(015)庭 (百年文庫)

  • ポプラ社
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本棚登録 : 69
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118979

作品紹介・あらすじ

荒れ放題の「私」の庭は、鶏も犬も自由に通り、時には馬すら横切っていく。庭に出没する「隣人」たちの生態をユーモラスに描いた『庭の眺め』(梅崎春生)。一心不乱に庭づくりに没頭する妻の心が理解できない夫の愛と苦しみ(スタインベック『白いウズラ』)。「あなたは金魚屋さんの息子さんの癖に、ほんとに金魚の値打ちを御承知ないのよ。」美しく成長した幼なじみに煽られ、絢爛豪華な金魚を生みだそうと苦心する青年の恋と夢(岡本かの子『金魚撩乱』)。小宇宙のような庭を巡る三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 春になり雪も解けて庭にクロッカスも咲き始めたので、『百年文庫 庭』を。百年文庫15。


    梅﨑春生「庭の眺め」…☆3.5 野生動物、猫、汲取屋の馬までもが通過してしまう私の庭。隣の古畑家の庭は…徹底的に整備されていて、花々も不要な葉や枝は切り落とされ一輪ざしのように、痛々しいほどに管理されている。その対比が面白おかしい。
    枝が茫々に伸び電線にかかるという理由で、古畑家の亭主に伐採された無花果の木。庭の片隅にある朽木にはシイタケの菌糸が勝手に埋め込まれている。手入れをしていない畑に、いつのまにか畝が出来上がっていて、何やら等間隔で正体不明の芽が出てきたり…。“生えるなら、生えてもいいのである”(22ページ)
    現在ならご近所トラブルに発展しそうな感じがするが、シイタケが生えてきたら“眺めてみて、食慾を感じたら食べるし”(24ページ)という、私の臨機応変な対応でクスッと笑えた。



    スタインベック『白いウズラ』…☆4 江口寿史の「白いワニ」を思い出してしまった(笑・全然違う)
    庭に特別の思い入れがある感性豊かなメアリー。庭が彼を受け入れた…と感じてハリーと結婚する。メアリーの感性がどんどん鋭くなっていき、ある意味で「狂喜」⇒「狂気」の域まで達してしまう。(もう病的なんじゃない…?)
    庭に訪れるメアリーが自身の化身だという、大切な白いウズラをハリーは撃ってしまう。ちょっと…マジでこわいんですけど…この夫婦。この後どうなったんだろう…。とても気になります。ハリー本人は気がついていないのかもしれないけど、深層心理では撃ちたいって願っていたのかも?私も最終的には同じ行動したと思う。メアリー、手におえない…。



    岡本かの子『金魚撩乱』…☆3.5 『日本の女は、100年たっても面白い。』の中で、岡本かの子の生涯が紹介されていた。本当に金魚みたいな奔放な同棲生活。金魚=真砂子=かの子なんじゃないかと感じた。
    池という名の庭で艶やか振袖を着て自由に泳ぐ金魚。その金魚(真砂子)に入れ込み過ぎて、人生のすべてを金魚の品種改良に捧げる復一。どれもこれもこわい。その執念が尋常じゃない。
    十数年間もかけて新種に取り組んだのに…、その意外な結末に衝撃を感じつつも、ぷぷっと笑ってしまった。
    この新品種の金魚が、自然交配の「芸術の爆発」の塊。なんだか岡本太郎っぽい。面白い~。
    文章は濃厚、エロティック、くどいような気がしたけどきれいで、ぐいぐいとひきつけられた。


    全体的に庭というよりも、庭に対する執念とか狂気とか、そんな雰囲気が濃かった。入れ込み過ぎてていて鳥肌ぞぞぞ。刺激的。

  • 『白いウズラ』は庭作りにすべてを捧げる妻の狂気的な様に、寒気をおぼえました。
    『金魚撩乱』は背表紙に書かれている紹介よりも、もっと生臭い内容でした。
    人間と金魚が放つ生臭さは、まるで苔むした水槽の水をぶちまけたようで。
    狂気的な人間の姿は、背筋をぞわりと波立たせ、落ち着かない気分にさせられます。

    私は「庭」という言葉を聞くと、ぽかぽかと太陽の光に包まれたあったかいイメージを抱きます。
    …が、この「庭」はイメージとは違う「庭」を覗いてしまった気分になりました。

    -------------------------------
    ◆収録作品◆
    梅崎 春生 『庭の眺め』
    スタインベック 『白いウズラ』
    岡本 かの子 『金魚撩乱』
    -------------------------------

    • まっきーさん
      すずめさん

      コメントありがとうございました。

      百年文庫素敵ですよね。シンプルだけど贅沢で好きです。

      すずめさんとは「本」の...
      すずめさん

      コメントありがとうございました。

      百年文庫素敵ですよね。シンプルだけど贅沢で好きです。

      すずめさんとは「本」の1冊だけ、共読で他はかぶっていないので、
      100冊のうちどれを選んだらいいのか、毎回迷う(図書館で借りてます)ので、
      参考になりました。

      「庭」こわ面白そうですね。「庭」はほのぼのしたイメージだったので
      思い描いていたのとは違い楽しみです。

      2015/09/06
  • 庭がテーマの三編。
    穏やかな日の当たる世界を思ってみればどれも癖のある作品ばかり。

    『庭の眺め』は自庭を隣人に好き放題されているのをすべて赦せる語り手の達観した姿に敬服します。なぜここまで赦せるのか…。
    『白いウズラ』の庭造りに人生を注いだような妻を理解しようともがく夫の闇が怖かったです。妻がこれは自分だと言った白いウズラを空気銃で発作的に撃ってしまう姿にどれだけ不満や鬱屈が積み重なっていたのかと哀れみを感じます。
    『金魚撩乱』はこの本の半分以上の量を占めており、読みごたえがありました。
    浮世離れした美しい隣人への屈折した愛を美しい金魚を作り出すことへ変えて苦節十四年、その意外な結果に呆然としました。
    文章に含まれた艶が男の品種改良の苦節と愛の苦悩を彩り、濃い物語でした。

  • ≪県立図書館≫

    「庭の眺め」
    なんと達観した、というか、広い心を持った、というか。
    悟っているような、こだわりをぬぐおうとしているかのような、そんな視線を感じました。
    空き地化した庭に、実に様々な動物や人(の気配)が出入りして、静かなようで実ににぎやかで豊かな、そんな庭。
    季節や感情がぐるぐるとせわしくめぐっていく中で、それをゆったりと受け止めて楽しんでいる。
    そんな庭であり、持ち主である。
    私はこうはなれないなぁ。

    「白いウズラ」
    ああ、メアリーのご亭主の気持ちがわかる気がする。
    なんていう最後の一言!
    そう、彼はメアリーに愛されていない。
    本当の意味では愛されていない。
    白いウズラの象徴するもの。
    それを壊してしまいたくなる彼の気持ちは、悲しく切ない。
    ずっとメアリーの気持ちが主体で描かれてきて、最後で綺麗に覆り、ハリーの心にクローズアップされる。
    だからこそ彼の寂しさが強烈に胸に迫る。
    うまい。

    「金魚撩乱」
    なんというか、この煮え切らない、秘めたうじうじ感が日本っぽい。
    最後の展開は読めた。
    多分、あの池だな、と。
    バロックやロココや、生活感のないお人形さんのようなお嬢様。
    マネキンのようで非現実な女。
    崖の上から飛んでゆけないその姿は、受け身で生きていくことの苦しさやわびしさを背負っているように見える。
    偶然にできた、この上なく美しい金魚は、真佐子にも似ておらず、もっと美しい金魚だった。というのが、ちょっと面白かった。
    失望か、否、それ以上の喜びか。
    真佐子の幻影というか、恋というか、執着というか、呪いというか、それが解けた。のであってほしい。

  • テーマは大人しげだが割とクセの強いのがそろった。

    梅?春生『庭の眺め』
    うまいんだが辛気臭い感じ。

    スタインベック『白いウズラ』
    名前だけは知っていたがこんな作風なのか。庭に異常な執着を持つ美人奥様の話。

    岡本かの子『金魚繚乱』
    岡本太郎のお母さん。この作品がもっとも良かった。少年のひねくれた性と、どこか無機質なエロティックさのある金魚と。

  • 半分以上岡本かの子『金魚撩乱』
    庭に入れるのはどうなのかしらと思いつつ、色彩表現が官能的で、さすが岡本太郎の母。
    身分違いの幼なじみを投影しながら唯一の美しい金魚を作り出そうとする主人公が仄暗い。
    金魚って、綺麗でエロくて怖いよね……。

    梅﨑春生の「庭の眺め」は淡々と飄々と。
    スタインベック「白いウズラ」は夫婦のすれ違いが痛い。

    装画 / 安井 寿磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一
    底本 / 『梅﨑春生全集第6巻』(新潮社)、『スタインベック全集5』(大阪教育図書)、『岡本かの子全集第3巻』(冬樹社)

  • 8/20 読了。
    「金魚繚乱」のラストシーンはどこか「金閣寺」のようだ。

  • 梅﨑春生『庭の眺め』 
    スタインベック『白いウズラ』 
    岡本かの子『金魚撩乱』

    スタインベックの作品がとてもよかった。
    精神の輝きを悟っている直感的な妻、その妻を愛しつつも理解できない夫。散文と言うよりは、半分詩のような短編として読んだ。
    妻の美しさ、その精神的世界は理屈ではなく、それを説明する文章もまた理論的なものではない。しかし、直感的なきらめき、自分でないものを自分の分身として感じとりキャッチする彼女の力には、それだけで不思議な世界観を感じる。
    それゆえに、それを理解できないと苦しむ彼女の夫の苦悩がより迫ってきて、とてもよかった。

    梅﨑春生の短編は、淡々としつつどこか剣呑な感じがするのが油断できない。アンソロジーの最初の話としてふさわしい。

    岡本かの子の話は、私にはあまり入り込めなかった。どうも私は、岡本かの子という作家自体があまり好きではないようだ。
    彼女の作品には、独特の「絢爛さ」を感じる。華がある。しかし、どうも私は、その華に魅力を感じないらしい……。

  • 梅﨑春生『庭の眺め』
    スタインベック『白いウズラ』
    岡本かの子『金魚撩乱』

  • 2013.3.28
    『庭の眺め』梅崎春生
    あるがままの空き地のような庭を眺める。
    のんびりユーモア。久々のヒット。

    『白いウズラ』スタインベック
    女性の神秘とそれが理解できない男性。主題は好みなんだけど、やっぱりアメリカ人が書くと劇的なかんじになっちゃっていや。

    『金魚繚乱』岡本かの子
    使う言葉がきれい。歌人だったためか。金魚と真佐子がゆらりと重なる。
    うーんでもなんか物足りない。もう少しぐらりゆらり感がほしい。

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