([お]5-2)喋々喃々 (ポプラ文庫)

著者 :
  • ポプラ社
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レビュー : 285
  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124192

作品紹介・あらすじ

ちょうちょうなんなん(喋々喃々)=男女が楽しげに小声で語り合うさま。東京・谷中でアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる-少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 最初から最後までずーっと、せつなかった。

    現実と幻想が あや織りになったようなストーリィ。
    ここは、きっと主人公の女性の願望…
    きっと、ここまでがものがたりの現実…
    そう思いながら、読了してしまった。

    文章には書かれていない、
    行間から滲む 寂しさ、
    そして罪悪感。

    吸いこまれるように美容室に入って
    切れるだけ髪を切り
    毎日をわざと忙しく過ごし
    綺麗な夕暮れにあっても
    一緒に見たいと思わないように、する。
    少しずつ、好きな人とのことを
    なかったことにして、
    ぜんぶ、夢だったと自分に思い込ませる…。

    そんな恋は、しない方が幸せかもしれない。
    なのに 自分ではどうすることもできず
    魅かれてしまう、そんな切なさ。

    最後の初春は、彼女の見た夢だと思う…。
    物語の現実はきっと「お別れ」で
    終わっている。

  • 小川糸さんの「暮らし」の描写がとても素敵だなーと改めて思う。
    谷中の下町風情に溢れる景色の描写もとても素敵。
    気持ちの余裕がない時にこういうしっかり丁寧に生活している本が読みたくなる。でもどこか遠い所のお話のようにも感じてしまう距離感が心地よい。
    どうしようもなく惹かれてしまう気持ちの描写がなんともせつなかった。どことなく浮き世離れしている道ならぬ恋の描き方だけれども、だからこそ余計にせつない気持ちの描写が際立つように感じた。

    ープリンにスプーンを差し込んだ瞬間、もうだめだろうという予感が下。そして、柔らかくて甘いものを口に入れたとたん、涙の洪水がわたしを襲う。心という形がぼろぼろと足元に崩れていくのを、私は他人事にように啞然と見つめているしかできなかった。

    プリンの柔らかさと甘さは春一郎さんそのもの。それを受け入れてしまうことへの罪悪感とどうしようもなさ。嘘みたいな事が現実に起こった時の戸惑い。このへんの描写がなんともどうしようもなくてせつなかった。
    五感と心がつながるとき、どうしようもなく幸せにも、どうしようもなく悲しくも、なる。

    食べる事は生きること

    ーまた少し、春一郎さんと私の体が同じもので作られていく。

    大切な人とおいしい食事ができる事
    同じ時を過ごせる事
    そんな、当たり前の事が何より幸せなこと。

  • 小説にはいろんなタイプがあるけど、僕にとってのひとつの分類として、主人公に思い入れながら読むのと、主人公を第三者的に眺めながら読むってのがある。女流作家のやつだと性別が違うからか後者になるケースが多く、これもそうかな、と思っていたのだが、どうもそうだけじゃなさそう。リアリティがありそうでないところが理由かな。
    とは言っても、ネットなんかで見かけるほどこき下ろされる小説でも無いと思う。「時間の無駄だった」とか「マーケティング」とか「ファンションで不道徳をを包み隠してる」とか、前作の時もエライ言われようだけど、そうかなあ?谷根千の情景を思い浮かべながら登場人物達を知った顔に置きかえて読めばするっと入ってきて悪くない。こういう頭を使わず、感情入れない読み物というのも、時には必要。そう、機内誌のエッセイみたいな。僕は主人公には、何故か好きだったコのお姉さんの顔が浮かんだ。まあ、いろんな所を曖昧なままにしてるのとかも、技法と言うよりは稚拙感が出るのも事実だけどね。
    それにしてもこの人の作品は色々うまそうである。腹も減るし、何度も何度もぬる燗が出てきて、だめ押しでそれが「開運」だったときにはのけぞった。読み切ったのが夜中じゃなかったら飲みに出ちゃったよ、きっと。作者は食いしん坊なんだろうなあ…。
    この作品は前作「食堂かたつむり」と違って、作者その人が谷根千をきちんと好きで歩いてから書いたからでしょう、情景には遙かにリアリティがあります。そういう意味では、こっちの方が好き。本作でも明らかに調べないで書いている部分は露呈するので、この人は自分で良く知ってるエリアについてだけ書いた方が良さそうですね。いつか東京戻ったら、谷根千住んでみたいね。

  • 一言でまとめると不倫のお話で、読んでいる最中も読了後も気分は悪かった。

    だけど、春夏秋冬の様や栞の生活・仕事・家族や食べ物のこと近所の人の関わり合いをとても丁寧に描写してあり、読んでいてとても楽しかった。
    食事の場面は読んでいるだけでも美味しそうだなぁと思えたし、お酒も無性に飲みたくなる。
    また、栞の丁寧な生活ぶりに憧れる。

    ただ、あそこで春一郎が再び現れなければなーと思った。あそこは一番残念。あー来ちゃったよ・・と。

    個人的な願望は、栞には少しずつ春一郎を想う気持ちを忘れていって、前向きに仕事と生活、そして新たな恋をしてもらいたかった。そういうニュアンスで終わらせて欲しかった。

  • 東京・谷中でアンティークきもの店を商う主人公の栞。彼女の店に客としてやってきたのは、どこか父親の面影を持つ木ノ下という男性だった。

    栞の家族はもしかしたら機能不全なのかもしれない。割と明るく暮らしているので、あまりそんな感じはしないけど、栞の母親は不義の子を産んで父親と離婚しているし、栞の妹は、お姉さんの彼氏を取ったりしたのかな…。
    そんな中で、栞と木ノ下の関係はゆっくりと進んでいく。430ページをかけてゆっくりと。
    メインの舞台は谷中だけど、湯島や亀戸天神や上野や浅草など、東京の下町の多くをカバーしている感じ。
    小川糸さんの食べ物の描写には、今回も惹き込まれた。

    好きなキャラクターは、栞の店のお得意さんであるイッセイさん。下町ならではの粋なお年寄り。ああいう風に年を取りたい。

  • 後にも先にも、一番好きな小説かもしれない。
    なんてことのない下町の、なんてことのない人たちの話なのだけれど、おいしそうなご飯と素敵な着物の描写がたまらなく美しい。
    決してみんなから賞賛される内容ではないとしても、わたしはこの本に憧れている部分がたくさんある。
    何度でも読み返したい、繊細で美しい小説。

  • 谷中のアンティーク着物屋さんの主人公が、静かに恋をしていく話。相手は妻子持ちのいわゆる不倫なんだけど、ドロドロした感じがなくてよい。相手を静かに思う気持ちが伝わる。好物を拵えたり、誕生日を勝手に決めて密かに祝ったり、また会えるのを楽しみに着物を選んだり…謙虚に慎ましく思っている。
    また、舞台の谷根千がいい。焼きかりんとうのお店、根津神社、日暮里駅、谷中霊園、根岸の香味屋、浅倉彫刻館、鈴木精肉店、へび道…
    食べ物も美味しそう。夏の冷やしおでん、ホルモンポテトサラダにはゆず。
    暮らしぶりも季節感がある。七夕に切り紙、はなび、月見…
    楽しめる一冊だった

  • 喋々喃々 / 小川糸 読了。400ページを超える長いお話だったけれどたった2日で読み終えてしまいました。日々の生活と季節の移ろいの結び付きがとても美しく描かれていて、夏も悪くないと思えたし冬は一層恋しくなった。小川糸の描く人々はとても丁寧に日々を生きていて憧れる。登場する料理もおいしそうだし街も人も優しくて心臓のあたりを柔らかくしてくれる感じがする。それにしても、春一郎さんやイッセイさんのような男性はとても素敵だけれど現実ではこんなひとに出会ったことがないのでかなしい。

  • 谷中でアンティーク着物屋さんをしている女性が、そこで出会った結婚している男性に恋をする話。

    二人が出かける西日暮里から上野の料理屋さんの描写がすっごく美味しそう!
    鳥鍋や旅館の料理など、食べたことのない上品な味がしそうです。
    実在するお店のようで、巻末にMAPが載っていました。
    楽しく食事する、大人な雰囲気でちょっと気後れしますが、一つずつ回ってみるのも楽しそうです。

    月見の会とか地域のイベントも出てきて、そういうのに出かけてみるのも風流な感じで素敵です。
    着物で行きたいなぁ。。

    着物屋さんに来る上品な老婦人や、主人公を誘って浅草のデートに行く老紳士など素敵な人達が登場します。
    イッセイさん、かっこいい。

    穏やかな気持ちで読める、大人な恋愛小説でした。

  • 「おいしいものを、いっしょに食べたい人がいます。東京、谷中で、アンティーク着物店を営む栞の、恋と家族の物語。」
    とても、切ない、ラブストーリー。主人公の家族は、とても複雑で、それでも、彼女は、みんなが大好きで。それに、彼女は、辛い恋を経験していて、でも、今の彼を、純粋に愛している。しかし、それは、不倫の恋で…。美しくも切ない恋が、情緒溢れる、四季の風景と共に描かれている。そして、「小川糸」といえば、忘れてわならないのが、「おいしい料理」の数々である(笑)

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著者プロフィール

小川 糸(おがわ いと)
1973年生まれ、山形県出身の小説家であり、作詞家・翻訳家でもある。作詞家の際の名義は、春嵐(しゅんらん)を使用。
2007年に初の絵本を上梓し、さらに翌2008年に小説『食堂かたつむり』を発表。同作は第1回ポプラ社小説大賞に応募し、最終選考にも残らなかった作品だったが、目に留めた編集者によって刊行され、ベストセラーとなり映画化された。同作は、2011年7月、イタリアの文学賞である、バンカレッラ賞料理部門賞も受賞している。
2017年、『ツバキ文具店』が「本屋大賞2017」で第4位にノミネート。ドラマ化もされた。続編『キラキラ共和国』も発行、代表的シリーズかつヒット作となっている。
その他代表作として、テレビドラマ化された『つるかめ助産院~南の島から~』。

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