(024)川 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.73
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本棚登録 : 61
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119068

作品紹介・あらすじ

酒の名所、伏見の船宿に嫁いだのは登勢が十八の頃だった。頼りない夫と気難しい姑、打ち続く災厄にもへこたれずに生きぬく女性の輝き(織田作之助『螢』)。水上バスに乗って川岸の景色を眺めるうち、記憶の底から呼び出された「魔物」の正体(日影丈吉『吉備津の釜』)。都での宮仕えが決まった夫は津の川を東へ、妻は西へと別れた。ふたたび一緒に暮らせる日を願って妻は便りを待ち続けるが…(室生犀星『津の国人』)。暮らしに川が生きていた頃の、日本人の心の風景。

感想・レビュー・書評

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  • 織田作之助 『蛍』 ☆4
    思いがけず良かった。母、生まれたばかりの妹、父と相次いで亡くし、「耳の肉が薄いと幸も薄いようだよ」と伯父に言われた登勢(とせ)という女の生涯なんだと思って黙々と読んでいたら、「寺田屋」に嫁ぎ、さらに進むとお良という娘(養子)も出てきて、もしかして…と思っていたら坂本竜馬が出てきて「きゃーぁ」と叫んでしまった。もし書かれた当時ドラマ放送とかあったら、月9みたいになってたかも。タイトルから想像つかない内容だったので驚きでした。


    日影丈吉 『吉備津の釜』 ☆5
    事業に失敗して共同経営者にも逃げられてしまった洲ノ木(すのき)。金策に走るもみな知らんぷり。世間の風は冷たい…。酔って自棄になった洲ノ木が愚痴をこぼすと「俺の知り合いがお金貸してやってもいいと言ってるよ」と川本という男が声を掛けてくる。そこからラストにかけてがすごく面白かった。礒良が出てくるかと思ってずっと身構えていたけど…。けっこうミステリな感じでぞわっときた。


    室生犀星 『津の国人』 ☆3.5
    伊勢物語がベースになっているらしく少し難しい。
    “「さよならきのうのひとよ、嘗てわたくしの中にあった大きい信仰のような人よ、」”=162ページ=
    思わず涙が出そうになった。言葉一つ一つが美しく日本語ってきれい~…と思いながら読む。筒井が本当に健気で慎ましい女性で切なかった。いまならメールや携帯があるから一瞬で済んでしまうのに…。連絡がつかなくなって4年もただひたすら待って、やっと他の人と結婚!という時に…。登場人物みないい人。で上品です。


    前にも一度借りて挫折したけど今回は大丈夫だった。
    川…なんだか切ない話が多かったけど日本って感じがしてよかった。気のせいかどの話にも蛍や草花が出てきて違和感なく読めた。幻想的でしっとりした雰囲気。こうしてみると川の流れって、人々の記憶と思い出を忘れる…というのに似ているのかもしれない。

  • 初めて読む日影丈吉さんの
    「吉備津の釜」が結末に予測がつかず面白かった。

  • 20191103〜1107 図書館で借りた。文学史とかで有名でも、実際に読むことが余りない作家の短編集。室生犀星の文章は、美しい。

  • ≪県立図書館≫

    「螢」
    こういう作品を読むと、つい史実と比べたくなってしまう。
    しかし、作品は作品で完結した世界として受け止めて、純粋に楽しむことを、まず最初にしたほうがいいのだろう。
    そのほうが、より深く作品とコミットすることができる気がする。
    が、つい、ウィキペディアなどを見てしまうんだよなあ。
    登勢の、弱いようでしなやかな強さは、まさに大和なでしこだ、と思わせる。
    受け入れていく強さ。
    川の流れのように、幸も不幸も移ろっていく。
    それに抵抗するわけでなく、その川とともに生きていく登勢の姿は、実に美しい。

    「吉備津の釜」
    川が記憶を呼び起こし、その記憶が道を分けた。
    最後の展開ですべてが繋がる。
    なんか、祈祷師を信じてしまいそうだ。
    運命が、言葉でない言葉で、彼に語りかけている。
    行くな。
    一度は這い上がれたじゃあないか。
    行くな。
    川を流れる菊や、祈祷師の面影は、熱にあたって狂いかけた彼の人生を、なんとか引き留めたのだ。
    面白かった。

    「津の国人」
    川の上と下とに別れていく夫婦。
    有名な古典をもとにしている。
    筒井という名前も、筒井筒を思い出させる。
    女の心理が丁寧に描写されている。
    3年待ったと読むか、待てなかったと読むかは、人それぞれだと思う。
    男が軽率であったと読むか、女の心が定まらなかったと読むか、双方致し方なしと読むか。
    もとの古典を読んだ時も、いつも、なんとも割り切れない、致し方ない気持ちになってしまう。
    若い女が、たった一人で男を待ち続ける苦しさは、いかほどか。
    結末が古典とは異なるところが、ちょっとリアルさを増しているように思った。

  • 2013.5.6
    『螢』織田作之助
    強く明るく働く女の話は読んでいて気持ちがいい。ちょっと強すぎるか。螢の出てくる無邪気な場面が繰り返されていて良い。

    『吉備津の釜』日影丈吉
    金の苦心から一変、むかし祈祷師から聞いた民話へころがり、一体この話はどこに行くのかと思えば、ミステリー。おもしろい。

    『津の国人』室生犀星
    聞いたことあるような話だと思ったら、伊勢物語が題材。古典て好き。でも綺麗だけの話でこれは少し長いな。

  • 織田作之助「螢」(1944)登勢の身の上に降り掛かるあれこれ。現代人ならへこたれてしまいそうなことが起こっても気丈に生きる。
    日影丈吉「吉備津の釜」(1959)戦後の混乱のなかで生きる男が酒場で出会った男に紹介された男を訪ね、水上バスに乗りながら子供の頃に乗った川蒸気を思い出す。
    室生犀星「津の国人」(1942)、貧しさに似合わず、うつくしい言葉をつかう女性の物語。男としては、何もなくともこのような素晴らしい言葉を発する女性が傍らにいたら、非常な幸せを感じるだろう。

  • 織田作之助『螢』
    日影丈吉『吉備津の釜』
    室生犀星『津の国人』

  • パソコンはきっと室生犀星だけのためにさいせいって一回で変換できるようになってる。すごい。漱石もでます。蛍(おりょうのおかあさん)・吉備津の釜(お金を借りる)・津の国人。こうやってかいてもいつかはきっと忘れるしそのときはきっと読むのもわかっているのだけど。というかもう、何かだまされている気分になってくるというか、ほんとうにこの世界の片隅をかじっただけでしかないというくらいどんどんどんどん読みたいものが増えていく。オムニバス、あなどりがたし、、、
    わたしは川のそばで育っているので川には何となく思いいれ的なものもあるんですが、川のそばの暮らしの話・川にまつわる不思議談・川のように行きたゆたう女の話(最後の分は自分でちょっと違うと思っている)
    室生犀星って相当エロイっていう評判が自分の中では印象に残っているのだがエロイって言うかとろっとした文章で雰囲気もあって流れる時間の感覚が全然ちがうくておもしろい。読んでるときはきもちいいっていうか、豊かな気持ちになるし、素敵だなあと思うし、うっとりするし、あたたかいし、こってりしている。水かな~。持っているものの時間を思いやらずにはいられない。こういう応酬、なかなかかけない。誰もが傷つきながらその傷を甘く思わずただ抱えて生きるだけというような、心からだれかを思いやる心の傷など。授業でならったのは詩だったけど、こういう文章ってもっと読まないのだろうか、、こういうの読んで育った女子として一級の人とか会ってみたい。聖人君子か!

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号908.3/H99/24

  • 色々な人の短編集は切り替えなきゃいけないから好きではないけど、ともかくこのシリーズを読んでこうと思います。

    最後のが今昔っぽくて好き。美しい。

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著者プロフィール

1913年10月、大阪市生まれ。1933年から創作活動を開始し、1938年に小説「雨」を発表。1940年に「俗臭」が第10回芥川賞候補となる。同年に発表した「夫婦善哉」が改造社の第1回文藝推薦作品となり、以降、本格的に作家活動を開始。1946年4月に発表した「世相」が評判を呼び、作品発表の機会が劇的に増えるも、1947年1月、肺結核のため東京にて死去。その直前に評論「可能性の文学」を発表し、作風の転換を図っていた矢先のことだった。太宰治、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれ「オダサク」の愛称で親しまれた。

「2019年 『織田作之助 女性小説セレクション 怖るべき女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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