惚 (百年文庫 82)

  • ポプラ社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121702

作品紹介・あらすじ

柳橋芸者に入れあげて、一人合点な恋に一喜一憂する書生・貞之進。若い男の自意識と、花柳界の恋のからくりを、明治文壇きっての批評家が描く斎藤緑雨『油地獄』。香気を含んだ春の雨が、幾重の情念をそっと揺り起こす。放埒で繊細な愛と性(田村俊子『春の晩』)。白い指先、かぐわしい香り、都会育ちの娘は噂にたがわぬ美しさだった。いずれ叶わぬ山男の恋心を、春の情趣豊かに綴る尾崎紅葉『恋山賎』。甘く切なく、ほろ苦い。恋に焦がれる物語三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 上京し法律を学ぶ真面目な学生が故郷の懇親会で出逢った芸妓。手水場で手巾を出そうとした所でその芸妓に半巾を貸して貰って恋に落ち、寝ても覚めても方々に面影がちらつき遂に意を決して柳橋に通う斎藤緑雨『油地獄』、プラトニックな同性愛的好意を官能的に描く田村俊子『春の晩』、田舎の山賤が東京から来た怪我をした美しい娘を運ぶ道すがらの恋心の尾崎紅葉『恋山賤』の3篇を収録。『油地獄』は芸妓に近づきになろうと一喜一憂する青年がかなりコミカルに描かれ、明治の小説でコミカルはこう書くのかと妙な感心をして読みながら何度も笑った。

  • 斎藤緑雨『油地獄』『浮雲』とかもそうだが明治の小説はこういう極端な非モテ勘違い主人公が悲惨な目に遭うパターンが多い。
    田村俊子『春の晩』こういう高慢な女の内面をただそのまま小説にしたような話のどこが面白いのかさっぱりわからない。
    96/100

  • 「油地獄」
    漢字がかたいので、書き出しからしばらくは読みにくかったが、恋に落ちたあたりから面白くなってきた。
    小歌にかけてもらった言葉を、繰り返し繰り替えし思い出して味わうあたりも、微笑ましかった。
    不器用で話ができない貞之進との再会のお座敷は、空気は重たくて、読んでいる私まで息がつまりそうだった。
    不器用な初恋、しかもプロを相手の初恋はうまくいくはずがない、と、ヒヤヒヤしながら読んだ。
    初恋は囚われやすく、うまくいかず、一番苦しい。
    油地獄。
    身も心も灼熱に焦げて狂う、そんな感じだ。

    「春の晩」
    浮気な恋の香りが漂う作品だった。
    特に京子は発情のフェロモンを出していて、原さんはもだもだと、残念でした、と思った(笑)
    京子に「美しい顔ね」と繰り返す幾重は、私には若さや美しさを吸い取る妖怪のように、どこか気持ち悪く感じられた。


    「恋山賤」
    美しいお嬢さんに心が惑った万蔵の様子が面白い。
    お嬢さん単独での山遊びだったら、面白いとは言えない結果になっていただろうけれど。
    文章も美しかった。

  • 斎藤緑雨『油地獄』
    田村俊子『春の晩』
    尾崎紅葉『恋山賎』

  • 斎藤緑雨「油地獄」(1891)。長野から上京し、方角を志す学生が、ふとしたきっかけで芸妓に入れ込んでいく様を描いている。「縁が不思議のものなら、ほれるは一層不思議だ」頭でっかちで、しかし、その方面はとんと弱い若者の心のうちを事細かに描写している。
    田村俊子「春の晩」(1914)。「幾重は繁雄の手を自分の方にひいて、男の方へ顔を振り仰向けた。」現代にはないつつましやかな描写が目立つ。その実、小説の内容は、思わぬ方面へ向かう。
    尾崎紅葉「恋山賤」(1889)。まるで英語を読んでいるような感覚。字面をおってはみたが、内容が頭に入ってこない文章だった。
    全3編を通して、日本語から失われつつある表現、仮名遣いが散見されて、このような言葉を発掘する楽しみを感じながら読めました。

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