泪 (百年文庫 92)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121801

感想・レビュー・書評

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  • 家族や故人への慈しみに溢れた三編。

    “ただお互いに、惹き合っていれば、それでいいと思っていた”

    この一節が印象的でとても好き。

    家族だからこそ距離が必要。

  • 深沢七郎の「おくま嘘歌」は良かった。
    嘘とは言うが、相手を慮ってのことで思いやりでもある。
    それを深沢七郎が掬いあげる。

  • 三篇それぞれに趣の違う感慨が胸におこる。「おくま」は昔唄のよう、「洗骨」は絵画のよう、そして「連笑」は独り寝の夜に眠れず紡ぎ出された思念のよう。思う者に真っ直ぐに語れない愛情のいとしさにため息が出る。

  • 色川武大「連笑」 弟との心のやり取り、影響し、影響され、互いに自己を形成していく途上にある者としての関係が描かれる。「絆」なんていう安っぽい言葉が持て囃される時代だからこそ読まれてほしい。
    深沢七郎「おくま嘘歌」 庶民列伝は既読だが、この話は記憶から抜け落ちていた。
    島尾ミホ「洗骨」 このような風習があることを初めて知ったが、南国の強い日差しや生命力と死のイメージの対比が素晴らしい。

  • 「おくま嘘歌」
    なんて優しい嘘たちなんだろう。
    おくまのあたたかい心が愛おしい。
    短い小説だけれど、心が震える。

    「洗骨」
    先祖を偲ぶ、ということは、こういうことだ。
    盆踊りの本質は、こういうことなんだ。
    大切な人との思い出は、その死後、より一層貴重になる。
    骨を洗うことによって、故人とのつながりを、体と心で感じる。
    すばらしい文化だと思う。

    「連笑」
    回想と現実とが交互に配され、読み進むにつれ、この兄弟の人生の深みに近づいてゆく。
    集団になじめず、自分だけの世界を築いていた兄の、弟とその世界を共有する喜びと恐ろしさが、じわじわと広がっていく。
    大人になって、お互いに多くを知りすぎてしまう。
    影響しあうことを恐れ、遠慮ができ、気を遣わずにはいられない。
    その気持ち悪さが伝わってくる。
    放埓に生きているが、あっけらかんとはしていられない。
    相手の苦しさを覗くことは、自分が蓋をしている部分を覗くことと同じことだ。
    それほど深く関わりあった兄弟は、お互いが大切である反面、時として苦しみの原因になってしまう。
    胸がしくしくするラストだった。

  • 深沢七郎『おくま嘘歌』
    島尾ミホ『洗骨』
    色川武大『連笑』

  • 兄弟関係、親子関係。ちょっと考えさせられました。

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著者プロフィール

大正三年(一九一四)、山梨県に生まれる。旧制日川中学校を卒業。中学生のころからギターに熱中、のちにリサイタルをしばしば開いた。昭和三十一年、「楢山節考」で第一回中央公論新人賞を受賞。『中央公論』三十五年十二月号に発表した「風流夢譚」により翌年二月、事件が起こり、以後、放浪生活に入った。四十年、埼玉県にラブミー農場を、四十六年、東京下町に今川焼屋を、五十一年には団子屋を開業して話題となる。五十六年『みちのくの人形たち』により谷崎潤一郎賞を受賞。他に『笛吹川』『甲州子守唄』『庶民烈伝』など著書多数。六十二年(一九八七)八月没。

「2018年 『書かなければよかったのに日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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