- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591119570
感想・レビュー・書評
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夏休みにはいってすぐ、引っ越した町を探検していた6年生の和希は雑木林の廃屋で悩みをかかえる子どもたちと出会う。
年齢のわりに幼い英太、施設を家出した史生、不登校の中学生有佳。
和希は3人が信頼するローシ(老師)に惹かれ、交流を深めていく。
「知っていることがえらいんじゃないんだよ。知りたくても知るチャンスがなかったのだから。
わからないことは調べればいい。自分で調べるんだよ、史生」p.79
しかし、ローシにつながることでできた子どもたちの世界も、おとなの論理によってつぶされてしまいそうになる。
ぼくの親は、和希の自由にしなさいといいながら、必ず道を指ししめす。
この道を進むといいと思うのだけれど、和希はどうしたい? 決めるのはきみだよ。
そうして、親がしめした道を、自分が選んだと思ってこれまでやってきた。
本当はどこかで自分をごまかしているってわかっていたはず。p.170
子どもたちの“ヘヴン”がさわやかに描かれたひと夏の物語、小学生を主人公にした「ノベルズ・エクスプレス」のシリーズで。 -
夏休みに引っ越し先の近くの雑木林でセミ取りの少年と出会ったカズキは、少年に誘われるままに林の奥のボロ家の中に入る。そこにはローシ(老師)と呼ばれる男性がいた。
中学受験を前にピアノをやめるも、腹痛で塾にも行けなくなるカズキ。両親はカズキの自主性を重んじるようでいて、自分たちの望む道へとカズキを導いていく。幼なじみにもキツく当たり、友達とも疎遠になる。
そんなカズキが出会った人たち。
年齢の割に幼い英太、不登校の中学生有佳、施設から飛び出てきた史生、そして故郷から離れ職も失いホームレス状態となったローシ。
彼らに会って彼らとともにボロ家で過ごすことによって、カズキは癒しを得て、新たな価値観や考え方を知る。親の期待に流され、その鬱憤を友達にぶつけていた自分に気付き、本当に自分がしたいことは何なのかを考える。そして本当の自分を見付ける。
大人の事情に振り回される子どもたち。そんな子どもを温かく見守り、時にアドバイスするローシ。
物語終盤に子どもではどうしようもない状況に陥り、子どもであることの無力さを突き付けられる。しかしそれを子ども時代の切ない思い出として物語を閉じることをしない。
カズキの覚悟と決意が示され、未来へと向かうラストシーンに胸を打ちました。 -
夏っぽくていいな、と思った。
それぞれの色んな問題が解決するわけではないけれど、少しは変わったんじゃないか、と思う。 -
きょう読み始めて先ほど読了。濱野京子さんは二冊目。
終わり方に、おおそうなのか、と思う。諦めるけど諦めない、はリアルな結論かもしれない、けれど、その次を描いてみせてほしかった気もする。帰って来てからのことは、また新しい物語、ということなのかな。それぞれの「これから」はわからないまま、ただ新たなはじまりの予感がする。その続きは、いまはまだみえないというのが誠実なのかも。
微妙な気のする読後感。でも、反芻するのも悪くない、かしら。 -
両親の期待に背かない
「いい子」である主人公の少年。
けれど、心の中はもやもやし、
幼なじみを仲間はずれにする、裏の顔を持ち、
その二面性を自分でも受け入れられない。
そんな少年が、ある夏、
小さな雑木林の中の廃屋に集まる
子どもたちと、そこで老師と慕われる男と出会い・・・
少年の両親が、もう、嫌で嫌で!
少年に、がつんと歯向かってほしくて、
しかたなかった!
意外なラストで、
彼は、言葉や態度ではなく行動でそれを示すのだけど、
できれば、その前に、きちんとぶつかってほしかったなあ。 -
引っ越してきたまちで、和希は、暮らしに悩みをかかえた少年少女たちと出会う。彼らを救いたい―でも、助けられないのは、自分が子供だからなの?自分の生活、両親、そして社会に目を向けはじめる…。緑ふかい林の中の幸福な時間をえがく、ひと夏の物語(「BOOK」データベースより)
森の奥の廃屋に棲まうのは、「ローシ」と呼ばれる男性と、彼を慕う子供たち。
そこは、互いに過酷な過去を持つ彼らにとって、まさに天国のような場所だった。
その廃屋に連れられてきたのは、最近引っ越したばかりの和希。
親の望むとおりに生きる息苦しさにあえぐ彼にとっても、そこはひと時のオアシスとなったが・・・。
というストーリーかな。
人より歩く速度が遅くても目的地には着ける、という、ローシが英太に送った言葉が胸に残りました。
なんだか私にまで優しくエールを送ってもらったような読後感。
ラスト辺りがやや急ぎ足な気がしなくもないのですが、教えられた事が多くある一冊でした。
猫野ぺすかさんの版画も温かみがあって素敵でしたよ♪