(031)灯 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119136

作品紹介・あらすじ

結婚を控えた男が友人と語りあううち、風邪で寝込む許婚者の容態が気になり始める。春の冷たい雨の中、家へと急ぐ男の不安は果てなく広がり…(夏目漱石『琴のそら音』)。芸者街から忽然と姿を消した名妓「きみ子」。激動の維新期に覚悟をもって生き抜いた女性の潔い愛の物語(ラフカディオ・ハーン『きみ子』)。初冬の月夜、人力車にのって坂をくだる病の子規が、人波とまばゆい明かりをつきぬけていく美しい瞬間(正岡子規『熊手と提灯』ほか三篇)。情趣深き文章世界。

感想・レビュー・書評

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  • ビッグネームが3人揃った

    夏目漱石『琴のそら音』
    心理小説とでもいうのか。うまい(文豪をつかまえて言う話でもないが)。そのうち『夢十夜』を読もう

    ラフカディオ・ハーン『きみ子』
    ラフカディオはミドルネームだと。時代考証(?)がちょっぴり変なのはご愛嬌。怪談ばかりではないのね

    正岡子規
    掌編が4つ。
    『飯待つ間』や『熊手と提灯』の観察眼。『ラムプの影』はたしかに子供のころ、風邪をひいて寝ていると天井やら何やらの模様が人の顔なんかに見えたものだ。このひとの文学と、病により寝ていないといけない境遇は、やはりつながっているのか

  • 国内外の名作を漢字1字のイメージに合わせ纏められた短編集。作中に登場する「灯」達は、「命」や「人生」の象徴なんだと感じた。揺らぎ、燃え、くすみ、輝く命。味わい深い読書の時間をありがとうございました!

  • この百年文庫は作品のテーマに沿って編集されるものもあるが本書などは明らかに3人の作家の繋がりで並べているのがわかる。漱石の『琴のそら音』は岩波文庫だと『倫敦塔・幻影の盾』に収録、ということはすでに読んでたのだなぁ。78/100

  • 「灯」をキーワードに、漱石とラフカディオ・ハーンの小説、正岡子規の随筆が収められた短編集。少し怪談めいた提灯の灯、病床で見つめる幻想的なランプの灯など、三者三様の「灯」の味わいが楽しめます。漢字一文字が各巻タイトルのこのシリーズは全百巻。その時の気分に合わせて選んだ漢字から、次々と思いがけない作品と出会えるのが魅力です。

  • この時代の言葉難しいけど、短編集だからさっくり読めた!
    スピリチュアルなことを信じないけど、奥さんのことになると心配する男の人の話。
    カリスマ芸者のきみ子の話。
    病弱で寝たきりの子規の話。

  • 『琴のそら音』の不安な心が周囲の様子で段々と増す様子が真に迫っており、流石は文豪と呼ばれる人の作品だと感じました。友人との会話のテンポの良さ、犬の不気味な声のオチ、幸福な笑いに包まれる終わり方と素晴らしかったです。

    『きみ子』は美しい名妓の矜持、凛とした心にはっとしました。冒頭の歌が彼女の全てを表していると思います。

    『熊手と提灯』の勝手に道行く人の職業や家庭を想像する姿が楽しかったです。提灯を掲げた街の幻想的な美しさも想像して楽しめました。
    『ラムプの影』の楽しさの中の不安定さ、あやふやさ。最後は不穏な心地で終わるのが彼の人生の短さを暗示しているようで何とも言えない気持ちになりました。

  • 「琴のそら音」
    この会話の感じが、実に漱石らしい。
    文中に琴はでてこないけれど、きっと心の琴線のことなんだろう。
    心が勝手に揺れ動いて、音が聞こえたかのように勘違いする。
    そんなお話だった。
    最後の明るい笑い声を、門の外から聞いているかのような気持ちになった。

    「きみ子」
    なんと凛とした生き方なんだろう。
    書き出しの提灯の並ぶ通りの風情と、きみ子の生き方と、それらは非常に似ている。
    こざっぱりとして静かで、芯の強い深みをたたえて夜に守られている。
    強く賢く潔く、実に素晴らしい女性だと感じた。

    「飯待つ間」「病」「熊手と提灯」「ラムプの影」
    病気の中、聞こえてくるもの見えるもの、感じること。
    あるいは、体が弱いからこそ研ぎ澄まされる感性。
    特に、「熊手と提灯」の妄想は楽しい。
    熊手を持った人たちと通り過ぎているだけなのに、人物を観察して豊かに楽しんでいる。
    そして、提灯の明かりの美しさに、自分も子供に戻って手を引かれて歩きたい、と感じる、その心のやわらかさ。
    「ラムプの影」の、明かりの中に様々な顔を見るのも、まるで子供のような、熱でぼんやりしているような、そんな純粋さと不安定さとを感じた。
    正岡子規は、多分今回が初めてだと思うけれど、とても読みやすく、繊細だと感じた。

  • 夏目漱石「琴のそら音」
    幻想的な作品。非日常的概念である死についての怖さを感じたときの描写がとくに的確だった。

  • 「琴のそら音」読んでいるこちらまで息苦しくなるような、不安にさせられるこの文章はさすが夏目先生です。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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