- Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119259
作品紹介・あらすじ
酒飲みの父親が四年ぶりに家に帰ってきた…。つましい庶民の暮らしを一幅の名画のように切り取って見せるフィリップの小さな話(『帰宅』ほか五篇)。甚七老人は縁側で煙草を吹かしながら、ふと墓参りを思い立つ。不思議な明るさに満ちた晩年の故郷の光景(坪田譲治『甚七南画風景』)。ペストが猛威を振るい村人たちが次々と世を去ったとき、森の中で生き抜いた子どもがいた-。祖父が教えてくれた忘れられない話(シュティフター『みかげ石』)。家や土地に刻まれた人の暮らしの物語。
感想・レビュー・書評
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テーマは「老人と子供」なのかな。シュティフターのペスト禍の話、坪田譲治のとぼけた味わい。
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フィリップの短編6作では『ふたりの乞食』の夫婦の気高さが心に残ります。乞食として生活をしても矜持を持ち、乞食をする理由が無くなれば労働を選ぶ妻の心の美しさに惹かれました。
『甚七南画風景』の少しとぼけた風の甚七老人。
読む分にはじわじわと味があるけれど振り回される家族や使用人はきっと大変でしょう。きっと今日も昔を思い出してあれこれしているに違いないと思う。
『みかげ石』の祖父が孫に聞かせるペスト流行時の出来事。
家族総出で人里離れた場所へ避難し、それでも子供を残して病に斃れる一家。残された子供の逞しさと賢さ、結末に安堵しました。
それにしても幼い子供の足に油を塗るなんてひどいいたずらだと思う。 -
「帰宅」
無責任に家から逃げ出してしまったのだから、その結果は当然受け入れなくてはならない。
ずいぶん温かく迎えられた、と思う。
「最初に出ていかなきゃよかったのよ」という、アレクサンドリーヌの言葉が、心に残る。
まったくだ。
「小さな弟」
そうか、子供たちには見せないのか。
いや、子供たちの世話が大変で、出産にさしさわりがでるから、預けられるのか。
新しい家族。
「いちばん罪深い者」
なんというか、微笑ましいというか、愛すべき人物というか。
分かった顔して気どっている人たちよりも好感が持てると、私はつい思ってしまう。
「ふたりの乞食」
なんと愛される乞食!
家がある乞食!
爺さんの死に際の描写は、かわいそうだった。
夫婦の死別は、辛いだろう。
一人になってから働きに出るというのは、なんだか不思議なようにも見えるけれど、大切な人を失った心を埋めるためなのだろうな、と思う。
「強情な娘」
気持ちが、よくわかります。
こうしたほうがいい、と頭の奥のほうではわかっている。
それでも、意地というか、今までの自分の行動との一貫性の惰性・感情は強い。
理不尽さから怒りや不服の感情を持つのも当然だし。
可愛そうに。
彼女には彼女の言い分と苦しみがあり、それは実にリアルに描かれている。
「老人の死」
大切な人を失って、気力と生命力が無くなってしまう様が、上手に描かれていた。
ああなるほど、こんな感じなのか、と。
通夜や葬式では周りに人がいて、なんとなく気が張っていたけれど、いざ一人の生活が始まると、ぼんやりして食欲がなくなり、死に向かってゆく。
悲しいな。
「甚七南画風景」
自分の人生を辿るように、気の向くままに老後の毎日を生きている。
なんと幸せな。
家族も、困ったり怒ったり呆れたりしながらも、おじいさんを大切にしている。
ああ、こうありたい。
そう思える晩年だ。
最後の一文に、なんだか死の予感も漂っていて、ほのかに切ない。
「みかげ石」
私は自然描写が続くと飽きてしまう。
多分、想像力が弱いのだろう。
だから、この話は比較的退屈だった。
読むのに時間がかかってしまった。
現実と童話が入り混じったかのようなテイストだった。 -
今までこのシリーズは3短編収録だったのですが、フィリップのは短いので一人で6編あります。(つまり全部で8編収録)
短かすぎてだから何?というのもあり。
坪田譲治のとシュティフターのは、じいちゃんと少年の会話で進みます。
シュティフターのはちょっと説明が長いわぁ……
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
底本 / 『大人の本棚 小さな町で』(みすず書房)、『坪田譲二全集 第四巻』(新潮社)、『水晶 他三篇』(岩波文庫) -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:908.3||H
資料ID:95121189 -
フィリップ『帰宅』『小さな弟』『いちばん罪深い者』『ふたりの乞食』『強情な娘』『老人の死』
坪田譲治『甚七南画風景』
シュティフター『みかげ石』 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。
通常の配架場所は、2階文庫本コーナー 請求記号908.3/H99/43 -
大きな石でできたとても古い腰かけから思い出される、お祖父さんの忘れがたい話、シュティフィターの「みかげ石」が印象的でした。