(023)鍵 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.06
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  • Amazon.co.jp ・本 (165ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119051

作品紹介・あらすじ

いまや高名な政治家となった学友ウォーレス。だが、彼の心はこの世ならぬものに奪われていた。少年の日の奇妙な記憶が人生を飲みこんでいくH・G・ウェルズの『塀についたドア』。不安と陶酔に縁どられた禁断の恋、痛切なラストが胸に迫るシュニッツラーの『わかれ』。世間から孤絶して暮らす裕福な美青年が独自の感覚世界に没入していく『第六七二夜の物語』(ホーフマンスタール)。現実の壁を跨ぎ越えようと、遙かな願望へ向かった人間たちの悲しくも夢幻的な物語。

感想・レビュー・書評

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  • H.Gウェルズは代表短編だけあってさすがに上手い。シュニッツラーの不倫モノはなかなか間男の心理がよくかけている。35/100

  • ようやく扉を開けたウォレスは、他の誰も入ってゆけない彼だけの楽園を見つけたろう。しかしそれは、マッチ売りの少女が最後にみる夢ではない。現世の栄華をきわめ成功した(と人からは思われている)男の望みが、少年の日の失われたファンタジーだったというのがいかにもありそうなことでも、では幻のために実人生を捨てる者は何人いるだろうか。ウォレスは、義務から解放されて自分の望みを追ってゆくだけの気高さを持つ者なのだ。この物語が、読む人の心にずっと消えない何かを残すのはそのためだろう。感傷的なだけではこうはゆかない。

  • 『塀についたドア』H.G.ウェルズ
    小学生のころに「宇宙戦争」とかものすごく真剣に読んだなあ、などと懐かしく思いだしながら。登場人物の回想による幻想譚みたいなものだが描写がぎこちない感じで、スティーブン・キングがよりにもよってラブクラフトを引き合いにだして「会話文が下手くそな作家」について書いていたのを思い出した。単に時代が古いせいかもしれないけれど

    『わかれ』シュニッツラー
    きわめて単純なプロットをほとんど主人公の心理描写だけで引っ張る。意識の流れ?しかしまあ読んでいるこちらも、とにかくヤキモキさせられるので、うまく書かれた小説ということだろう。

    『第六七二夜の物語』ホーフマンスタール
    こんなに訳の分からぬ小説は初めて読んだかも。なにかの象徴を書いたものだろうか。まったく意味不明。

  • ウェルズの扉の向こうの幸せな世界、何だか分かる気がします。
    シュニッツラーの恋人が訪れない男の不安な心から相手の家を訪れるまでの心の動きがリアルでした。でもよくよく考えてみると不倫なんですよね、この人たち。
    ホーフマンスタールは重苦しくて苦手でした。

  • 最初の2話は、扉を開くための鍵を求める話で、最後の1話は、鍵のかかった閉じられた世界から引っ張り出される話だ。と思った。

    「塀についたドア」
    まるで試すかのように現れる緑のドア。
    ウォーレスは、ドアの向こうの世界を熱望するけれど、成長するにつれて現実のしがらみの中で、その憧憬は少しずつ薄れてしまう。
    もう、あの緑のドアは消え失せてしまった。
    そう強く感じたウォーレスの失望と後悔は、いかほどだったろうか。
    最期に、彼はもう一度ドアに出会えたんだろうか。
    彼の最期は、そのドアがどういったものだったのかが暗示されているように感じられる。
    幼き日、気品のあるおごそかな女が、彼をもとの灰色の現実に戻したのは、まだ早すぎる、ということだったのではないか。
    優しく美しき世界。
    私も憧れる。

    「わかれ」
    愛人に恋い焦がれる男の感情がリアルに伝わってくる。
    待つ辛さ、どうしているのか知りたい一心、もう一度会いたいと狂いそうになる気持ち。
    その反動のような最後が、印象に残った。
    リアルだと思った。
    行動がだんだん大胆になっていくところや、一瞬我に返る心理状態など、本当にリアルに描写されている。
    非常によくできた作品だと思う。

    「第六七二夜の物語」
    最期はまるで悪夢のような展開だった。
    とりとめなく、少し異常なことが起こってゆく。
    ぼんやりと靄がかかったような距離感のある文章が、より一層、現実感を薄めている。
    正しく「夜の物語」だ。
    美しいものや気に入ったもので固めた王室のような彼の生活。
    最期は、召使たちに導かれるように死へ向かっていったとは、なんとも皮肉であり、彼は彼のエゴに殺されたという風にも見える。
    どんどん死神に追い立てられるかのような最後は、印象的だった。

  • H・G・ウェルズ『塀についたドア』 、ドアを見つけてしまった人に親しみを感じた。
    シュニッツラー『わかれ』 、最後までまっすぐだった。人の悪意の話だと思って読み進めてたらそうではなかった。
    ホーフマンスタール『第六七二夜の物語』、『鍵』の中では一番気に入った。幻想的な雰囲気がよかった。小道具も風景も人物描写も綺麗だった。

  • 2013.5.6
    『塀についたドア』HGウェルズ
    むかし、この作者のタイムマシンを読んで、小さいながらにひどいと思った記憶がある。昔はこれが新しかったのか、というかんじ。
    でもこの話は悪くない。ドアの象徴するものがあからさますぎてやっぱりちょっと古いかんじはするけど。

    『わかれ』シュニッツラー
    女が死ぬ際の愛人の不安と錯乱。
    いまいち。

    『第六七二夜の物語』ホーフマンスタール
    静かで幻想的な中に潜む不安の影がどんどん濃くなり、哀れな最期を迎える。綺麗で繊細な男の話。
    雰囲気と題名が好き。内容が暗いからな〜読み返したくないな。

  • H・G・ウェルズ『塀についたドア』
    シュニッツラー『わかれ』
    ホーフマンスタール『第六七二夜の物語』

  • H・G・ウェルズの異世界ものが好きなので「塀についたドア」面白かった。

  • ホーフマンスタールがすごく難解。ムシルのポルトガルの女を読んだ時も思ったけど、東欧?系難し〜〜…まだ早いのかしら。

  • 『掘りについたドア』

    『わかれ』

    『第六七二夜の物語』

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号908.3/H99/23

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著者プロフィール

イギリスの小説家、SF作家。1866年イングランド、ケント州ブロムリーの商人の家に生まれる。フランスのジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる。歴史家としても、多くの業績を遺し1946年没。

「2005年 『宇宙戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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