- Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121474
感想・レビュー・書評
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「馬」の読書会のために読んだ。このシリーズはテーマが同じでも3つの味が楽しめるしさっと読み終われるしよいですね。
吉田健一「海坊主」:この人の文章はふわっと読み進めさせる謎の推進力があって、1周目はその力に乗ってぼんやり読んでしまった。2周目は海坊主の海坊主らしさをそこかしこで味わえて楽しかった。昔の人はよく食べよく飲みますね。吉田健一だからかもしれないけれど。
牧野信一「天狗洞食客記」:俺は駄目だ男パニック系作家として牧野信一はとてもよいのだけれど、なにせいつもテンパっているので読んでいて疲れてしまう。しかしこういうアンソロジーで一つだけ読むとちょうどよい感じ。本作は基本のテンパりの合間合間に庭や女中さんの美しさがみずみずしい文章で挟まれるのがよかった。天狗洞のシステムもふざけていて可笑しい。牧野信一にはもっとふざけて長生きしてほしかった。
小島信夫「馬」:この夫婦、たぶんこれはこれで愛しあっているんだろうなと思いつつ、戦前と戦後の意識の転換のなかで身動きが取れなくなっているさまがいじらしく可笑しい。お互いを必要としているのにどうしようもなくコミュニケーションが取れない二人。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
馴染みの店に初めて来た客と飲み、店を梯子してその男の大らかさ、力強さに引き込まれるように話は進み…最後は「え?」となる終わり方の『海坊主』は不思議な話でした。
精神を病んだ主人公を持て余した身内に道場に預けられ、酒浸りの謎の修業をする『天狗洞食客記』は何だか訳のわからないまま勢いで読まされたような気がします。
登場人物が個性的過ぎて付いていけませんでした。
『馬』は愛の告白を言質に取られ妻の言うがまま、家を建てた借金返済のために働かされる男の物語。
これもまた妻の横暴に従う男の気弱さ、頼りなさに付いていけませんでした。
妻の言動が謎すぎる…。 -
客というテーマにとらわれずとも、この3作品は小説としてのテイストに通じるものがあるのではないか。特に「天狗堂食客」と「馬」はどこか人を食った語り口とユーモアに転がされるように読めてしまう。吉田健一の「海坊主」はこの人にしては読みやすい文体で、食通・酒呑みとしての本領が発揮された一編。
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この本は、確かに「客」のお話だけれど、内容としてはどれも微妙だった。
「海坊主」
ラストが・・・
ちょっと、きょとんとしてしまった。。。
何の話??
読み返すと、男の表現に、正体を暗示する表現が多数使われているけれど。
人間離れした食欲が描かれているけれど。
面白いか?これ。
よくわからん。
「天狗洞食客記」
なんだこりゃ。
変人ばかり。
それぞれの目的と勘違いが奇怪。
面白いか?これ。
やっぱり、よくわからんぞ、今回。
「馬」
なんて頼りない男。
馬鹿すぎる。
確かに、このような男にはトキ子みたいな女がちょうどいいのかもしれない。 -
吉田健一『海坊主』
牧野信一『天狗洞食客記』
小島信夫『馬』 -
奇想天外な物語三編。
吉田健一「海坊主」(1956)、牧野信一「天狗洞食客記」(1933)、小島信夫「馬」
(1954)。
あらすじを書いてはおもしろみが半減するので、読んでみてのお楽しみ。「海坊主」は、銀座の夜で出会った男の話。後ろの二編は主人公が気にする女性がどうなるのか、気になって読み進んでしまう。 -
吉田健一の作品が、これほど短いものとは、初見の際には思いませんでした。
小島信夫は凄みを感じます。
他の作品、特に長編を読むようにします。 -
日常の中での異世界の住人との交流。
登場する女性たちの謎めいた妖しい美しさにドキドキしました。
小島信夫の『馬』は狂っているのが夫なのか、妻なのか。
不気味だ…と思いつつ、先を読まずにはいられませんでした。
異世界を覗いてみたいという好奇心や怖いものみたさを満たしてくれる1冊です。
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◆収録作品◆
吉田 健一 『海坊主』
牧野 信一 『天狗洞食客記』
小島 信夫 『馬』
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