- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591124215
感想・レビュー・書評
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なんて、ばかばかしいんだー!
そして、なんて、なんて、愛おしいんだー!!
一人の青年から、友人や先輩、妹、少年らへの手紙だけで構成される書簡形式の小説。
途中から、著者の森見登美彦氏まで登場するわ、おっぱいおっぱい連呼するわ、私は一体なにを読まされているのだろう…と思ったが、読んでいくうちにまんまと惹き込まれた。
ジワジワくるね。この守田青年。憎めないんだなぁ。真面目に不真面目というか、いつだって全力で、思い切り空回りしてて。
登場人物も、みな超個性的で魅力が溢れている。結局、皆なんだかんだ言いながらも、守田くんのことが大好きなのだろう。
癖になるおもしろさ。著者の魅力が全開!!
手紙だからこそ、伝えられることもあるのだ。手紙を書きたくなっちゃったな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これこそ自分がイメージしている森見登美彦。
最高にくだらなくて、洒脱でオシャレ。
書簡体小説というジャンルらしいが、これが最高に森見先生にフィットしている感じがした。
恋文を描く練習の為、友人、知人や先輩などと文通の武者修行を行う主人公、守田一郎。
相手により文体やキャラを変えて、文通をしていくのだが、同じ体験を話しているのにここまで、違う言い回しやテンションで書き分けるかと非常に面白い。そして、森見登美彦作品のお家芸である謎の食品。以前の作品ですっかり、「電気ブラン」にハマったが、今回は「天狗ハム」。あと、「猫ラーメン」。
特に前者は何回ともなく登場するので本気で食べたくなってきた。後、能登半島のイルカにも会いたくなってきた。
文通相手としては、見込みのある少年と大塚先輩が最高だった。少年に対しては、元家庭教師という立場から、ストレートに表現できず周りくどい表現をしたり、大塚先輩に対しては、下衆極まりないやり取り。卑怯者の代名詞に成り下がった守田の行動は最高に笑えた。
最近の作品は円熟してきたのか、シリアスが多い感じになってきているが、こんなくだらない感じの森見登美彦の方がが好きです。超愛してる。 -
クソ面白い。そんな下卑た言葉から初めても文句は言われないだろう。言われても気にしないが。森見登美彦さんの描く味のある大学生が気持ちいほどよく描かれている。感動である。
この作品は恋文の技術を手取り足取り教えようという胡散臭いビジネス書ではない。研究のために田舎に飛ばされたお茶目な男子大学生が書いた手紙が載っているそれだけの内容だ。読んでいるうちにどんどん手紙を書きたくなってくるという意味ではそこらに溢れている有象無象のビジネス書(全て有像である)と同じであろう。
守田青年の実情が自分と似ていたのでついつい傷の舐め合いをしているような気分になった。就職なんて考えたくない。詩人か、高等遊民か、でなければ何にもなりたくない!である。
作中に他作品の小ネタが散りばめられているので探してみてはいかがだろう。パンツ総番長が出てきたときには再会の感動で咽び泣いたものである。
何事にも教訓を求めるな!ということが教訓として書かれていると思った。無意味なことにかける時間こそ人生を豊かにするのだと自分も爪先から心の底まで共感した。できることなら一緒に無為な時間を過ごしてくれる相手が見つかることを祈るばかりである。 -
森見ワールド全開な書簡体小説。ユーモアに溢れ、本気でふざけている感じが遺憾なく発揮された傑作。
大学院の守山一郎は愛すべきヒネクレ者で寂しがり屋。そんな守山が地元京都から、能登半島にある実験所に飛ばされた。半年間移住した先での文通武者修行物語。
一つの出来事を別々の人に宛てた手紙を通して多角的に見ることで、全体がパズルを組み立てているかのようにだんだん明らかになっていく感じが楽しかった。
ラストに何故文通に拘るのかが分かり、読後はちょっぴり甘酸っぱい気持ちになった。
昔、上京し一人暮らしを始めた時、寂しくて学生時代の友人達に手紙を送りつけてた事を思い出した。守山一郎の気持ち、何となく私は分かる笑。読後大切な人に手紙を書きたくなる小説です。 -
ハチャメチャへんてこ勢揃いの文通で、愉快この上ないです。
名言もたくさん出てきてメモしたくなる。
文通、万歳。 -
“彼女に何通も手紙を書きましたが、つねに投函を諦めることになりました。
読み返してみると恥ずかしくてならず、「俺は何を書いているんだろう」という気になるのです。情熱はしたたり落ちるほどある。文章も我ながらうまいような気がする。分かりやすく、そして熱い。自分の書いた手紙にもらい泣きしようと思えば可能である。なんと美しい手紙だと思ったりする。しかし根本的な難点が一つある。書いているうちにへんてこになるのです。なぜだか分かりませんが、清い心で書いているように見えないのです。(p.182)“
森見登美彦の小説は今まで殆ど読んできて、『夜は短し歩けよ乙女』や『新釈 走れメロス』、『夜行』など好きな作品は幾つもあるが、実は彼の作品の中でもややマイナーな感のある本作『恋文の技術』が一番のお気に入り。手元のメモによると初読は2015年で、今回が実に4読目である。
京都の大学院から能登の実験所に飛ばされた大学院生の守田一郎が、「文通武者修行」と称して京都の仲間たちに手紙を書きまくる。”文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。(裏表紙の紹介より)“ 本書は、半年間で100通以上にものぼった彼の手紙から成る書簡体小説である。
まず、登場人物がみな、実に魅力的だ。守田一郎は森見登美彦が描く大学生・大学院生の例に漏れず捻くれ者で、いつもは阿呆なことばっかり饒舌に語っているのだが、時々反省してシュンとなるとポロッと弱音を漏らす。また、意外と純粋なところもある(そもそも、今の時代における文通がロマンチシズムでなくて何であろうか! 羨ましい!)。それが彼の愛嬌というか憎めなさになっていて、ついつい応援したくなる。脇を固める人物たちも、彼の友人の小松崎は女性の◯っ◯いが気になって仕方がないお◯ぱ◯星人だし、先輩の大塚姉さんはM2の癖して研究室を牛耳る女王様だったりと、曲者ぞろいである。もちろん読者は守田の手紙しか読めないのだが、彼らの人となりや守田との関係性が生き生きと伝わってくる。
書簡体小説という形式も非常に良い。一人称小説といえばミステリー好きなら叙述トリックか!というところだが、本書においても手紙という「語り」である以上、語り手が本当のことを書いているとは限らない。少なくとも、そこに書かれるのは守田が他人に読ませてもいいと判断したことだけなのだから。例えば、守田は複数人と文通しているので同じ出来事を何通かの手紙に書くこともあるのだが、相手によって伝え方が違う。換言すれば、相手によって伝えることと伝えないことがあるということでもある。彼と小松崎が「研究室で○っ○い映像上映会事件」を起こしたとき、小松崎に対してはそこでの失策を責める手紙を送るが、妹に対しては詳細を語らず取り合えず誤魔化そうとする。また、守田自身、彼が文通武者修行に励むのは見通せない将来への不安を紛らわせるためだと薄々分かっているが、それを手紙に書くかどうかはまた別の話なのである。 しかし、守田が「本当のことを書かない」のは、彼が不誠実だということを意味しない。寧ろ、「語る」ということに何処までも付き纏う罠なのだろう。何しろ、語り手が自らの「語り」に振り回されるということが有り得るぐらいなのだから。 ”そこに現れた文字の並びは、本当に俺の想いなのか? そんなことを、誰がどうやって保証するのか。(略)自分の想いを文章に託しているのか、それとも書いた文章によって想いを捏造しているのか。(p.190)“ そういった「語り」の不思議さが、書簡体小説という形式を巧く用いて表現されているように思った。
上述のように、初読は2015年の夏で当時僕は中3だったから、登場人物たちの阿呆なやり取りをアハハと暢気に笑えたのだけれど、来年からは僕自身(院試に無事受かれば)大学院生ということになり、段々と守田の境遇に近づいてきて、研究は辛いけど社会に出るのも不安だよなという共感も抱くようになった。同じ本でも繰り返し読むとその時々で感じることが違ってくるというのは本当だな、と面白かった。 -
Amazonの紹介より
京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。
手紙の内容だけで展開する話の内容が、側からみれば馬鹿馬鹿しく思えて、ついクスッとしてしまいました。
といっても、主人公が関係者に宛てた手紙の内容が大半なので、関係者から主人公宛の手紙の内容はどんななのかは分かりませんが、なんとなく分かりますので、どの辺は大丈夫かと思います。
遠くに飛ばされた場所は能登で、その風景描写は穏やかで、一度行ってみたくなりました。このレビューを書いている時は、能登地方が被災されており、心が痛みますが、復興のために何か手助けできればと思います。
穏やかな能登の描写とは裏腹に、手紙の内容は、段々とヒートアップしていきます。もうコミカルすぎて、ついつい笑ってしまいました。まさか作者の森見さんも登場するとは、思わず「え⁉️」と吹いてしまいました。
別作品「夜は短し歩けよ乙女」にリンクしているのではといった描写もあって、面白かったです。印象に残る発言が多く、森見ワールドを堪能しました。
それにしても、主人公の面倒臭さに呆れてしまいました。「かまってちゃん」のような印象だったので、自分だったらあまり友達には・・と思ってしまいました。
さらに、おっ○いの言い過ぎも面白かったです。(笑)
後半からのヒートアップするシーンは、本人に至っては真剣かと思いますが、側からみれば「しょうもな」とか思ってしまいました。自分も、ヒートアップすると、もしかしたらそう思われてるかもしれないので、冷静でいないといけないなと思いました。
後半では、主人公だけでなく、関係者同士の手紙のやり取りが描かれています。その中には、主人公のことをどう思っているのか、正直な気持ちも書かれていて、面白かったです。
それまでは、主人公から見た関係者の印象しか書かれていなかったので、印象が変わった人もいました。
「夜は短し歩けよ乙女」に通じる要素もあって、森見ワールドを堪能したい方には、お勧めかと思いました。
まさか、コミカルな内容だったとは、良い意味で裏切られたので、大いに楽しめました。 -
手紙の形式で書かれたユーモア小説。
京都から臨海実験所に飛ばされた大学院生が、いろいろな相手に手紙を書き続けるが‥?
守田一郎は大学院生。
教授の命令で、能登の研究所で実験にいそしむことになります。
近い駅は無人駅で、人と会うことも少なく、失敗しては先輩の谷口に怒られる日々。
この際、文通の達人になろうと豪語して、さまざまな相手に手紙を送りつけます。
恋に悩むアホな後輩。
さんざんからかってくる怖いお姉さんだった先輩。
女子高生で、しっかり者の妹。
作家の森見登美彦。
家庭教師をした生徒だった見どころのある男の子。
何度も恋文を書こうとしながら失敗を重ねて出せないでいるお相手。
手紙の進み具合で、相手が何をどう書いてきたのかがわかり、行き違いで事件が起きる様子もわかるのが面白い。
ちょっとした言葉遊びにニヤッとしつつ、のんびり読み進むと、たまに爆笑ものの事件がおきます。
饒舌で愚痴っぽく、かなりアホで、根性も決まってないわりにプライドもちょっと邪魔をするけど、人懐こくて人がよくて、感情丸わかりで、あれこれ考えつき、面白いことを言わずにいられない。
これを読まなくちゃならない、ということは別にないんだけど~
笑えます。
恥多き青春の迷い多きひとこま。
たまに、ごくまともなアドバイスがあったり。
気楽に、お楽しみください☆ -
手紙が書きたくなります。文通がしたくなります。
伝えなければいけない用件なんか何も書いていない。ただなんとなく、相手とつながりたがってる言葉だけが、ポツンと空に浮かんでいる。この世で一番美しい手紙というのは、そういうものではなかろうか……
読んでいてとても楽しい気分になりました。
守田くんに手紙貰ったら筆無精のわたしでも絶対につらつらと返事を書きますね。