(041)女 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.77
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591119235

作品紹介・あらすじ

男が会社をクビになってから、ふたりの生活は落ちるところまで落ちた。二言目には「死ぬ」という惰弱な男に女は愛想を尽かすのだが…切れそうで切れない男女の絆(芝木好子『洲崎パラダイス』)。大学を出たばかりの「ぼく」が浅草の大姐御とすごした一夜の思い出(西條八十『黒縮緬の女』)。二十年連れそった夫が浮気し、妻はさっさと離婚届を出すが、なぜか夫を奪った女や子どもの面倒までみてしまう…(平林たい子『行く雲』)。男女を超えた情けの深さ、遙かなる女ごころ。

感想・レビュー・書評

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  • 当時の風俗とともに面白かった。

  • 芝木好子『洲崎パラダイス』、西條八十『黒縮緬の女』、平林たい子『行く雲』の3編収録の短編集。『洲崎パラダイス』は芝木好子の初期の歓楽街3部作の代表作。私が好きなのは後期の美術や仕事に邁進する女性の姿を描いたものだが、やはり女性を描くのがうまい。分かっていても足を洗えない売春婦の哀しみ。混沌とした時代ならではの女性の生きるさまが、今の行き詰まった日本に通じるものがあるような気がする。「堅気」だと嘯きながら男を絡め取る媚態は、私たちが生きる上であきらめを感じたとき、その愚かしさ、そうしか生きられない性に、ふと共感に似た感情を覚えるのだ。(この百年文庫は、正直このたっぷりとった行間、短篇3本でこの値段は高い、と買わずにいた。しかし手にとってみると、今眼精疲労で読むのが辛い身にとっては、本当にありがたい。しかも今まで読んだ百年文庫はどれをとっても外れなしの名作揃い。中古で少しずつ読み進めていこうと思っている)

  • 西條八十が小説?という意外さがあったが、なかなかに面白く読めた。女、と一言で言ってもここに出てくる3作とも、主人公や脇役含めて皆それぞれに違う性格を持っている。当たり前の話だけど改めてそう思わせる作品の並びである。45/100

  • 『洲崎パラダイス』の堕ちてしまった男女の悲哀。
    『黒縮緬の女』の女の勢いと逞しさ。
    『行く雲』の主人公の複雑な胸の内。

    どの作品もその当時の様子が濃く背景にありました。
    『黒縮緬の女』のテンポの良さが読みやすかったです。

  • 20201203-05 『須崎パラダイス』『黒縮緬の女』『行く雲』短編だけど、どれもしっとりと読ませる。声に出して読みたい感じ。

  • 「洲崎パラダイス」
    なんてダメな女とダメな男なんだろう。。。
    人がどんどん通り過ぎてゆくお店。
    おかみさんの感じる、わびしさというか、空白というか、悲しさというか。
    なんて上手に描くんだろう、この著者は。
    それぞれの心の動きが、まるで自分が感じているかのように読み進めることができた。
    皆の気持ちが、わかる。
    切ないなぁ。

    「黒縮緬の女」
    粋な女だ。
    流石。
    男遊びも金の使い方も別れ際も、ためらいがない。
    スリの手際もさぞ鮮やかだろう、と想像できる。
    彼女にしたら、この若造はおもしろいおもちゃだったのだろう。
    早めに手を引いて、正解。
    若いわりに、危機管理能力が抜群だ。

    「行く雲」
    女の嫉妬や憎しみが、徐々に形を変えていく。
    最後には悲しみと、諦めに似たような感情に変わっていく。
    そして、女礼は逆に、女の複雑な感情に目覚めてゆく。
    やはり、浮気だの不倫だのは、後々よい結果を残さない。
    自分はいいかもしれない。
    しかし、周りを長く傷つける。
    最愛の娘すら、傷つけてしまうのだ。

  • 【2014年_1冊目】
    当時の女性と男性の関係とか嫌いじゃない。

  • 芝木好子『洲崎パラダイス』
    西條八十『黒縮緬の女』
    平林たい子『行く雲』

  • 会社をクビになり二言目には死ぬと自棄になっている義治に連れ添う元娼婦の蔦枝。飲み屋の住み込みになり新しい旦那も見つけ義治に愛想を尽かすがやっぱり別れられない芝木好子『州崎パラダイス』、大学出たての僕が出逢った金持ちで一夜を共にしたお互い素性も知らずに別れた女。その女は有名な掏摸の大姉御だった西条八十『黒縮緬の女』、里子は20年連れ添った夫の浮気で離婚したが元夫が交通事故死し、未亡人の様に浮気相手の女を指図し葬式を切り盛りする。残された遺児の面倒まで見ようとする不思議な女心平林たい子『行く雲』の3篇を収録。

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著者プロフィール

芝木好子(しばき・よしこ):1914-91年。戦後を代表する小説家の一人。生まれ育った東京下町への哀惜を託した文章で知られ、芸術と恋愛の相克に苦しむ女性の生き方を描いた小説に独自の境地を拓いた。芸術院会員。文化功労者。主な著書に、『青果の市』(1941年、芥川賞)、『湯葉』(1960年、女流文学者賞)、『夜の鶴』(1964年、小説新潮賞)、『青磁砧』(1972年、女流文学賞)、『隅田川暮色』(1984年、日本文学大賞)、『雪舞い』(1987年、毎日芸術賞)がある。

「2023年 『洲崎パラダイス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

芝木好子の作品

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