(074)船 (百年文庫)

  • ポプラ社
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本棚登録 : 31
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121627

作品紹介・あらすじ

「先生さん」の赤パンツは大漁を呼び寄せる。-そんな噂が広まって、とうとう村一番の頑固親父の船に乗ることになった中学教師。海と、海に生きる者たちの生命力が躍動する、近藤啓太郎の快作『赤いパンツ』。大勢の客でごった返す蒸気船。避暑地へ向かう「私」が隣り合わせた、怪しい老婆との長い夜(徳田秋声『夜航船』)。正月を迎える前に一儲け、船長のもくろみは厳しい自然に打ち砕かれた。漂流生活57日、実在の海難事件に取材した野上弥生子『海神丸』。波にもまれ、生の根源があらわにされる傑作三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 近藤啓太郎 「赤いパンツ」 星4
    画家先生が赤い海水パンツを履いて船に乗れば大漁になる。滝の不動さんにお参りに行くよりも、先生の赤パンは縁起がいい。というのを頑なに信じない堅物漁師と赤パン先生の漁の様子が色鮮やかだった。海の青さとぬくい潮、きらめく魚の鱗、群がる海鳥。そしてはためく赤パン。(この作品は映画化もされたらしい)。

    徳田秋声 「夜航船」 星3
    船に乗るまでの押し合いへし合い、そして陣(場所)取りを想像しながら読んだら疲れた。搭乗する者の中に手癖の悪い老婆もいた。場所取りに失敗した老婆一行を気の毒に思った私は、老婆と娘たちに場所をすこし譲ってやることにしたが…。一晩眠り老婆たちは下船する。娘は一刻もはやく盗んだピンを髪に飾りたい。
    陸に上がる人と海に落ちていくピン。その一瞬が美しかった。きらめきながら静かに落ちていくピンは、もう海のもの。


    野上弥生子 「海神丸」 星4
    究極の極限状態だった。嵐に遭い折れていくマスト、流されていく帆。4、50日も漂流し水も食料も尽きていく。その果てにあったものとは……。こういう話だとは思わなかったので魂消た。緊張しながら読んだ。昭和62年に映画化もされたよう『人間』。(記憶にないなぁ…)野上弥生子の作品は初めて読んだけど、骨太で読みごたえがあった。


    海と船…。
    船乗りたちの信仰心は篤い。それもそのはず自分たちが乗っている船がなくなれば身一つで海に投げ出されるのだから。「板子一枚下は地獄」海は豊かであり逆に奪うものでもあるのだなと感じた。『海神丸』がとにかくすごかった。息を呑んでしまった。
    滝の不動さんや金毘羅さんなど、登場する人物たちは信心深い人が多かった。〈梅干の種を海に捨てたりすることはタブー〉(←初めて知った…)。
    “あや”、縁起のいいこと、タブー、験を担ぐなど船に乗るためのルールがたくさんある。

  • 海・船つながり。海神丸の話がすごかった。

  • 近藤啓太郎「赤いパンツ」大漁の験担ぎのため赤いパンツを履いて漁に帯同することになった画家の話。赤みの濃い海老茶のの海水パンツである。寓話めいている。

    徳田秋声「夜航船」狭い船に乗り合わせた男と少々卑しい母と娘たちの道行き。人を見る目、とりわけ容姿に関する描写が厳しい。

    野上弥生子「海神丸」船長、その甥三吉、頭が弱いが気のいい五郎助、隣村から駆り出された八蔵で漁に出るも悪天候により遭難。50日以上に渡る航海で次第に疲弊していきやがてある事件が起こる…。
    最初は読みづらかったが後半に行くにつれヒリヒリとした感情と人間の愚かさ優しさなどに惹きつけられた。

  • 「赤いパンツ」
    読み易く面白かった。
    不思議な赤いパンツ。
    とうとう、現実主義の頑固おやじにもそのパンツにすがることになったんだね。
    運に対する不運におびえる心が、うまく描かれていたと思う。
    それを防いで、使い果たしてしまったんだね。


    「夜航船」
    下卑た人はやはり中身も下卑ているのか。
    ひとの中身は、外に表れるのか。
    親切心があだになるわけだが、ピンくらい、と思える余裕のある気持ちと冷静な視線が、ざわざわした船内をうまく描いている。

    「海神丸」
    極限に追い詰められた男たちの状態が恐ろしかった。
    理性と感覚が狂ってゆく。
    こういう極限の状態には、元々の人間性がむき出しになるのだな。
    猛々しく粗野な人間、愚かな人間。
    船長が船長である所以がよくわかる。
    五郎助の死に方が、なんというか、残念だというか。
    馬鹿は軽薄に死んでゆくのか。

  • 近藤啓太郎『赤いパンツ』
    徳田秋声『夜航船』
    野上弥生子『海神丸』

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