(025)雪 (百年文庫)

  • ポプラ社
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本棚登録 : 58
レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119075

作品紹介・あらすじ

雪の夜、「昔あったとい」と昔話をしてくれたあの人。実子ではない「私」をいつも温かく抱きしめてくれた亡き母の思い出(加能作次郎『母』)。親戚の娘をいきなり預けられた貧しい夫婦。強引なやり方に反発しながらも、いつしかその娘が愛しくなっていく(耕治人『東北の女』)。ハガキ一枚を頼りに上京してきた娘「初」は押しかけた家で雇ってもらうが、その家の男の子はひどく意地悪で…。孤独な少年を守ろうとする娘の潔い愛が胸を打つ、由起しげ子の『女中ッ子』。雪のように清らかで、温かい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 百年文庫25 今年は雪が多くて雪かきが大変です。季節に合わせて借りて、読むのもなかなかオツなもんだと積もる雪を見ながら読了。どの作家さんもみな初読み。

    加能作次郎 『母』 星3
    生後7~8カ月で実の母を亡くし、継母から育てられた恭。母と子、互いに素直になれずののしり合ったり、そこから夫婦仲がぎくしゃくしたりしてちゃぶ台をひっくり返す夫婦喧嘩が起こったり、気の毒な反面、冬の夜に布団の中でぬくぬくと、子らに昔話を話す継母の愛情あふれるあたたかさに、里心がついたような感じになってしまった。(素直になれないだけで立派に親子してるじゃん!)

    27ページの「昔あったとい。」と母が話せば、子らが合いの手のように「聴いたわね。」と返す。(この当時の昔話はこういう形式だったのかな?)ほのぼの~としていて、もうそれは継母とか関係なく、しっかりと親子なんだよね…としみじみ思った。



    耕治人(こうはると) 『東北の女』 星4
    秋田の能代から義姉が娘の幸子(姪にあたる)を連れて上京する。30代後半にもなって妹夫婦には子供がいないし、子供を持つ生活にも心にもゆとりがない日々。そこで幸子をこの妹夫婦の養子にして…という話が、義姉、妹夫婦の間でぎくしゃくと行ったり来たり押し問答のようになる。(結局幸子を養子にもらうことになる)。ある正月に「能代の吹雪を見に行くと思って能代に行きなさいよ」と妻に言われ、幸子と共に能代に行くことになってしまう。
    幸子って名前自体、ジンクスのように幸薄そうだし、展開があやしくてこの後どうなるんだろう…と気になってしまった。幸子に官能的なものを感じてしまった主人公の男。脳裏にチラつく妻の丸い白い体か…それとも幸子か…、もうその心は吹雪そのものなんじゃないかな…と。(こんな風に読んで…いやらしいな私…)



    由起しげ子 『女中ッ子』 星4
    これは山形から上京した初が加治木家に女中として雇ってもらうところから話が始まる。とあることから口約束して、それを信じて加治木家へ押しかけるようにして初は、やって来てしまったのだ…。けど初のすごいところは家事掃除洗濯などを、我流だけどパーフェクトにやりのけてしまうところ。
    まるで“おしん”のよう。加治木家の問題児、次男の勝見(かつみ)のために、奔走する初が力強く健気で可愛らしい。勝見の問題行動もおさまり加治木家は少し落ち着き始める。
    そんな中、勝見をかばって行動したことから、奥さまに誤解され、加治木家を追い出されてしまう初の最後がなんとも言えなかった。加治木家に初のような子は勿体ないと思った。スーパー女中ッ子な初。知らないうちに初が解雇されてしまったら…犬のチビの時のように、勝見が初を探し回って迎えに来たりしたら…。ちょっともえるよね。


    解説の「人と作品」の内容があっさりしていたので残念な感じ。

  • 雪と方言はなんとしっくりとくる取り合わせなのか、と三作品を読んで感じました。
    昭和初期あたりの日本の貧しさ、素朴さが伝わってきました。

  • ≪県立図書館≫

    「母」
    継子と継母の、埋められない溝。
    誰が悪いわけではない。
    「血」というものは、不思議だ。
    昔話でもよくある。
    かぐや姫だって、皆に大切にされたのに、結局は月に帰ってしまうのだ。
    産みの親の力は、大きい。
    善人同士であたたかい心を持っていても、客観的には取るに足らないささやかなことで、変に遠慮をしてしまう。
    少し悲しい。

    「東北の女」
    いやー、実に厚かましい!!
    ふといなぁ。
    そんなに太くなれるくらい、切羽詰まっていたのだろうけれど、自分の娘を押し付けに行く、なんて、ちょっと現代では感覚が違うなぁ。
    昔は養子とかが普通に行われていたのだろうけれど。
    もう大人になりかけている幸子は、どんな気持ちで叔父のアパートへやってきたのか。
    彼女の様子から、それは並々ならぬ決意があったろう、と想像できる。
    最後の、実家に帰省した際の幸子のくつろいだ様子が、今までの姿と対照的にうまく描かれている。

    「女中っ子」
    これも押しかけるお話だ。
    勝見への愛情があたたかい。
    梅子夫人は女くさい(女らしい)わがままぶりだ。
    常に自分の気に入ったようにしたい、誰か悪者を作っておきたい、そんな人だ。
    勝見と梅子の関係が改善すると、勝見と初との間が離れてしまう。
    いたしかたない、と思う。
    しかし、勝見ぼっちゃん、初が去ったこと・その理由を知ったら、彼の小さく温かい心は痛むことだろう。
    それでも、彼にとっては、当然母の存在のほうが大きいに決まっているのだけれど。

  • <閲覧スタッフより>
    雪をモチーフにした「母」、「東北の女」、「女中ッ子」の短編三作を収めた作品集。三作とも地方の貧しい風景が垣間見られますが、しんしんと降る雪は人の温かさを際立たせています。この温かい物語を読んでほっこりしませんか?
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    所在記号:908.3||ヒヤ||25
    資料番号:20097251
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  • 乳房の間の汗の匂い、干し魚の焼ける匂い、犬の寝床になっていたウールのオーヴァーの獣臭い匂い。 でも、雪のように清潔な小説たち。東北の雪景色にしばし想いを馳せる。 冬の夜、外には雪が音もなくしんしんと降り積もっている。 「昔、あったとい。」繰り返される母の昔話し。 「聴いたわね。」と応答する子どもたち。 雪に閉じ込められた今日の日に読むことができた幸せ。

  • あったとい きいたわね

    おれきっとおめご台所を片付けっぺと思ってたて

    学校に来るなよ、女中ッ子ってみんな僕のこと云うから

  • 雪の降る日に一章づつ読んで、三年越しで読了。
    カバーをとった表紙のイラストも良かった。

    母 は、雪が降る中、一つの火が灯っている感じ。
    東北の女 は、一言で言うと、味わい深い。その言葉が適切かどうかはわからないけど、読了後にそう思った。
    女中ッ子 は、雪の場面が印象的に使われていた。読後感は良い。

  • 『母』加能作次郎
    継母継子の間のやるせなさ。『あったとい。聴いたわね。』のリズムが余韻を残す。

    『東北の女』耕治人
    子を持つこと。貧窮からくる苛立ちや情けなさを感じつつ、心に温かさを覚える。ハタハタのすし漬、ごはんの描写は読んでて楽しい。

    『女中ッ子』由起しげ子
    働き者で強く優しい初。気持ちよく読める。

  • 雪が降ったので読んでみることにしました。
    いつのまにか読み終わってて、読後感が非常によかったです。
    女中ッ子は映画化もされたということで、読んでいてひきこまれていきました。東北の女も、母も、古い時代のよき日本を思い出させてくれてよかった。
    心温まる作品達。いい文庫です。

  • 加能作次郎『母』
    耕治人『東北の女』
    由起しげ子『女中ッ子』

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