メロディ・フェア (文芸)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 181
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591122334

作品紹介・あらすじ

大学を卒業した私は、田舎に戻り「ひとをきれいにする仕事」を選んだ-。注目の著者が、まっすぐに生きる女の子を描く、確かな"しあわせ"の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 大学を出て故郷に戻り、化粧品会社のカウンターで働き始める結乃。デパートではなく、郊外のショッピングモールに配属となる。希望とは異なる勤務先に残念な気持ちを隠せない。
    最初はベテランの社員のように上手くいかずに焦る。
    それでもお客さんが本当に求めているものを知ろうとじっくり話を聞き、商品を紹介して手に取ってもらう。
    お客さん自身のイメージとのギャップを埋めて、その人によりぴったりとくる、その人が本当に求めているものをさりげなく選び出す。


    私が子供のころ、季節が変わるたびに化粧品会社のキャンペーンに注目が集まった。
    TVで新作のCMが流れ、街の化粧品店にはインパクトのある美しいポスターが張られ、広告には商品とお買い上げに応じた販促品が載っていた。

    子ども心にうきうきして、
    これいいな、あれもいいな、
    これだけ買ったら、このおまけが貰えるなどとわくわくしていた。
    あれは椿のマークの会社だったかしら?

    今では以前ほど、「キラキラの憧れの世界」を化粧品に期待することも少なくなったけれど、
    デパートのカウンターで口紅やら香水をつけてもらう時、
    いつもよりちょっぴり口角があがり、楽しくなって
    笑顔になってしまう。

    「メロディ・フェア」というタイトルも懐かしく、
    小さな頃の思い出も一緒によみがえったのでした。

  • 夕方5時20分、ショッピングモールに『メロディ・フェア』の旋律が流れるといつも、
    表情も年齢もわからないほど濃い能面メイクをして化粧品フロアを闊歩する女性。

    今年読んだ本の中では、『ともしびマーケット』でネスカフェの大瓶を抱っこして
    スーパーをうろつく「ネスカフェおばさん」に勝るとも劣らない衝撃の人物で、
    私、気になります!

    そんな「能面おねえさん」を気にしつつ、
    化粧品カウンターでビューティーパートナーとして
    失敗を繰り返し、伸びない売上に悩みながら、日々成長していく結乃の物語。

    真っ赤な口紅の似合う女性に父を奪われたトラウマが
    結乃には、「無人島に何かひとつ持っていくなら、口紅!」と迷わず口にするほどの
    メイクへの強い執着となって表れ、
    妹の珠美には、薄化粧さえ毛嫌いするほどの拘りとなって表れているのが切ない。

    いつも引用に残しておきたい文章が多すぎて、
    栞をいくら用意しても足りない宮下奈都さん作品にしては、
    胸に刺さる言葉がかなり少なめだったのは
    私がいつまでたってもメイク下手だからなのかな?と思いつつも

    今夜が峠という夫に会う前に、少しでも明るい顔にしてほしいと結乃に懇願する浜崎さんも
    思春期になった途端に「かわいさ至上主義」に取って代わった女子の評価基準に愕然として
    能面メイクの鎧をつけて「世界征服」をもくろむミズキも
    きれいになりたい誰かのために、
    そのひとの良さをいちばん素直に引き出せるメイクをしてあげたい、と決意する結乃も
    みんなほろっとするくらいいじらしくて、

    あんまりかまってもらえなくて可哀そうな私の肌も、
    今日はちょっと丁寧にお手入れして、よろこばせてあげなくちゃ、と思う1冊です。

    • hetarebooksさん
      お化粧をめぐる女の人たちのお話なのですね。ふむふむ…私、気になります!(笑)

      母の真似をして見よう見まねで紅をひくほど(当然後で怒られ...
      お化粧をめぐる女の人たちのお話なのですね。ふむふむ…私、気になります!(笑)

      母の真似をして見よう見まねで紅をひくほど(当然後で怒られました…笑)憧れた幼い日の私が憤慨しそうなほど、大人になってからは手抜きメイク万歳!の私です。そんな私にお化粧カリスマのお友達がドゥ・ラメールというお高いクリームの効果を天使のような悪魔の笑顔でささやいてくるのですが

      最近ニベアがちょっと工夫しただけでこのラメールのクリームに変身するという記事を読んで…私、気になります!
      http://matome.naver.jp/odai/2134010206275773201
      どうでしょう、まろんさんも…
      と、レビューへのコメントらしからぬコメント失礼いたしました(><)
      2012/09/13
    • まろんさん
      天使のような悪魔の笑顔、のフレーズにケタケタ笑いながら、
      早速教えていただいたサイトを覗いてみました!

      ドゥ・ラメールという高級クリームが...
      天使のような悪魔の笑顔、のフレーズにケタケタ笑いながら、
      早速教えていただいたサイトを覗いてみました!

      ドゥ・ラメールという高級クリームがあることすら知らなかった私ですが
      昔懐かしいニベア+材料費700円くらいで、「ドゥ・ラメールそっくりさん」が作れるとは♪
      放っておかれて潤いに飢えている私のお肌にはぴったりかも!
      調合するというのも、なんだか「いい魔女」っぽくて楽しそうですね。
      教えていただいてありがとうございます(*'-')フフ♪
      2012/09/14
  • この人の本は読み終わって、いいのだけどちょっとしっくりこない部分が残ったりする。
    でもなんか、次を読もうって手が出るんだよね。
    同じような印象をもった作家さん何人かいるのだけど、こうして次に繋がってる宮下さんは実はわりと好きなんだろう。

    地元に戻って郊外のショッピングセンターの化粧品のカウンターでビューティーパートナーとして働く小宮山結乃。
    凄腕の職場の先輩、馬場さん。
    鉄仮面のような厚化粧で世界征服を目指す幼馴染のミズキ。
    化粧も結乃の仕事も否定し続ける妹の珠美。
    様々な女性が登場しますが、眉毛ぼさぼさのから揚げおばさんから初恋の人の最期を明るい笑顔で送りたいと口紅を買う女性へと変化を遂げた浜崎さんが特に素敵です。

    普通の女の子を普通に、でもとても丁寧に描いている印象だけど、あともう一歩掘り下げてほしかったかなぁ。
    馬場さんにしろミズキにしろ白田さんにしろ、結乃にしても。
    でもこのちょっと足りない感じが宮下さんクオリティともいえる。

    お化粧がテーマというのは、女性ならば共感しやすいし、自分の登場人物の一人として楽しめるのがいいですね。
    いつも同じメイクばかりなので、丁寧に楽しくメイクして丁寧に楽しく落とそう。

  • 「無人島に何かひとつ好きなものを持っていっていいと言われたら、迷わず口紅を選ぶだろう。
    誰も見るひとがいなくても、聞こえてくるのが果てしなく繰り返される波の音だけだとしても、ほんとうに気に入っている口紅が一本あれば。毎朝それを引くことで、生きる気力を奮い立たせることができるような気がする」
    という、心惹かれる文章から始まるこの小説。
    ビューティパートナーとして働く女性が主人公です。

    学生のころ、化粧品売り場のとなりにある雑貨フロアでアルバイトをしていたことがあって、モールの独特な雰囲気を思い出しました。
    要は、常に賑わっているわけじゃない、キラキラしたところというよりは、日常が舞台になっているようなところ。

    静かな空気感でいながら、春にぴったりな、ちょっと心がわくわくするような1冊で、読むと丁寧にお化粧をしたくなるし、新しい化粧品が欲しくなりました。
    素直じゃない幼馴染の女の子や、なかなかわかりあえない妹の存在も、それから凄腕?マネージャーも、淡々とした日常の中にスパイスを与えてくれてよかったです。

    口紅は確かに女性の印象を変える、最強のアイテムかもしれませんね。

  • このひとの文章だいすき。
    疲れたときに、ちょっとだけ頑張ろうって思える。
    後ろに向きかけてた気持ちを、さりげなく前に向けてくれるのです。

  • 幼い頃からメイクをするのが好きな主人公が、希望していた、デパートの化粧品カウンターではなく、ショッピングモールの中の化粧品コーナーに就職することになり、ショックを受けながらも、上司や先輩の腕を見ながら自分の腕を磨いていく物語だった。

    本当はこのお客さんならこの色が似合うのに、お客さんが似合わない色を選んだり、スタッフが
    お客さんに合う色を選んだら文句を言われたりなど、化粧品売り場のスタッフの本音が赤裸々に書いてあって、とても勉強になった。

  • どんなお仕事をしてても、人に言われた言葉に一喜一憂したり、それを一人の時間にあれこれと考えてしまったり、そういうものなんだなぁ。

  • んー…なんだろなー。
    うーん。
    メイクでそんなになるか?(人間関係が)って思ってしまった。

  • 是非とも女性に読んでほしい作品。
    メイクは苦手な人も多いと思いますが(私も含め)、見た目だけでなく、中身も変われる魔法のようなものだと思います。

    私も主人公と同じく、メイクをするのも、落とすのも好きです。その時だけは、女子に産まれて良かったと思えます。とにかくメイクやコスメは楽しい、かわいい、夢がある!

  • 女子のお仕事小説。
    ショッピングモールの化粧品カウンターに勤務して1カ月の新人「ビューティーパートナー」(美容部員)、結乃(よしの)。
    カウンターは6期先輩の“凄腕”美容部員の馬場さんだけなので、オジちゃんたちは登場せず、華やかな雰囲気だ。
    口紅が好きで美容部員になったが…

    妹は結乃とは正反対で「外見より中身」を主張し、メイクもしないばかりか、口紅に対して強い拒否反応があるらしい。
    加えて、お面のような厚化粧で素顔を隠したがる女性や、長々と無駄話をして居座るお客、会員証を断固断るマダム…
    売り上げは上がらないし、自分は少し人と違うのではないかという違和感も感じる。

    しかし…
    人と関わることで、少しずついろいろな事がほぐれて行く。

    私は、あの、美容カウンターの前を通るのが苦手なんですが…(笑)
    メイクは女性にとって重要なテーマ。
    浜崎さんのエピソードが一番良かったです。

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著者プロフィール

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年、第3子妊娠中に書いた初めての小説『静かな雨』が、文學界新人賞佳作に入選。07年、長編小説『スコーレNo.4』がロングセラーに。13年4月から1年間、北海道トムラウシに家族で移住し、その体験を『神さまたちの遊ぶ庭』に綴る。16年、『羊と鋼の森』が本屋大賞を受賞。ほかに『太陽のパスタ、豆のスープ』『誰かが足りない』『つぼみ』など。

「2018年 『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。   』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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