([お]5-2)喋々喃々 (ポプラ文庫)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 3343
感想 : 370
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124192

作品紹介・あらすじ

ちょうちょうなんなん(喋々喃々)=男女が楽しげに小声で語り合うさま。東京・谷中でアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる-少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 谷中でアンティークの着物ショップを営む栞が、客として訪れる春一郎と次第にひかれあっていく様子を、栞の心の葛藤や、魅力ある近所の人たちとの交流なども交えながら描いたストーリー。

    春一郎からの電話を心待ちにしたり、会えるとふわっと心が暖まったりする栞の様子は、恋愛初期のドキドキ感を思い出させる。
    しかし、春一郎には妻子がいるため、意を決して、もう会わないと伝えた栞。切なく苦しい思いでいた栞に、地元のおじさん、イッセイさんがかけた言葉になんだか救われた気持ちになった。

    "蝶々喃々"とは、男女が楽しげに小声で語り合うさまを指す言葉だそうで、読み終えてみて、タイトルがふに落ちた気がする。

    小川糸さんの作品、やっぱり好きだぁ。
    そして、作品の中に出てくるエリアやお店が魅力的で、そのエリアを歩いてみたくなった。

  • この話を読んでいると「孤独」「不倫」「別れ」がちょいちょい前面に出てきますが、不思議にドロドロとした感じがなかったです。それに相反する「純愛」「家族」「出会い」がバランス良く話の中に散りばめてあるからなのか、逆に何故か落ち着いた雰囲気を感じました。結構なことが起こっているけれど、読み進めるにつれ気持ちが落ち着いていくっていう不思議〜。
    お散歩するシーンが良く出てきて、読んでいて楽しかった。結末はやっぱりこの展開かー!でしたが、基本ハッピーエンド好きなので良しとします!(目線よ)

  • あらすじの内容とのギャップを感じた。
    許されない恋なのに、なぜか純愛の話を読んでいるみたいに感じてしまう。
    栞の丁寧な暮らしぶりや、着物を大事に扱ったりする心が、不純に感じさせないのかもしれない。

  • 小川糸作品は、どんなに長くても短くても
    読むのに普通の3倍かかる。
    ゆっくりと丁寧に読まないと勿体ない。
    とくにこの作品はいっぺん一遍
    大事に寝る前に読んで楽しんだ。
    ゆっくり酸素を吸い込むような
    澄んだ時間を楽しめる作品。

  • 着物にまつわるあれこれ
    丁寧に作られた美味しいごはん
    季節の行事を大切にする暮らし
    ご近所さんとの昔ながらのお付き合い
    静かで 丁寧で ほっこりした暮らし
    女の人の好きなものを集めた舞台設定は 素敵で憧れる

    栞の家族や元カレとの関係に目を向けると
    嫌いじゃないけど 疎遠になった父親
    心の距離が遠い感じの母親との関係
    仲が良さそうなのに 複雑な関係の妹たち
    切なくツライ別れになったけど 忘れられない昔の恋人
    うーん ほんわかしたストーリーには似つかわしくないほど
    けっこうヘビーな近しいひとたち

    ご近所の方々とはうまく付き合ってるんだけど
    もっと近い人とは なんだかしっくりうまくやれない
    自分の思いを心に秘めて相手に伝えないせいかなぁ
    一歩引いてるから 距離のある人とは それが幸いして
    うまく行くけど もっと近しいひとにとっては
    本音を言わない 何考えてるのかわかんないひと
    踏み込めないひと と感じられるような。

    そんな中で出会った春一郎さん
    わたしはいまいちこの人の良さがわからないんだけど
    この踏み込んでこない この曖昧さが 栞にとっては
    心地いいのかなぁ
    踏み込んだ時に いったんは壊れた関係
    結局は元に戻るんだけど 春一郎さんの指から指輪が消えた?って思ったのは わたしだけなのだろうか?
    だから年越しも一緒にいられたんじゃないの?
    でもな この2人はそういうハッピーエンドじゃなく
    つかず離れずの今のままで行く方が似合うと思うのは
    わたしだけだろうか。

    イッセイさん
    カッコいいなぁ
    こういうひと もういないんだろうなぁ

    小川糸さん
    名前は知ってたけど 初めて読んだ。
    食堂かたつむりが有名だけど なんとなく手を出さないできた
    今回 坂口さんに借りたから 読んだけど じゃなかったら
    きっとまだまだ読んでなかったなぁ
    でも読んでよかった。
    こういう空気感好き。
    食堂かたつむりも読んで見ようと思った。


    それにしても驚いたのは 他の方のプレビュー
    不倫アレルギーここまでとは。
    小説でもダメなの? 厳しいなぁ。
    じゃぁ 殺人なんて もっとダメじゃん 笑


  • 丁寧な暮らしをする主人公が出てくると、教訓めいたことや感心できるとこをつい探そうとしてしまうが、この本はちょっと違う。

    栞から見た最高に美化されたはずの春一郎に、時々”?“と思ってしまうところがあった。
    例えば、家で熱燗出してって控えめにお願いするとか、何日も食べてないのにカレーうどん出してくるとか。そういう細かくて申し訳ないんだけど男の人がやりそうなとこが結構ある。何年かずるずる一緒にいると絶対嫌になると思うよ。

    あとイッセイの助言も、必ずしも的を当てないとこが面白い。教訓じゃなくて、あくまで日常を描いてる。

    栞は本当は強い人だと思う。筆者がほのめかすラストとは違う10年後を思い描いたよ。

  • タイトルの喋喋喃喃って、一体どういう意味だろう?って調べるところから始まって、読み進めていくうちに、納得。

    行ったこともない場所だけど、書かれている風景や人々を想像しながら、まるで自分がその町にいる様な感覚になります。

    移ろいゆく季節の情景がとても綺麗でした。
    季節ごとのきものの種類、小説の中に出てくる食べ物や、植物や天気、暮らし、その町特有の行事や場所などが季節ごとに、とても丁寧に魅力的に綴られています。

    主人公の恋愛もこの2人どうなるんだろうってドキドキしながら、ときめきながら一気に読みました。

  • 不倫ものが大嫌いで、この作者の本を読むのをやめてしまった。着物の説明とか、元カレのエピソードとか、本の装丁とか、好きだけど、ダメだった。

  • 最初から最後までずーっと、せつなかった。

    現実と幻想が あや織りになったようなストーリィ。
    ここは、きっと主人公の女性の願望…
    きっと、ここまでがものがたりの現実…
    そう思いながら、読了してしまった。

    文章には書かれていない、
    行間から滲む 寂しさ、
    そして罪悪感。

    吸いこまれるように美容室に入って
    切れるだけ髪を切り
    毎日をわざと忙しく過ごし
    綺麗な夕暮れにあっても
    一緒に見たいと思わないように、する。
    少しずつ、好きな人とのことを
    なかったことにして、
    ぜんぶ、夢だったと自分に思い込ませる…。

    そんな恋は、しない方が幸せかもしれない。
    なのに 自分ではどうすることもできず
    魅かれてしまう、そんな切なさ。

    最後の初春は、彼女の見た夢だと思う…。
    物語の現実はきっと「お別れ」で
    終わっている。

  • 小川糸さんのエッセイをよく読んでいます。文庫サイズでこんなに厚い本を読むのはひさしぶり。
    季節の流れと、町の描写が細やかで、しっとりはんなり気分で読みました。

    作中に出てくるお店が実際にあるので、聖地巡礼も叶います。もう少し歳を重ねたら、湯島や日暮里界隈をしっぽり歩きたいなぁ。

    仕事に打ち込む姿、家族との距離の取り方、ご近所さんが気にかけてくれる様子、どれをとっても主人公の人の良さが伝わります。春一郎さんが「栞」と呼ぶ度に、こちらも愛おしい気持ちになります。

    2人の関係は世間では良しとされないものですが、こんなにも微笑ましいなんて。蝶々喃々とはとても良いタイトルです。

    イッセイさんとの粋なデートも素敵です。最後にイメルダ夫人から押し付けられた靴を処分するところは思わず笑っちゃいました。

    栞ちゃん、幸せになってね。

    ちなみにこの作品のことは、おもたせしました。という漫画で知りました。

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著者プロフィール

作家。デビュー作『食堂かたつむり』が、大ベストセラーとなる。その他に、『喋々喃々』『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』『ツバキ文具店』『キラキラ共和国』『ミ・ト・ン』『ライオンのおやつ』『とわの庭』など著書多数。

「2023年 『昨日のパスタ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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