- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121313
作品紹介・あらすじ
「ああ、日本人、ヘンリイも日本人、俺も日本人」-。カナダ兵として戦勝パレードに参加した同朋の雄姿を、「私」は感慨深く見つめた(谷譲次『感傷の靴』)。一人息子を戦争で亡くしたおときさんと捨て犬のチコ。心寄せ合うふたりの親子愛(子母澤寛『チコのはなし』)。「木ノ花さん、助けてよ。わたし今日、ほんとに困ってんの」。大柄な女性作家に絡まれ、強引に家に連れ込まれた小柄な男性編集者。一晩の駆け引きの顛末は…(富士正晴『一夜の宿・恋の傍杖』)。街角に明滅する人生のドラマ。
感想・レビュー・書評
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谷譲次、林不忘名義で丹下左膳の人なのか。対戦間期のアメリカ物という珍しい設定。
子母沢寛は座頭市。チコのはなしは動物ものだが泣かせる。
富士正晴はこれもあまり読んだことがない痴話喧嘩もの(?)。辟易とする主人公の心情はわかりすぎるほどよくわかる。41/100詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「感傷の靴」
感動的だったろうと思う。
同じ日本人の、凛々しい逞しい堂々たる姿を見て、心を打たれるのは自然な感情だと思う。
日本男児・大和魂。
異郷の地にいるから、より強くそれを意識し、誇りに思う。
卑屈であるとすら思われる、給仕人として生きる自分の姿と現状。
それを象徴するかのような靴。
しかし、靴はもう、彼の目には入らなかった。
まるで背筋が伸びるような、そんな思いがしたのではないだろうか。
しかし、タイトルに「感傷の」とついているところが、結局、なかなか状態は変わらなかった、ということを示唆しているような気がする。
「チコのはなし」
悲しいけれど、ぬくもりがつまったお話だと思った。
登場人物がみな温かい。
幼子が母親を慕う姿、そのまんまのチコ。
何も食べなくなって、ひたすらに母(おときさん)を願うその心、喪失感が伝わってくる。
チコの泣き声が聞こえてくる思いがした。
「一夜の宿・恋の傍杖」
なんだこれ。
支離滅裂としか思えないような、バカみたいなやり取り。
まあ、喧嘩とはそういうものか。
付き合わされるほうは、たまったもんじゃあないな。
男の目には、女はこんなに支離滅裂に見えているのかな。
痴話げんかは犬も食わない、という言葉を体現しているかのような話だった。 -
谷 譲次『感傷の靴』
子母澤 寛『チコのはなし』
富士正晴『一夜の宿・恋の傍杖』
谷譲次の作品





