(039)幻 (百年文庫)

  • ポプラ社
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感想 : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119211

作品紹介・あらすじ

「どうせ私なんかどうなったっていいんです」「死んだっていい人間は沢山あると思います」温泉場の別荘に雇われた「お夏」の率直な言葉に療養中の孤独な「私」は心動かされる。死を予感する者との不思議な結縁を描いた川端康成の『白い満月』。ふと顔をあげると壁に見慣れぬ染みが-。ささいな視覚の刺激が解き放つ想像力の奔流(ヴァージニア・ウルフ『壁の染み』)。夜の散歩者が幻のような物語を回想する尾崎翠の『途上にて』。詩的な直感に満ちた幻視的世界。

感想・レビュー・書評

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  • 川端康成「白い満月」
    おそらく自分と血の繋がっていないであろう妹の存在を知ったとき、主人公は母を憎むのではなく愛した。
    母の不貞に対する責めや許しといった感情を超えて、妹の美しさから母の生の美しさを知った。

    この辺りの述懐がとても良い。無からこの記述を思いつくの凄まじすぎる。文豪…。
    たまに出てくる「青い焔」は良い意味で使われているっぽいがどういうことなのだろうな。
    穏やかな熱情という感じかな?

    だから妹の美しさを軸にした話かと思ったらなんならそれはおまけみたいな展開。なんで?
    登場人物は納得しているらしいが、なんで?と思うポイント、沢山ある。
    そういうぼんやりとした不安感みたいなのも、読者を引き込むテクニックだったりするのかな。
    現代小説は逆になんでも説明しすぎなのだ、という言説があると予想します。

    来歴のところに川端康成のエピソードが書いてあって、
    芥川賞の選考委員の際、太宰治の作品を「お前の素行がヤバいので落とす」って言っちゃって太宰治にめちゃくちゃ恨まれ、「てめーなんか遊んでるだけのくせによ」というような文章を発表されてるのみんな正直で面白すぎる。

    ヴァージニア・ウルフ「壁の染み」
    壁の染みを見た女性の散文的な考えを全て書き起こしたような内容。
    精神分析的心理療法みたいだけど、あれは喋るし聞き手がいるから有効なのであって、自分の手で書いて誰の介入もなしに何度も推敲してたら頭おかしくなりそう。
    実際作者は有名すぎる遺書を残して自殺している。

    尾崎翠「途上にて」
    夜の散歩を回顧しながら書いたお話で、内容も胸が詰まるような終わりをするのに何故か爽やかでいい。大らかな女性の視点で書かれてるからかな。
    この本の中では一番好き。

  • 日本が誇るノーベル文学賞受賞者作品を、もっと読んでみないと!ってことで。加えて、”灯台へ”がピンとこなかったウルフ作品も、短編なら何とかなるかも、っていう期待も抱きつつ。1分け2敗。川端作品は悪くなかったけど、他2作はやっぱりというか、合いませんでした。特にこのウルフ作品、とりとめもない空想録を、どう味わえば魅力的に感じられるんだろ?いわゆる文学作品で、こういうタイプのものが一つのジャンルを成してる気がするけど、どうしても良さが理解できません。まあもう、仕方ないわなって感じ。

  • 『白い満月』の八重子の無意識の身勝手さに振り回されてしまう静江の姉妹の対比と女中のお夏の哀しみを持つ控え目さ。
    全体に『死』が潜んだ物語の中で女性陣の個性が目立ちました。
    文章は美しいけれど話の内容としてはあまり好きではありませんでした。

    『壁の染み』の次々と湧き出る想いに圧倒されました。勢いに押されて苦しかったです。

    『途上にて』はこの本の中では一番落ち着いて読めました。
    きんつばが食べたくなります。

  • 「白い満月」
    精神というものの不思議を感じる。
    なんだか、「女」という生き物の、奇妙な精神の力が描かれているように感じる。
    弱い男。
    そして、したたかであると同時にもろくもある女。
    ここに出てくる女たちには、それぞれの吸引力がある。
    そして、男はそれに振り回されているのだ。

    「壁の染み」
    この人は、暇なのだろうな。
    たかだか壁の染み一つから、ここまでグダグダと思考を流すことができるのだから。
    文化だの常識だの、誰かが決めたことに振り回されるあほらしさ。
    そういう思いが伝わってきた。
    本当にものごとを知る、ということの不可能さのようなものも。
    科学や文化への嘲笑か。
    思考の断片が寄り集まった文体なので、読みにくい。
    読みにくい中で、こういったものを感じた。

    「途上にて」
    幻想的過ぎて、共感がしにくい。
    変な夢を見ているような気持がした。
    手ごたえが薄い。
    正直、こういうタイプのものは、疲れる。
    そして、私には、残りにくい。
    読み終わったと同時に、淡く揺れて消えそうで消えない光。
    その実態はわからない。
    そんな印象だ。
    正しく、幻のようなテイストの作品だと思った。

  • 感覚を呼び起こす言葉

    パラダイスロスト、チョコレエト玉、ノオト、きんつば、油のにおい、くびまき、こおろぎ

  • 川端康成の「白い満月」、ヴァージニア・ウルフの「壁の染み」、尾崎翠の「途上にて」。
    「幻」という一文字で集められた3つの物語。百年文庫の魅力を知った。

  • 装画 / 安井 寿磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一
    底本 / 『川端康成全集』第2巻(新潮社)、『ヴァージニア・ウルフ短篇集』(ちくま文庫)、『底本尾崎翠全集』上巻(筑摩書房)

  • 川端康成『白い満月』


    「私」と「お夏」の関係が、とても美しく羨ましい。恋でも愛でも恋愛でもない。お夏だって、決して見目麗しいわけではないのに。これは、なんなのだろう。ラスト数行で見事に惹きこまれてしまったわ。

  • 川端は珍しく途中まではよかったんだけど、書き過ぎ。ヴァージニア・ウルフは既読。尾崎翠、初めて読んだけど、文体が独特でなかなかおもしろいかも。

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著者プロフィール

1899年生まれ。1920年東京帝国大学文学部英文学科に入学(のち、国文学科に転科)。1921年第六次『新思潮』を創刊。『伊豆の踊子』や『雪国』などの作品を残す。1961年文化勲章受章。1962年『眠れる美女』で毎日出版文化賞受賞。1968年10月、日本人初となるノーベル文学賞受賞が決定する。1972年没。

「2017年 『山の音』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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