- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591124208
作品紹介・あらすじ
小学生の時に母を亡くした民子は、父とその再婚相手との三人暮らし。複雑な想いを胸に秘めていたが、亡き母の親友から母にまつわるある話を聞き、徐々に心を開いていく――それぞれの想いを鮮やかに掬い取った、切なくて温かな家族の物語。第2回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作。「生活感あふれる挿話の数々、陰影深い人物像、生き生きとした会話、そして巧みな語り口。語り手四人の絶妙のアンサンブルもいいし、強力なテーマ把握も見事だ。優しくて、温かくて、思わず抱きしめたくなるような小説だ」(書評家・池上冬樹)
感想・レビュー・書評
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初、穂高明さんでした。
夜明けのカノープス、アンソロジー「東京ホタル」の「夏のはじまりの満月」のように星空とのつながりが深いのですね。
まだ幼い頃母親を亡くし、父、おばあ、継母、そして亡き母の友人、幼馴染の陽一とともに育った民子。しっかりし過ぎで自分に甘えない民子の姿が周囲の4人の視点で描かれています。文体はやさしく温か。
星月夜
アフアの花祭り
月の裏側で
真昼の月
設定はちょっと陰のある家庭の日常なのですが、月を繋がりに民子の心のありようの表現が上手く、おもわずほろりの場面もしばしば。しっかりし過ぎ、気負い過ぎの民子ですが、なにもできない継母の宏子との関係で、気負った心もやがて融けていく。
満月が冴え冴えと夜空に明るくかかり、家族それぞれの思いをかなえるのか。
星つながりで「夜明けのカノープス」も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に一気に読んでしまった!
こんなにストーリーの世界に入り込んだの自分でも驚きかも。
母親に死なれて継母が来るという設定は、悪い流れかと思いきや、それとは全く逆で清々しい終わり方で気持ち良かった。
短編集の中に、必ずといって月の存在が出てくるのですが、それも精神のリラックス効果というものでしょうか。読書側も穏やかな気持ちになりました。
また、時間があれば再読したい本です。 -
美智子が死んだ。残された者は悲しみを乗り越えそれぞれ母を亡くした幼い民子を守ろうとする。婆ばは厳しく民子に家事を教え、美智子の親友祥子は息子に民子を見守らせる、父の亮太は妻の死から約2年後、年の離れた宏子と結婚する…。
民子、宏子、祥子、亮太それぞれの視点の4章からなり、彼らと婆ばや美智子のその時々の気持ちがわかった時物語がさらに愛おしくなる。
どの章にも月が出てきてみんなを優しく切なく包みこむ。誰かと満月を見たくなるそんな素敵な物語。残された者と去っていった者どちらが悲しいだろう、辛いだろう…月の裏側が見たいなとふと思った。
私が女だからか亮太だけは理解出来ない事が多かった。 -
どんな慰めも言葉も、これ以上ない悲しみや孤独を知ってきた者にとっては無力なものでした。欲しいものは、自分で立ち上がり自分で現実を切り開いていく強さ。その強さがなければ本当の意味で優しくはなれません。もうこれで永遠のさよならだと気付いたとき、相手にとって一番大切なことを伝えなければならないとき、誰かの為を想うとはこんなにも震えてしまうことなのでしょう。傷付いて傷付けて、でもそこに愛があればそのすべてにちゃんと価値がある。新しい家族のことを想い最後に語った彼女の横顔は、月映えに照らされ美しかったことでしょう。月の裏が見たいと言っていた彼女には、きっともう見えていたのかもしれません。
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夜の闇に降り注ぐ、月の光のように温かな作品。母親に先立たれた民子と母親の友人の息子、陽一。同じ学校に通う二人とそれを取り巻く家族の物語。月にまつわる4つの話が視点を変えながら語られていく。子供の健気さと強さに胸を打ち、親の教えの大切さを強く感じた。とても良い本に出逢えた。感動した。オススメ♪
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ステップファミリーで主人公、継母、主人公の母親の親友、主人公の父親それぞれの心の内を一章ごとに書いていく連作短編集。
主人公の民子が強い子。病気で亡くなった実母も強い人。継母の宏子と宏子の母親は暗くなりがちなテーマの小説を明るくするムードメーカー役。皆んなが相手を自分なりに思いやる温かい雰囲気の作品。民子の「本当においしいものだから少しでいいんだよ。」のセリフも実母から教わっていることが民子の章で書いていたりリンクしているところを見つけるのも楽しいです。
また食べる、寝るなど基本的な生活が大事という婆様のセリフが胸に沁み入ります。 -
誰もイやな人がいない
それぞれの視線と
異なる時間からなる
い~~~お話 -
幼くして母を亡くし、継母を迎え、祖母と死別した思春期の少女の物語・・・と思いきや、それぞれの人物から重層的に家族への思いや今の気持ちが語られる。
それぞれの独白が微妙に食い違ったり、見逃していたものを見つけたりがあり、家族の物語が立ち上がってくる。
人と人のつながりやしなやかさを感じる。それと、女は強しかも。娘の成績のことをくどくど言ってた父親は、何を見て、何を考えていたのやら。もちろん、父親の心情も語られているのだけど。 -
何も考えずに本のタイトルだけで買った。
月が出てくる物語が読みたくて。
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1つの家族の4つのお話
語り手がそれぞれ違って
娘の民子
母親の美智子
美智子の親友 祥子
父親の亮太
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民子の強さが切なかったり
さっき出てきた心無いことが
実はそうではなかったり
ほろりとしてしまったり。
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そして嬉しかったのは
引用『ギリシャ神話では月は死者の国なんだよ』
シビれた -
母が亡くなり、父と継母と3人で暮らすことになった主人公。主人公、継母、叔母、父の4人の視点から物語は構成されている。欲を言えば、母の友人の息子の視点も入れてほしかった。
時間の経過が早くて、主人公と継母、叔母と継母の距離が思いのほか早く縮まることに違和感を覚えた。血が繋がっていないがゆえに起こる家庭内での問題をもっと描いてほしかった。多分僕はもっとシリアスなものを求めているんだろう。小学生から中学生ぐらいの年代の子が読んだら、本書をおもしろいと感じるかもしれない。ライトな家族小説。 -
なんて温かくて優しいお話なのだろう。人は想い想われて、受け入れ合って、大切な人がいなくなってしまっても思い出をまた大切な誰かに紡ぎ続けて、そうしてこれからも生きていくのだろうなあ。親という存在についても考えさせられます。両親や祖母に会いたくなった。視点が変わる毎に別サイドから人物が見えるので、見方が変わるのも面白かったなあ。
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913-H
文庫 -
2016.9.18読了。3章の祥子さんの語りがグッときた。
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早くに母を亡くした民子はしっかり者の祖母にきちっと育てられる。継母のほうがのんびりキャラ。陽一とその母とのつながりなど、なかなかよかった。
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文章のリズムが自分のどストライクゾーンから少し外れていて、冒頭の一頁を読み齧ったまま1年ほど積読しておりました…
2015夏、数年に一度の蔵書棚卸(不要本の仕分)作業の際「あれ?未読だったわ」と手に取ってみたところ、とても良い本でした。(これは手元に残しておこう。)
前置きが長くなりました。ここからレビューです。
主人公は民子、昭和臭漂う古臭い名前の中3。母を亡くしている。部活に打ち込むという正当な理由で煩わしいことから距離を置くなど、考え方のしっかりとしたコ。
と思いきや、次の章では主人公がバトンタッチ。
継母である宏子に代わる。
…冒頭まさか主人公が代わることを想定していなかったので、別の話になったのかと困惑したけれど、馴れてくるとこの語り手交代制はとても良かった。
1章 民子
2章 宏子(民子の継母)
3章 祥子(民子の実母・美智子の親友、陽一の母)
4章 亮太(民子の父)
最初 民子の視線から描かれていた世界が、他の人物から描かれることでどんどん厚みを増してゆく。
あの時のアレはそういうことだったのか!と気づき、登場人物たちの想いの深さに心打たれる。
1章では中3であった民子は章が進むごとに進級してゆく。そして民子と継母との関係性も変わってゆく。
民子の祖母と、宏子の母のセリフはとても深くてとても良い。ぜひ読んでほしい一冊。
最後に、個人的に胸に響いたくだりを2つ。
(ひとつは解説にも書かれていたくだり)
(ここからネタバレ)
「本当のやさしさってのはね、自分のことは自分で全部背負い込んで、きっちり落とし前をつける強さがないと出てこないもんなの。そういう覚悟がある人だけが他人に本当にやさしくできるのよ」
いいかげんになるのではなく、肩肘張らずに「良い加減」に生活すること。たまには息抜きしているそんな自分のことをそれでいいんだよ、と許…(略)
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これほんと大事。わたしにも足りない部分 -
記録
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4人の登場人物が、母を、親友を、妻を、家族を語る。
何度も登場する婆ちゃんがイイ!
とても大切なことをそれぞれに遺している。
長年生きた人間の重みを感じる。
そしてそれぞれのシーンに"月"が登場する。
家族愛や人間愛を感じさせてくれる、いい本でした。 -
ポプラの文学賞受賞って、あのヒロくんの次?
それはさておき、この作家さんを全然知らなかったのだけれど、この作品はツボ。
もんのすご~く手馴れているわけじゃなくて、初々しいっていうか、大事なことがストレートなところが、良いなあ~
お母さんとなった、祥子さんと美智子さんの高校時代の物語に涙・・・
婆ばに宏子さんの母親が、カッコいいなと思えるのは、私がその年齢に近いからかもね。
生きるっていうのは、若いだけじゃどうにもならないことが大きいんだよね、きっと。
民ちゃんは例外中の例外。
心が鍛えられたから、人にやさしくなれる稀有な存在! -
うだうだの話かと思ったら、ムチャいい話やった。民ちゃん、すごくええ娘! とにかくお勧めできます ^_^
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美智子と祥子、陽一と民子…幼なじみ中心に"とても優しく温かい"だけに終らせない物語。複雑な悲しみに乗るしっかりしたキャラ立ては婆ばあり、伯母親子あり、亮太あり…なのだが、痛みと切なさを貫通させない、極めつけの宏子さんとその母親は特筆だな!。時の流れと月の満ち欠けの背景のコントラストの使い方も絶妙の良作♪。
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解説にもあったが、これはいい小説だと思う。
たった一つの心残り…不満は、婆ばの視点で綴られた章がなかったこと。
彼女が唯一の第三者のように思えたからだ。唯一、登場人物すべてを俯瞰して見られる人だと思うからだ。
それを除けば、本当にあったかい。いい小説だ。 -
太陽は背中を押してくれるように力強いイメージだけど、月の光は温かく見守ってくれているような感じがする。この物語に出てくる登場人物たちは、月のように優しい。
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児童向けの本の文体がだめだった。
主語がなんなのかわかりにくいので、何度も戻ったりしてなかなか読み進まなく疲れる。 -
母を失くした少女"民子"と継母となった"宏子".そして二人を包む愛の物語.お友達おススメの一冊.やっと読めました>w<
優しくて,切なくて,温かく,愛おしい.愛が凝縮したような素敵な一冊でした.僕は特に,宏子に共感.素直に素敵な女性だと思いました♪ -
母親を小学生の時に亡くした民子、亡き母の親友、父親、そして父親の再婚相手、それぞれの視点で今の生活と過去を振り返る。
月の姿を物語の中にちりばめるのが印象深い。月の光のような温かさが伝わってくる。
私には、再婚相手の宏子さんとその母の考え方が好感持てた。応援したくなる。 -
いろいろあっても家族の繋がりはいいなあと思わせる話だ。母を病気でなくした民子、その継母となる宏子、母の友人の祥子、民子の父の亮太。それぞれの視点から家族を見つめる視線が優しい。
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月に関するエピソードで繋がる物語。4編から成り、それぞれの編で話し手が変わる。
人の感じかた考えはそれぞれで何が当たっているとかはよくわからないけど、ただ、人を思う気持ちは皆共通していると思った。
人のことを思い、許す、それで良いって言ってくれる、あたたかい思いが溢れている話。
優しい、読んでて安らぐ。