(097)惜 (百年文庫 97)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (137ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591121856

作品紹介・あらすじ

大雪の積もった朝、写生旅行に出た洋画家・島木は、ただならぬ画境の深まりを見せる旧友のことが頭から離れない。遺作に刻まれた芸術家の魂(宇野浩二『枯木のある風景』)。月影の夜、病んだ友人は横笛を鳴らす。横浜外国人居留地で「私」が看取ったインド人との思い出(松永延造『ラ氏の笛』)。五年前、交通事故で世を去った三男の、あどけない顔が今も目に浮かぶ-。十九年の生涯に手向けられた父の心(洲之内徹『赤まんま忌』)。敬愛と慈しみにみちた、それぞれの惜別。

感想・レビュー・書評

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  • 死者を悼む3作。
    中でも洲之内徹の『赤まんま忌』は愛息の死を扱っていて胸が痛む。思い出すのも苦しい記憶と向き合い紡がれた文章。

  • 「枯木のある風景」
    芸術家は命を削り、魂を込める。
    まさに、そのような生き様を描いた作品だと感じた。
    刺激しあい、理解しあう仲間の存在は、彼らにとってかけがえのないものだろう。
    古泉に、「お前は芭蕉風でいけ」とそれとなく示唆されているように、その言葉が島木から離れない。
    友を亡くしても、その存在の大きさは変わらない。
    そういう関係だって、あるんだ。
    小出楢重と鍋井克之を描いた作品らしい。

    「ラ氏の笛」
    病に侵されたラオチャンドの心が悲しい。
    自分の口にした笛を吹けるか否かで、人の心を試してしまう。
    受け入れ寄り添ってほしい心と、それは叶わぬという孤独と苦しさが、まざまざと伝わってくる。
    人が死ぬということは、孤独で悲しくて、当たり前のことなのだ。
    悲しみと悲しみのはざまに、幸福を見つけ出し、心を慰めようとする思いに、生きる者の切なさを感じた。

    「赤まんま忌」
    「まだお弁当も食べていないのよ」という母親の言葉が胸に迫った。
    子どもを亡くしてしまった苦しさと、受け止めきれない心を、ひしひしと感じる。
    これは実話だろうな、と、読んでいて感じた。
    それほど、心が入った作品だった。

  • 宇野浩二『枯木のある風景』
    松永延造『ラ氏の笛』
    洲之内徹『赤まんま忌』

  • 上林暁が受け取る宇野浩二の「枯れ木のある風景」の顛末を読んでいたので、関心を持つ。洲之内徹の「赤まんま忌」は読んでいたはずなのに覚えていない。

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