(053)街 (百年文庫)

  • ポプラ社
3.63
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121313

作品紹介・あらすじ

「ああ、日本人、ヘンリイも日本人、俺も日本人」-。カナダ兵として戦勝パレードに参加した同朋の雄姿を、「私」は感慨深く見つめた(谷譲次『感傷の靴』)。一人息子を戦争で亡くしたおときさんと捨て犬のチコ。心寄せ合うふたりの親子愛(子母澤寛『チコのはなし』)。「木ノ花さん、助けてよ。わたし今日、ほんとに困ってんの」。大柄な女性作家に絡まれ、強引に家に連れ込まれた小柄な男性編集者。一晩の駆け引きの顛末は…(富士正晴『一夜の宿・恋の傍杖』)。街角に明滅する人生のドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 傲慢な靴店店主を思い知らせるために少し無理をして購入した高価な靴。それを加奈陀義勇軍のパレードで履くからと調子のいい同胞に半ば無理やり借りられた主人公がそのパレードでの雄姿を見て感激する『感傷の靴』。
    異国での日本男子の姿は胸に迫るものがあったのだろうな、と思います。
    少し単純だな…とは思いましたが。

    『チコのはなし』のおとよさんとチコの絆に泣けました。
    互いに独りぼっちの一人と一匹の間には強い愛情があったのでしょうね。その他の登場人物も全員が善人でおとよさんとチコの死は悲しいけれど温かい気持ちになりました。

    『一夜の宿・恋の傍杖』の痴話げんかに巻き込まれた主人公に同情します。
    何、このグダグダは…と思いながら読みましたが。

  • 谷譲次、林不忘名義で丹下左膳の人なのか。対戦間期のアメリカ物という珍しい設定。
    子母沢寛は座頭市。チコのはなしは動物ものだが泣かせる。
    富士正晴はこれもあまり読んだことがない痴話喧嘩もの(?)。辟易とする主人公の心情はわかりすぎるほどよくわかる。41/100

  • 「感傷の靴」
    感動的だったろうと思う。
    同じ日本人の、凛々しい逞しい堂々たる姿を見て、心を打たれるのは自然な感情だと思う。
    日本男児・大和魂。
    異郷の地にいるから、より強くそれを意識し、誇りに思う。
    卑屈であるとすら思われる、給仕人として生きる自分の姿と現状。
    それを象徴するかのような靴。
    しかし、靴はもう、彼の目には入らなかった。
    まるで背筋が伸びるような、そんな思いがしたのではないだろうか。
    しかし、タイトルに「感傷の」とついているところが、結局、なかなか状態は変わらなかった、ということを示唆しているような気がする。

    「チコのはなし」
    悲しいけれど、ぬくもりがつまったお話だと思った。
    登場人物がみな温かい。
    幼子が母親を慕う姿、そのまんまのチコ。
    何も食べなくなって、ひたすらに母(おときさん)を願うその心、喪失感が伝わってくる。
    チコの泣き声が聞こえてくる思いがした。

    「一夜の宿・恋の傍杖」
    なんだこれ。
    支離滅裂としか思えないような、バカみたいなやり取り。
    まあ、喧嘩とはそういうものか。
    付き合わされるほうは、たまったもんじゃあないな。
    男の目には、女はこんなに支離滅裂に見えているのかな。
    痴話げんかは犬も食わない、という言葉を体現しているかのような話だった。

  • 谷 譲次『感傷の靴』
    子母澤 寛『チコのはなし』
    富士正晴『一夜の宿・恋の傍杖』

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