村 (百年文庫 83)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (149ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121719

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  • 杉浦明平はどこかで一度読んだ記憶があるのだが、いつの世も少しでも知恵が回って欲深い人間が機先を制して富を蓄えていく風景がリアルに描かれていて興味深い。
    葛西善蔵は私小説のイメージが強いが、本作では欲と噂と迷信に取り巻かれる田舎の風景を戯画的に描く。
    黒島のプロレタリア文学風の作品も含め、3作とも田舎を幾分ウエメセに面白く描いている。

  • 「電報」
    貧しく学校に行けなかったために自分が苦境から抜け出せなかった。その思いを子供にさせたくないから、息子に学問を、という親の気持ちが、痛いほどわかる。
    それでも、村社会における階級の圧力に、心がふさぎ、迷い苦しみ、屈してしまう父親の姿が悲しい。
    村の嫌な面が上手く描かれている。
    「豚群」
    最初は何の話かよくわからなかったけれど、貧しい農家の自衛策だったのだ、と感心した。
    賃金も与えない地主は横暴で、金持ちとしての品位が無い。

    「馬糞石」
    動物の結石が高価なものであるということを、この作品で知った。
    本家は確かにずるい。
    知識がなく弱いものを最後まで欺こうとしたのだろう。
    双方の欲が戦って、三造が勝ったわけだけれども、この後の顛末が書かれていないところが面白い。
    この後の、いくつものパターンが想像できて、楽しい。

    「泥芝居」
    狭い田舎で、よくこれほど堂々と悪いことができるなあ、と感心した。
    正三という名前なのに、ちっとも正しさの気配を見せないこともおかしかった。
    その正三を上回る汚さ・狡さ・厚顔無恥さを備え持った次郎には、腹立たしい等の否定的な感情よりも驚き感嘆する気持ちが湧いてきた。
    これぞ悪人たち。
    これぞ強欲。
    そんな次郎から金を引き出した和尚。
    しかし、なんというか、納得してしまう。
    まあ、和尚ってそんなもんだ、と私は思っている。

  • 黒島伝治『電報』『豚群』
    葛西善蔵『馬糞石』
    杉浦明平『泥芝居』

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著者プロフィール

一八九八年、香川県小豆郡苗羽村の自作農の家庭に長男として生まれる。地元の苗羽小学校、内海実業補習学校を卒業後、醬油会社に醸造工として入るが一年ほどで辞める。その頃から文学修行をはじめ、黒島通夫というペンネームで雑誌に投稿。一九歳の時に東京に出て、建物会社や養鶏雑誌社で働きながら小説を書き始めた。二一歳で早稲田大学高等予科文学科に入学。第二種学生だったので徴兵猶予が認められず、召集されてシベリアへ出兵。一九二二年、病を得てウラジオストックから小豆島へ帰郷する。一九二五年、二七歳のときに二度目の上京。同年、雑誌「潮流」七月号に掲載された短編小説「電報」が好評を得て、プロレタリア文学者としての道を歩み始める。故郷である小豆島での
生活を描いた「農民もの」、そしてシベリアでの戦争体験をもとにした「シベリアもの」と呼ばれる数多くの作品を発表。代表作に「渦巻ける烏の群」など。生前に刊行された単行本は『豚群』、『橇』、『氷河』、『パルチザン・ウォルコフ』、『秋の洪水』、『雪のシベリア』、『浮動する地価』。中国における日本軍の済南事件を取材し、一九三〇年に発表した長編小説『武装せる市街』はただちに発禁となった。
一九三三年、三五歳の時に喀血し、病気療養のため家族とともに帰郷。小豆島で執筆と読書をつづけ、一九四三年、享年四四歳で逝去。

「2013年 『瀬戸内海のスケッチ 黒島伝治作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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