(027)店 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.32
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119099

作品紹介・あらすじ

雑誌を読むほかにたいして楽しみのない又吉は、ある日、「ペン・フレンド募集」の手紙を投稿する。思いがけず若い娘から返事が来て心浮き立つのだが…。靴店に住み込みで働く青年の恋を爽やかに描いた石坂洋次郎の『婦人靴』。少年時代に働いていた店のマスターを街で偶然見かけ、かつての苦い経験がよみがえる椎名麟三の『黄昏の回想』。家族を思いながら働く少年の淡い恋が雪景色に美しく映える『雪女』(和田芳惠)。小さな店の一隅に息づく、ひたむきな青春の恋と憧れ。

感想・レビュー・書評

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  • 『婦人靴』石坂洋次郎
    もっと明るい感じの話を書く方かとなんとなく思っていた。別に暗いとまでは言わぬのだが。

    『黄昏の回想』椎名麟三
    こっちは本格的に暗い。

    『雪女』和田芳恵
    調べてみたら男性の作家さんだった。ギリギリまで言葉を削った文体。ちょっと他も読んでみたい感じ。

  • 現代に置き換えると、『婦人靴』のカップルは多分成立することなく、SNSの向こう側から互いを罵り合っていそうな気がする。

  • そろそろどれを読んでどれを読んでないのかぱっとわからなくなってきたこのシリーズ。
    日本人作家オンリーのはこれが初めてかな。
    靴屋、料理屋、印章店、それぞれで奉公してる(してた)男性が主人公。

    石坂洋次郎のは後に映画化もされたとか。
    昔の短編て、「え、そこで終わるん?」て所で切れるから、その後どうなるのかの方が気になったり、匂わせも薄くて(こちらが掬い取れてない可能性もあるけれど)どっちにも取れるような気がするからもやもやする。
    お互い情報盛ってペンフレンドからお付き合いしてる二人が可愛いので、その後めでたしめでたしになって欲しい。
    ヒロインがとても魅力的。

    椎名麟三のは時代の部分もあるとは言え店でのイジメが酷い。

    和田芳惠のも、後継ぎとか地元の住職に相談とか、一昔前には普通な設定で、身体障害を負った青年と気働きできるちょっぴり積極的な料理屋のお嬢さんの恋愛ものだった。
    雪の日に下駄に雪かませて背伸びするとか、なにそれ可愛いな。

    何と言うか、素朴な恋人達に心洗われた気がする。

    装画 / 安井 須磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一
    底本 / 『石坂洋次郎短編全集 第3巻』(講談社)、『椎名麟三全集 1』(冬樹社)、『和田芳惠全集 第2巻 短編小説Ⅱ』(河出書房新社)

  • 『婦人靴』は読むこちらが気恥ずかしくなるような初々しさ。若い二人はその後どうなったのでしょうか。
    『黄昏の回想』は闇が深かった…。苦々しい読後感でした。
    『雪女』は未来が明るそうでこの本の中では一番すっきりとした読後感でした。

  • 「婦人靴」
    ああ、なんと若い。
    なんと未熟で青く、すがすがしく滑稽な。
    若くて苦しいが故の、二人だ。
    やっと足が現実の地面に着いてきた二人の今後が、地味でささやかであっても、実りあるものであることを願いたくなった。

    「黄昏の回想」
    図らずも人に不快感を与えてしまう。
    そういった傾向の人っていると思うし、私自身にもそういった部分はあると思う。
    切ないことだ。
    私たちは、この体と精神という檻の中で生きているのだなあ、と思った。
    マスターの若林に対する歯がゆさや不快感や苛立ちは、よくわかる。
    そして、若林の辛さも、よくわかる。
    マスターはバカではないのだ。
    人間の汚さも、自分の弱さも、しっかりと知っている。
    どちらかというと、温かいほうの人間なのだと思う。
    店の待遇や、若林以外の人への対応を見ても、それは感じる。
    だからこその苛立ちだ。
    人はみな、孤独なものなんだな、と思った。

    「雪女」
    淡々と、感情を入れ過ぎない客観的な文章だから、登場人物の気持ちがまんべんなく感じられた。
    それぞれの人物の思いが伝わってきた。
    みんながあるべき場所にたどり着けたかのような結末だった。
    とても優しいお話だ、と思った。
    悪い人が出てこない。
    おだやかな田舎の、いいお話だった。

  • 婦人靴

  • 2013.5.17
    『婦人靴』石坂洋次郎
    ペンフレンドとの恋。先が読める、分かりやすい話。

    『昏睡の回想』椎名麟三
    陽気なカフェーのマスターの闇、虚しい老後。

    『雪女』和田芳恵
    カッケの判子彫。内容はあまりだけれど静かな文章は好き。

  • 石坂洋次郎『婦人靴』
    椎名麟三『黄昏の回想』
    和田芳惠『雪女』

  • 和田芳惠の「雪女」が映画的で面白く読んだ。

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著者プロフィール

石坂洋次郎(いしざか・ようじろう)
1900年、弘前市生まれ。旧制弘前中学校(現・青森県立弘前高等学校)から慶応義塾大学に進学。国文科を卒業後、旧制弘前高等女学校(現・青森県立弘前中央高等学校)に勤務。秋田県の旧制横手中学校(現・秋田県立横手高等学校)勤務時代に『若い人』(33年)『麦死なず』(36年)を発表し、作家としての地位を確立し専業作家となる。戦後は『青い山脈』(47年)が単行本・映画ともにブームとなるほど大ヒットを記録。「百万人の作家」と呼ばれ、流行作家に位置づけられ、作品の多くは映画化された。66年に菊池寛賞受賞。86年に静岡県伊東市の自宅で没。代表作は『石中先生行状記』『陽のあたる坂道』『あいつと私』など多数。


「2020年 『乳母車・最後の女 石坂洋次郎傑作短編選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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