青 (百年文庫 77)

  • ポプラ社
3.63
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本棚登録 : 74
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121658

作品紹介・あらすじ

十五歳の夏休み、都会から海辺の村にやって来た「私」の前に、幼馴染みだった少女が一人前の娘になって現れた。思春期の淡い恋を描く、堀辰雄の『麦藁帽子』。いつまでも仲良しでいようと誓い合った二人の少女。だが、久しぶりの再会が、それぞれの心に微妙なずれを生じさせていく(ウンセット『少女』)。「ぼくは誰とも結婚なんかしないよ」。失恋し、傷心で帰郷したアントニオだったが、ひたむきな田舎娘コロンバに出逢い、思いがけず愛の情熱を知る(デレッダ『コロンバ』)。ほろ苦く甘美に押し寄せる、遠い日の記憶。

感想・レビュー・書評

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  • 「麦藁帽子」
    少年から大人へと移っていく頃の、不器用な恋。
    どのようにふるまえばいいのか。
    どのように接すればいいのか。
    自分の心を持て余して、苦しむ。
    この青さをつきぬけて、人は大人になってゆくのだなぁ。

    「少女」
    どのような街でも、子供たちは生き生きと好奇心を発揮させ、のびのびと遊ぶ。
    そのような中、女子の間の友情に、どんどん焦点を絞って描いていく。
    その、心のやり取りや移り変わり、親和も闘争も妬みも悲しみもを含んだ複雑さは、実にリアルだった。
    友情なんて、そんなものだ。
    私には、そう思える。

    「コロンバ」
    アントニオが、本当の愛というものに気づくのには、まだもう少し時間がかかるのかもしれない。
    その時限りの感情ではなく、もっと寄り添える手放しがたいものを知るには、もう少し悲しみや孤独や枯渇感を味わう必要があるのかもしれない。
    自分の都合を越えた強さや確信・決心をもてる大人になることが、彼には必要なのかもしれない。
    そんな風に感じた。

  • ウンセットは非モテ系小説として読むと面白い。
    54/100

  • 図書館で見つけた、国内外の短編小説をテーマごとに3作品を掲載したポプラ社の百年文庫。
    青をテーマにした本書は、堀辰雄の「麦藁帽子」、ノルウェーの作家ウンセットの「少女」、イタリアのノーベル賞作家デレッダの「コロンバ」を収録。
    巻末の解説によると、百年文庫の名のとおり、本当に100年前の作品でした。
    青ということで、青春がテーマなのだろうけど、「麦藁帽子」と「少女」は、青春というよりも幼い青さを感じました。
    「コロンバ」(タイトルは登場人物の名前)は、100年前の制約の多い社会で、恋愛さえも当時の社会規範にとらわれてしまって自由に行動できない悲しい青春でした。

  • ウンセットの「少女」だけで星5つつけたいくらい。いろんな思春期の描き方があるけど、女の子と女の子の間に生まれるあのなんともいえないモヤモヤとした感じが掌編の中にこめられてる。

  • 時々ある、テーマタイトルとどういう繋がりがあるのかわからない巻。
    青春、ってことかなー?
    いずれも、懐かしの人との久しぶりの逢瀬を描いた作品。
    瑞々しい雰囲気と経年による違和感などが時代を越えて鑑賞に堪えうるのかもしれません。
    ウンセットとデレッダはノーベル文学賞受賞者。

    装画 / 安井 寿磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一
    底本 / 『燃ゆる頬・聖家族』(新潮文庫)、『世界短篇文学全集10 北欧・東欧文学』(集英社)、『ノーベル賞文学全集5』(主婦の友社)

  • 堀辰雄『麦藁帽子』
    ウンセット『少女』
    デレッダ『コロンバ』

  • 青春は、うまくいかないから青いのか。
    デレッダの自然描写に心奪われた。

  • 百年文庫20冊目は「青」

    収録は
    堀辰雄「麦藁帽子」
    ウンセット「少女」
    デレッダ「コロンバ」

    いずれも初めて読む短編。そういえば今年の宮崎アニメは「風立ちぬ」なんだとか。「風立ちぬ」は昔読んだ覚えがあったけど、遠い昔なので忘れてしまっていた。「風立ちぬ」が映画化と聞いたときに「そこきたか」と、えらい盲点を突かれたような気分になぜかなった。

    「麦藁帽子」を読みながら堀辰雄の独特なふわっとした感じを思い出していた。全てまぼろしのような淡さを感じる文体。夏にぴったりである。ウンセットとデレッダはどちらもノーベル文学賞受賞者らしい(しかもデレッダが1927年受賞、ウンセットが1928年受賞)。どちらも「青」という総題にふさわしい、甘酸っぱい短編である。

  • ・堀辰雄「麦藁帽子」
    夏の青さ。「この夏休みには、こんな休暇の宿題があったのだ。田舎へ行って一人の少女を見つけてくること。」というのがいい。
    「私」は年少のころ過ごした田舎へ行き、「お前」の兄たちと過ごす。
    少年の奥手な恋と、挫折と後悔にまみれながらの奇妙な明るさ!

    ・シグリ・ウンセット「少女」
    デンマーク、ノルウェー。はじめて読んだ。
    訳がこなれていないせいか、うまく入りこめず。
    少女の親友同士の友情と、そのあいだに横たわるぎこちなさ浅薄さ。
    子供の世界は大人のそれよりも厳格な「法」によって縛られている気がする。言葉のボキャブラリーのないせいか、行動が行動を呼び起こしすれちがいが大きくなる。シーフとエルナが小さい男の子の関心を競争するところに表れているような。
    大人なら中間を見つけだすか、ふたりのあいだの溜ったテンションをどっかほかに逃がす、その場を見つけられる。しかし子供の場合には力の捌け口がないために、ぴったりくっつくかそれとも離れるか、結局はその二択だ。とりわけ女の子の場合は…。

    ・グラツィア・デレッダ「コロンバ」
    イタリア・サルデーニャ島。
    上の「少女」と同様に、家柄の貧富の差があつかわれてる。
    アザールは教師になったばかりだが婚約した都会の女に逃げられ失意のなか、友人で金持ちのムラスと実家に戻る。
    アザールは近所の娘コロンバと互いに恋心を抱きあうが、「教師」と「羊飼い」では身分が違い、添い遂げることができない。
    夜の森のなかで、ふたりが不器用な交信をつづけるところなんかダントツの青さだな。
    都会の虚ろさ浅薄さと、コロンバのまっすぐな野性的な愛の対比がまぶしい。

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著者プロフィール

東京生まれ。第一高等学校時代、生涯親交の深かった神西清(ロシア文学者・小説家)と出会う。このころ、ツルゲーネフやハウプトマンの小説や戯曲、ショーペンハウアー、ニーチェなどの哲学書に接する。1923年、19歳のころに荻原朔太郎『青猫』を耽読し、大きな影響を受ける。同時期に室生犀星を知り、犀星の紹介で師・芥川龍之介と出会う。以後、軽井沢にいた芥川を訪ね、芥川の死後も度々軽井沢へ赴く。
1925年、東京帝国大学へ入学。田端にいた萩原朔太郎を訪問。翌年に中野重治、窪川鶴次郎らと雑誌『驢馬』を創刊。同誌に堀はアポリネールやコクトーの詩を訳して掲載し、自作の小品を発表。1927年に芥川が自殺し、翌年には自身も肋膜炎を患い、生死の境をさまよう。1930年、最初の作品集『不器用な天使』を改造社より刊行。同年「聖家族」を「改造」に発表。その後は病を患い入院と静養をくり返しながらも、「美しい村」「風立ちぬ」「菜穂子」と数々の名作をうみだす。その間、詩人・立原道造との出会い、また加藤多恵との結婚があった。1940年、前年に死去した立原が戯れに編んだ『堀辰雄詩集』を山本書店よりそのまま刊行し、墓前に捧げる。1953年、春先より喀血が続き、5月28日逝去。

「2022年 『木の十字架』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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