夕 (百年文庫 81)

  • ポプラ社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121696

作品紹介・あらすじ

「ではね、三人で分けっこしましょう」。育ち盛りの幼子を抱え、夫不在の家を必死に守ってきた桂子。母と妻、二つの女心を告白した鷹野つぎの『悲しき配分』。「寒菊や咲くべき場所に今年また」-根を下ろした植物のように一つの家を愛でて暮らす「わたし」の生活哲学(中里恒子『家の中』)。東京で気侭に学問をする栄一、地元で代用教員を務める辰男…瀬戸内海沿岸の旧家に生まれた六人兄弟は、「家」を起点にそれぞれの将来を思い描く(正宗白鳥『入江のほとり』)。積み重なる暮らしの中に人生を問う三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 2012.10.13読了。

    鷹野つぎ 面白い!このシリーズ読みやすい。

  • 秀作揃い。鷹野つぎは母親の疎外感という現代的なテーマをこれほど昔に扱っていたのかと驚く。中里恒子はところどころに顔を出す警句にドキリとさせられるエッセイ風作品。正宗白鳥も子ども部屋おじさんの先祖的な人物と周囲との葛藤を描いて、現代に通じる。特に結論じみた方向も与えておらず突き放した中にもどこか愛を感じる描き方に共感した。83/100

  • 「悲しき配分」
    単身赴任の父親がいない間、子供たちと密接に生活をしてきた。
    時には煩わしく思うことがあっても、父親が不在の分、母親が判断をしてしっかりと子どもを育てようという、背筋を伸ばした心意気が伝わってきた。
    そして、それは自分の意のままに子供と関われる時間でもあった。
    しかし、父親が帰ってきて、子供たちの関心がそちらに移行し、決定権も父親に比重がかかるようになると、まるで子供をとられてしまい、自分は蚊帳の外のような、寂しさに苦しむ。
    その気持ちは、よくわかる気がする。
    素直に話せればいいのに。
    自分の小ささを隠さず、夫と子供たちに、寂しいといえればいいのに。
    私だったら、泣いて言う。
    なんか寂しい、なんだか取られてしまったような、独りになったような気がする、と。
    そう言って、自分の気持ちを伝えて、多少気を使ってもらえばいいのに(笑)

    「家の中」
    自分の生活を大切に、自分と向き合いながら生きる筆者の静かでゆるぎない姿が魅力的だった。
    しっかりと自分を持っている。
    私はぶれぶれなので、羨ましく思う。
    自分の人生の思い出がつまった家で、その人生と今の暮らしを愛することができるということは、幸せなことだ、と思う。

    「入江のほとり」
    生きるための具体的な能力も見いだせず、不確かな独学の英文の世界に閉じこもっている辰男の気持ちは、わかる気がする。
    偏屈で強い自分の世界を持っている。
    他者との関わりを望むのではなく、自分の満足を求めているのだ。
    栄一によって、現実の自分の不甲斐なさを突き付けられ、失望し恥のようなものを感じる辰男が悲しかった。
    気持ちはとてもよくわかる。
    現実を生きていくのは、なかなかしんどくて辛いね。

  • 中里恒子『家の中』はリンネル、&Premium、Ku:nel、つるとはな、気持ちの良い暮らし、丁寧な暮らし。そんな感じ。

  • 鷹野つぎ『悲しき配分』
    中里恒子『家の中』
    正宗白鳥『入江のほとり』

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