑わせていただきました。そういう意味で「傑作!」
佐藤春夫『帰去来』
一文がながーい文章に、飄々と漂うユーモア。
とぼけたふりして、あっさりさよなら。
3作異なった味わいで面白かった。
ただ、この百年文庫はいったい誰が編集しているのだろう? 編者は誰?
せっかく『本』というテーマで編んであるのだから、何か一言くらいこの『本』という一冊について言及があっていいのではないだろうか。
アンソロジーは、編者の意図を読むのも読者の楽しみの一つだと思うので、非常にもったいないと思う。もったいないというか、惜しい、かな。 -
『シジスモンの遺産』が面白かったです。
シジスモンの遺産として残された、数々の名だたる奇書・美麗本。
それを手に入れたい愛書家ラウール・ギュマールと、それらを亡きものにしたい相続人エレオノール・シジスモン。
彼らのまさに狂ったような執着に背筋がぞっとするようなおかしみを感じます。
『帰去来』は冒頭の文体で「苦手かも…」と思ったのですが、読み始めると引き込まれました。
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◆収録作品◆
島木 健作 『煙』
ユザンヌ 『シジスモンの遺産』
佐藤 春夫 『帰去来』
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古本屋、愛書家、本をめぐる人間模様。佐藤春夫はもう少し広い範囲をとらえた作。
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「煙」
生き方にまよい、毎日の生活に迷っている焦りを感じた。
うまくいかない、自信がない。
歳ばかりくっていく。
もう、先に対する希望ももちにくくなってしまった。
なのに、自分の居場所を定められない。
そんな不安と、肩身の狭さをひしひしと感じた。
過去の記録を燃やしたくらいで、今の自分は何も変わらないのだけれど、変わりたい、どこかに行きつきたいという祈りのようなものを感じた。
「シジスモンの遺産」
面白い話だった。実におかしかった。
エレオノールが痛快だった。
熱望と憎悪の駆け引きを読みながら、野次馬のように楽しめた。
もっとやれ~
「帰去来」
この文体。
終わらぬ1文目。
読みにくいけれど、言葉が流れ走っていく感覚は確かにある。
ただ、内容はそれほど面白いとは思わなかった。
すぐに意志を翻す田舎の若者。
それと呼応するかのように心が移ってゆく筆者。
まあ、そんなもんだわな。
たとえくだらないようなことでも、毎月毎日繰り返し繰り返し生きてゆく。
それが人生の基本だ。
木挽きも漁夫もどこかの社員も。 -
本にまつわる三作品。
『煙』は読んでいて居たたまれなくなってしまいました。
鬱々とした気持ちで次の『シジスモンの遺産』を読み始めてそのコミカルさに笑ったり、本への執念にぞっとしたり。
最後の『帰去来』は最初は一つの文章の長さに読みにくさを感じましたが文章の軽快さ、ユーモアにいつの間にか読み終えてしまいました。
人の本への向き合い方は色々あるのだと思いました。 -
『煙』島木健作
どこがどうと言いがたいが読みにくい文体だ。主人公の生活無能力者ぶりには共感してしまう。
『シジスモンの遺産』ユザンヌ
コミカルに愛書家を描く。インキュナビラが出てくる。
『帰去来』佐藤春夫
こちらは一見読みにくそうな文体だが実はそうでもない。いずれにせよ本で身を立てるのは難しいようで。 -
ユザンヌ『シジスモンの遺産』が面白い。
思えば百年文庫はこれを一番先に手に取って、たまたま開いたこの作品が面白そうだったから、読もうと思ったんだった。
知らない作家でも面白いのがあるんだって思えるかも!って。
蓋を開けてみれば打率ははかばかしくないのだけれども。
佐藤春夫『帰去来』は最初くじけそうになった。
句読点を求めて酸欠の金魚状態。
句読点がなくていいのは、崩し字でゆったり書いてるときだけだと思う。
活字でするなら空白をくれ!
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
底本 / 『島木健作全集 第11巻』国書刊行会、『書物愛[海外篇]』晶文社、『佐藤春夫全集 第7巻』講談社。