(037)駅 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119198

作品紹介・あらすじ

雨の夕闇、列車事故の現場に駆けつけた駅長は担架に寝かされた女に心奪われた。大きな黒い目、青ざめた顔。生真面目な男の胸に炎と影が揺れだす-。一瞬の出会いが運命を激変させていく様を描いた『駅長ファルメライアー』(ヨーゼフ・ロート)。往年の名優が芸の苦悩を語り、旅の同行者が意外な解決策を講じる車中のミステリー『グリーン車の子供』(戸板康二)。客から責められる下級官吏の哀しみが迫る『駅長』(プーシキン)。駅を舞台に回りだす愛と運命の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 一作目だけ読んで一年ほど放置していた。
    プーシキンの大尉の娘を読んだところで、そういえばこの本にもプーシキンがいたような、と再び手に取った。

    三作を読むのはなかなか大変。
    テーマは同じだが、作者が違う短編を次々に読むのは疲れる。
    百年文庫の企画には感動し、数冊買い求めたけれど、今後もこのシリーズは無理せずに読むことにする。

    三作の各々の雰囲気、全体のまとまりは悪くなかった。

    ヨーゼフ・ロート 駅長ファルメライアー
    悪くないけど後味が良くない。ズルズル苦しい話。
    ヒロインが脳内ではメーテルになってしまう。
    妊娠しそうもないキャラクターだったので、この展開にはびっくり。
    ファルメライアー、という名前は銀英伝にいそう。

    戸板康二 グリーン車の子供
    母語の日本語で、この作品の機微が楽しめる幸せを思った。
    なんのことはないけれど、現実にあったらけっこうウゲーとなる話。
    昔の新幹線は食堂車があっていいなあ。
    見知らぬ大人に、隣の座席に1人で座る子供の面倒を頼んだりできていいなあ。
    ここまでやって、歌舞伎の出演を頼むなんて、この子供には更なるプレッシャーではないですか。

    プーシキン 駅長
    大尉の娘でも思ったけど、プーシキンのロシアは原始的すぎる。
    なんだこれ、人攫いだろ。
    封建制度というか農奴制のロシアの人権意識が本当に古い。
    だって一応、19世紀ですよ。三国志かっての。

    プーシキンを2作読んで、この作家の美点が物語の構成力であることがよくわかった。
    小物の配置がうまいと思う。
    この作品では、放蕩息子の絵。


    駅がテーマになる作品はなかなか多そうだ。
    人が動けば物語も動く。
    今回、割と後味の悪いこの三作(とくに一作目、三作目)をなぜ選んだのかなあーと思った。

  • どうしようまた出てくる男がサイテーだ(笑)(『駅長ファルメライアー』主人公と、『駅長』の娘を誘拐婚したロシア大尉)
    この夏借りてきた本にはサイテー男しかおらんのか?
    間に挟まっていた戸板康二の老優中村我楽にほっとした。
    どうやら我楽が活躍するシリーズがあるらしい……もう少し歌舞伎熱が出てきたら読んでみようかしら。
    そしてずっと「こうじ」だと思っていたけど「やすじ」なんだね。

    装画 / 安井 寿磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一

  • 戸板康二『グリーン車の子供』
    こういう事件の絡まない推理小説はあまり良いものに巡り合わないが、これは途中まではそもそも推理ものと悟らせない語り口で、傑作の部類に入るだろう。50/100

  • 『駅長ファルメライアー』のロシア貴族の女性にうつつを抜かして妻子を捨てる主人公、『駅長』の駅長の娘をさらう士官と酷い男の話の間にある『グリーン車の子供』の二人が清涼剤のようでした。
    中村雅楽の登場する探偵ものを読んでみたくなりました。

  • 「駅長ファルメライアー」会いたいという執念がすごい。戦争が時代背景なのでもの哀しい。「グリーン車の子供」が秀逸。新大阪から東京まで隣に座った子供の面倒を見ることになった仕掛けがたった30頁に凝縮されていておもしろくすばらしかった。「駅長」は女をものとみている時代なのでどうも相容れない。

  • 「駅長ファルメライアー」
    恋は恋のままで、実際の生活をするにはあまりに浮ついていた、ということか。
    伯爵の生還は、リアルな現実の生還。
    ファルメライアーは、あれほど恋い焦がれた彼女とともに逃げ出すこともできなかったか。
    彼女が子どもを宿していなかったら、二人で逃げていたのかもしれないな。
    弱い。
    地に足がついていない。
    軽薄で盲目だが、それでも、彼女を思い続けて戦争を生き抜き、彼女にたどり着いてものにするというファイトは、すごいと思う。

    「グリーン車の子供」
    なるほど。そういうことか。
    芸事の世界は、本当に厳しいなあ。
    自分の実力をなんとか見せて、気に入ってもらわなくてはならない。
    でも、これ、失敗していたら逆効果なのではないだろうか。
    この子の様子は、だからこその緊張感、なのだろうな。

    「駅長」
    遅い。
    なぜ、もっと早く会いに行かなかったのだ。
    なんだかやり方がおかしい。
    最初は強引に出ていく必要があったのかもしれない。
    いや、それすらもう少しまともな方法だってあったろうに。
    私には時代や社会の知識が乏しいので、このような駆け落ち的なやり方しかなかったのかどうか、判断ができない。
    結局愛人どまりだった、ということなのかな?
    だから確実に反対される。
    ゆえの駆け落ちか?
    わからないけれど、お父さん、かわいそう。

  • 二回くらい読んだのにもうぜんぜん思い出せない。

  • ヨーゼフ・ロート『駅長ファルメライアー』
    戸板康二『グリーン車の子供』
    プーシキン『駅長』

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号908.3/H99/37

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著者プロフィール

1894年、東ガリシアのブロディに生まれる。1939年、亡命先のパリで死亡。1923年からドイツの代表紙「フランクフルト新聞」の特派員となり、ヨーロッパ各地を巡ってユニークな紀行文を書き送り、売れっ子ジャーナリストとなった。その傍ら創作にも手を染め、1930年の長編小説『ヨブ─ある平凡な男のロマン』は現代のヨブ記と称された。1932年にはかつての祖国ハプスブルク帝国の没落を哀惜の念を込めて描いた『ラデツキー行進曲』を発表し、小説家ロートの名をも不動のものにした。

「2021年 『ヨーゼフ・ロート ウクライナ・ロシア紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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