([ほ]3-1)月のうた (ポプラ文庫 ほ 3-1)

著者 :
  • ポプラ社
4.06
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591124208

作品紹介・あらすじ

小学生の時に母を亡くした民子は、父とその再婚相手との三人暮らし。複雑な想いを胸に秘めていたが、亡き母の親友から母にまつわるある話を聞き、徐々に心を開いていく――それぞれの想いを鮮やかに掬い取った、切なくて温かな家族の物語。第2回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。「生活感あふれる挿話の数々、陰影深い人物像、生き生きとした会話、そして巧みな語り口。語り手四人の絶妙のアンサンブルもいいし、強力なテーマ把握も見事だ。優しくて、温かくて、思わず抱きしめたくなるような小説だ」(書評家・池上冬樹)

感想・レビュー・書評

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  • 初、穂高明さんでした。
    夜明けのカノープス、アンソロジー「東京ホタル」の「夏のはじまりの満月」のように星空とのつながりが深いのですね。

    まだ幼い頃母親を亡くし、父、おばあ、継母、そして亡き母の友人、幼馴染の陽一とともに育った民子。しっかりし過ぎで自分に甘えない民子の姿が周囲の4人の視点で描かれています。文体はやさしく温か。

    星月夜
    アフアの花祭り
    月の裏側で
    真昼の月

    設定はちょっと陰のある家庭の日常なのですが、月を繋がりに民子の心のありようの表現が上手く、おもわずほろりの場面もしばしば。しっかりし過ぎ、気負い過ぎの民子ですが、なにもできない継母の宏子との関係で、気負った心もやがて融けていく。

    満月が冴え冴えと夜空に明るくかかり、家族それぞれの思いをかなえるのか。

    星つながりで「夜明けのカノープス」も読んでみたい。

  • 久々に一気に読んでしまった!
    こんなにストーリーの世界に入り込んだの自分でも驚きかも。
    母親に死なれて継母が来るという設定は、悪い流れかと思いきや、それとは全く逆で清々しい終わり方で気持ち良かった。
    短編集の中に、必ずといって月の存在が出てくるのですが、それも精神のリラックス効果というものでしょうか。読書側も穏やかな気持ちになりました。
    また、時間があれば再読したい本です。

  • 美智子が死んだ。残された者は悲しみを乗り越えそれぞれ母を亡くした幼い民子を守ろうとする。婆ばは厳しく民子に家事を教え、美智子の親友祥子は息子に民子を見守らせる、父の亮太は妻の死から約2年後、年の離れた宏子と結婚する…。
    民子、宏子、祥子、亮太それぞれの視点の4章からなり、彼らと婆ばや美智子のその時々の気持ちがわかった時物語がさらに愛おしくなる。
    どの章にも月が出てきてみんなを優しく切なく包みこむ。誰かと満月を見たくなるそんな素敵な物語。残された者と去っていった者どちらが悲しいだろう、辛いだろう…月の裏側が見たいなとふと思った。

    私が女だからか亮太だけは理解出来ない事が多かった。

  • ふんわりと穏やかな雰囲気が物語全体を優しく包み込む。
    読んでいて何度も温かい涙を流した。
    強いメッセージはないけれど、そっと静かに心に刻まれていく。

    小学生の時に母をガンで亡くした民子、民子の継母の宏子、民子の亡き母の友人の祥子、民子の父の亮太4人の視点による連作短編。
    大人びていて冷静な民子と、カラリと明るい宏子。
    正反対の性格の、一見合わなさそうな二人が徐々に打ち解けていく様子がとても良かった。
    民子の優しい祖母と宏子の豪快な母親も素敵で二人のエピソードに泣けた。

    「人は生かされている」
    「本当の優しさは、自分のことは自分で全部背負い込んできっちり落とし前をつける強さがないと出てこない」
    「生きていくことは自分で決めることを繰り返していくこと」
    心に染み入る言葉が続く。

    まんまるお月さまがいつもみんなを優しく照らして見守ってくれている。
    この作品に出てくる女性達の芯の強さや優しさが清々しく、とても良かった。
    亡き母も月の裏側できっと微笑んでいるに違いない。

    穂高さんはこれが初読み。
    他の作品も読んでみたい。

  • どんな慰めも言葉も、これ以上ない悲しみや孤独を知ってきた者にとっては無力なものでした。欲しいものは、自分で立ち上がり自分で現実を切り開いていく強さ。その強さがなければ本当の意味で優しくはなれません。もうこれで永遠のさよならだと気付いたとき、相手にとって一番大切なことを伝えなければならないとき、誰かの為を想うとはこんなにも震えてしまうことなのでしょう。傷付いて傷付けて、でもそこに愛があればそのすべてにちゃんと価値がある。新しい家族のことを想い最後に語った彼女の横顔は、月映えに照らされ美しかったことでしょう。月の裏が見たいと言っていた彼女には、きっともう見えていたのかもしれません。

  • 夜の闇に降り注ぐ、月の光のように温かな作品。母親に先立たれた民子と母親の友人の息子、陽一。同じ学校に通う二人とそれを取り巻く家族の物語。月にまつわる4つの話が視点を変えながら語られていく。子供の健気さと強さに胸を打ち、親の教えの大切さを強く感じた。とても良い本に出逢えた。感動した。オススメ♪

  • ステップファミリーで主人公、継母、主人公の母親の親友、主人公の父親それぞれの心の内を一章ごとに書いていく連作短編集。

    主人公の民子が強い子。病気で亡くなった実母も強い人。継母の宏子と宏子の母親は暗くなりがちなテーマの小説を明るくするムードメーカー役。皆んなが相手を自分なりに思いやる温かい雰囲気の作品。民子の「本当においしいものだから少しでいいんだよ。」のセリフも実母から教わっていることが民子の章で書いていたりリンクしているところを見つけるのも楽しいです。

    また食べる、寝るなど基本的な生活が大事という婆様のセリフが胸に沁み入ります。

  • 誰もイやな人がいない
    それぞれの視線と
    異なる時間からなる
    い~~~お話

  • 幼くして母を亡くし、継母を迎え、祖母と死別した思春期の少女の物語・・・と思いきや、それぞれの人物から重層的に家族への思いや今の気持ちが語られる。

    それぞれの独白が微妙に食い違ったり、見逃していたものを見つけたりがあり、家族の物語が立ち上がってくる。

    人と人のつながりやしなやかさを感じる。それと、女は強しかも。娘の成績のことをくどくど言ってた父親は、何を見て、何を考えていたのやら。もちろん、父親の心情も語られているのだけど。

  • 何も考えずに本のタイトルだけで買った。
    月が出てくる物語が読みたくて。
    .
    1つの家族の4つのお話
    語り手がそれぞれ違って
    娘の民子
    母親の美智子
    美智子の親友 祥子
    父親の亮太
    .
    民子の強さが切なかったり
    さっき出てきた心無いことが
    実はそうではなかったり
    ほろりとしてしまったり。
    .
    そして嬉しかったのは
    引用『ギリシャ神話では月は死者の国なんだよ』
    シビれた

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著者プロフィール

一九七五年、宮城県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。二〇〇七年『月のうた』で第二回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞。同作は、傑出した筆力を書評家などから絶賛された。他の著書に『かなりや』(ポプラ社)、『これからの誕生日』『むすびや』(双葉社)、『夜明けのカノープス』(実業之日本社)がある。

「2019年 『青と白と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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