- Amazon.co.jp ・本 (146ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119310
感想・レビュー・書評
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一冊に、日本と世界の文豪3人の短編が収録されたアンソロジーシリーズの中の一冊。
初めて読む作家ばかり。現代作家の小説とは異なり、大きな事件や出来事がある訳ではないのに、ひとつひとつの行動や描写が味わい深いものばかりでした。
「茶人」の舟場言葉は懐かしく、黙読しつつ心の中では音読しているような、言葉の響きが楽しく感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
藤沢桓夫、人脈をたどれば庄野潤三にも行き着くのだけど、『冬の花』という作品タイトルにこの間読んだ庄野『早春』にでてきたかな?と曖昧な記憶に改めてページをたぐると伊東静雄『夏花』だったというオチ‥おそまつ。
上司小剣『鱧の皮』。1914年といえば漱石の『こころ』と同じ年に、織田作と言われても信じてしまうほどのモダンな作が著されていた事におどろく。大阪訛のセリフを見事に文字にしているところも当時としては時代の先端ではなかったか。56/100
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食にまつわる短編が集まった『膳』。
『茶粥の記』と『万年青』の澄み切った優しさ、行間から溢れる温かさが素敵でした。
『万年青』の福子の隠居を思う無欲な優しさがじわじわと沁みます。
『茶人』は吝嗇にもほどがあるだろうに…と思いながら読みました。関西弁の語り口がまた内容に合っていて面白味が増していました。
『鱧の皮』は複雑な女心が哀しかったです。
金の無心と希望ばかりを連ねた手紙を送ってくる逃げた夫にそれでも気持ちがあるのだな、と切なくなりました。 -
食べたことない食べ物の話を想像で美味しそうに話して記事まで書いてた夫を回想する矢田津世子「茶粥の記」を始め、食べ物にまつわる小品を4つ収録。
後の藤沢恒夫と上司小剣の作品が、古風な関西弁語りなので、読みにくい人がいそうだけど、関西人ならテンポよく読めると思う。
どの食卓風景も味があるけれど、話自体はいつものことだけどそこで終わるの?というものがあり。
何なんだろうなこれ。
装画 / 安井 寿磨子
装幀・題字 / 緒方 修一
初出 / 『矢田津世子全集』小澤書店、『水のほとり』桂書店、『鱧の皮 他五篇』岩波文庫 -
「茶粥の記」
良人を偲ぶ思いが、じわじわどころか、がっつり伝わってくる。
姑を思うため再婚を拒んでいるような書き方だったけれど、それだけではないよね。
夫婦のあたたかい関係が、やさしかった家庭が、にじみでてくる作品だった。
「万年青」
純粋な想いが、本当の安らぎと関係を生む、という、綺麗なお話だった。
福子という名の通り、人に恨まれず、、幸福な気持ちをもたらす、丸く優しい人柄だ。
この作者の作品は、きれいすぎるくらいの心を持った登場人物が多いのだなあ。
なかなかこのように生きられない、さもしい心の私には、とてもうらやましく思える。
「茶人」
七兵衛さんは、けったいな人だ。
でも、憎めない。
驚いたりあきれたりしながらも、皆は仲間として茶の席に呼ぶのだなあ。
最後の、鰻のくだりが、箸をつけられない気持ちがよくわかって、面白いやら、こんな目には遭いたくないやら。
七兵衛さん、わざとなのか?
それにしても、女性が語っているという体の文章だけれど、どうも違和感がある。
やはり、男が書く女の言葉は、どこか違うなあ。
「鱧の皮」
なんだか日本人的な終わり方だな、と、つい思えてしまった。
鱧の皮。
東京へ逃げて行ってしまった夫との、以前の生活が凝縮されたかのような、鱧の皮の包み。
それを一寸撫でるお文の心。
ちゃんと言葉に表されていないけれど、お文の気持ちは文章の奥で揺れ光っている。
その描き方もうまいな、日本人的だな、と思う。 -
茶粥の記がとてもよかった。
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矢田津世子『茶粥の記』は語り手の女の人がかわい。『万年青』はすごく好きな話。
藤沢桓夫『茶人』ユーモラス。オチがある。
上司小剣『鱧の皮』私からしてみれば別世界すぎて幻想的ですらある。 -
矢田津世子『茶粥の記』『万年青』
藤沢桓夫『茶人』
上司小剣『鱧の皮』 -
茶人の話がおもしろかった。
語り手によって強烈なキャラのおじさんが描かれている。
関西弁がまた妙にいい。
落語のようなおちがあり、
お茶会に行くたびに思い出してわらっちゃいそう。。