顔 (百年文庫 58)

  • ポプラ社
3.40
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121467

作品紹介・あらすじ

なぜ私はだまされたのか?彼の顔を読み違えたのか?生命保険会社で長年、訪れる客を審査してきた「私」が遭遇した意外な復讐劇(ディケンズ『追いつめられて』)。パリの雑踏で出会った「善良な悪魔」に魂を売り渡した男が、地下の豪奢な屋敷で繰り広げる不思議な対話(ボードレール『気前のよい賭け事師』)。イールの街で掘り出された青銅のヴィーナスに魅入られた男たちの異教的な恐怖体験を描いたメリメの『イールのヴィーナス』。欺かれる快感をどうぞ。

感想・レビュー・書評

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  • “顔”それは、相手の感情を揺さぶる武器でもあり、自分の感情を曝け出してしまう弱点でもある。

    ディケンズ『追いつめられて』
    ボードレール『気前のよい賭け事師』
    メリノ『イールのヴィーナス』

    物語の冒頭、ディケンズはこう記す。
    「態度と結びつけて考察した場合の人間の容貌、これにまさる真理というものはこの世にない」

    メリノの物語は「偶像(ヴィーナス)」の不思議な顔が妖しいほど美しく……不思議なお話。

  • 保険金詐欺犯を暴く『追いつめられて』。
    きっちりとした真ん中分けの髪の詐欺犯を砂利道を歩け、芝生には立ち入るなと比喩する文章は詐欺犯の胡散臭さを上手く表現しているな、と面白く読みました。
    ただ、詐欺犯に恋人を殺されたメルサムと主人公がいつ組んだのがはっきりと分からずそこがもやもやとします。

    悪魔と賭け事をし、語り合う『気前のよい賭け事師』は最後の主人公の祈りが面白かったです。神に悪魔の約束が実行されることを祈るとは。

    掘り出された青銅のヴィーナス像の薬指に指輪を嵌めたがために起こる恐怖を書いた『イールのヴィーナス』。
    指輪を嵌めた時点で話の予想はつきましたがそれでも怖い。
    美しいけれどどこか邪悪さを秘めたヴィーナス像、異教の神と言うこともあり怖さが増しているように思います。

  • ディケンズは推理小説の名手でもあるのだな。73/100

  • 「追いつめられて」
    最後の展開は面白かった。
    保険金詐欺であることは容易に想像がついたけど。
    髪の毛の分け目に対する嫌悪の表現が面白い。
    こういう象徴の形で、感情や人物を表す方法があるとは。
    読みやすかった。

    「気前のよい賭け事師」
    悪魔は魅惑的で決してよそよそしいものではないのだ、ということを感じさせる作品だった。
    悪魔は、旧友のようにすっとなじんで打ち解けてくる。
    ちょっとした隙に、自然に強烈に誘ってくるのだな。
    そして、知らないうちに魂を差し出してしまうのだ。
    人が悪に染まっていくのは、こんな感じなのだろうな。
    短いけれど面白かった。

    「イールのヴィーナス」
    怖い。
    美しくも恐ろしい。
    顔というものは、その精神を表すものなのだろう。
    握りこまれた指を見たときの恐怖といったら、なかっただろうと思う。
    陽気で元気で活発だった老人の、息子を失った悲しみと、自分が掘り出した像がの圧倒的な力を思い知らされた感情は、どれほどのものだったか。
    像は、かつて埋められたのかもしれない。
    像の作者は、いったいどれほどの感情をこめて、この像を作ったのだろう。
    命を削って吹き込んで塗りこめて、作っていったのだろうな。
    人の心を震わす作品を見ると、いつもそう思う。

  • これはなかなかおもしろかった! ディケンズの作品はストーリーがしっかり作り込まれていたし、ボードレールの作品の世界観は好みだったし、メリメの作品には背筋をぞくっとさせられた

    ディケンズ『追いつめられて』
    ボードレール『気前のよい賭け事師』 
    メリメ『イールのヴィーナス』

  • ディケンズ『追いつめられて』
    ボードレール『気前のよい賭け事師』
    メリメ『イールのヴィーナス』

  • ディケンズ、ボードレール、メリメ
    の三短編。当時はさぞや斬新な
    作品だったのであろうが、
    現在読むに耐え得るのはディケンズの
    一編ぐらいなものか。
    特に、ボードレールの作品は
    散文詩なのだから、翻訳したものを
    読んだところで醍醐味は
    味わえないのだろう。
    メリメに至っては…この短さなのに
    冗長さを感じてしまった。
    この手の世界の「名作」短編の
    アンソロジーなどは、たまに無性に
    読まねばならぬ!という気持ちに
    駆られるのだが、一々自分で集めるのは途方もないことだし、こういった
    シリーズは大変有難いものである。
    ましてや図書館で借りられるのだから
    なんの文句があろうか。
    星二つだけど。

  • 『追いつめられて』 ディケンズ

    『気前の良い賭け』 ボードレール

    『イールのヴィーナス』 メリメ

  • 裏表紙の「欺かれる快感をどうぞ」の言葉に惹かれて図書館で借りた。

    活字も大きくて短編3つと読みやすいので、海外の作品を試しに読むのにちょうどいい。
    「イールのヴィーナス」がホラーぽくて好き。

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著者プロフィール

1800年代を代表するイギリスの小説家。おもに下層階級を主人公とし、弱者の視点で社会を諷刺した作品を発表した。新聞記者を務めながら小説を発表し、英国の国民作家とも評されている。『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『デイヴィッド・コパフィールド』『二都物語』『大いなる遺産』などは、現在でも度々映画化されており、児童書の発行部数でも、複数の作品が世界的なランキングで上位にランクされている。

「2020年 『クリスマス・キャロル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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