- 本 ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591124765
作品紹介・あらすじ
難病女子による、画期的エンタメ闘病記!
ビルマ難民を研究していた大学院生女子が、ある日とつぜん原因不明の難病を発症。自らが「難民」となり、日本社会をサバイブするはめになる。
知性とユーモアがほとばしる、命がけエッセイ!!
【推薦のことば】
究極のエンタメ・ノンフィクション。今困ってるすべての人に読んでほしい。
──高野秀行(作家)
想像を絶する難病者の日常なのに、ここに書かれているのはあなたや私の姿だ。この現代の「神曲」に、私はいくども救われ続ける。
──星野智幸(作家)
著者が本書を通して、現代日本社会に刻み続けているのは、絶望の淵にあっても、すべてを肯定してみせる「世界観」である。
──清水康之(自殺対策支援センターライフリンク代表)
みんなでこの本を本気で売りましょう。そのぶんだけ、この社会が豊かになりますから。そういう力のある本です。
──荻上チキ(評論家)
感想・レビュー・書評
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ひとが、病や死に直面するというのは、ドラマや小説のようなものじゃない。(略)医療や障害、難病、福祉、介護、社会保障、あらゆる膨大で煩雑な、延々の制度との格闘。ある日突然「奇襲」される、ビルマのジャングルでもなかなか出会わないような、手強い「モンスター」。(143p)
最も周辺化され、最も援助を必要とされている人々にとっての最良の支援は、政治的な構造を変革することなしには実現しない場合が多いのではないだろうか。(211p)
この「モンスター」を少しでも「ハムスター」に近づけようと、大野更紗さんは、一度読んでも二度読んででも理解出来ない「難病」と闘いながらもこの様な本を出して、社会に訴える闘いを始めた。文体はあくまで明るく、内容はリアルに悲惨に。
例えば、身体障害者手帳の申請でも、難病の内容などは関係ない、手足があるかないか、機能しているか、それだけを測るのである。難病患者がどんなに苦しくても耐え続けなくてはならないワケがこんな処にもあると云う。
障害者のためのサービスは自治体によって「千差万別」らしい。
また、私も親類の介護認定で怒りを感じ得なかったが、必要不可欠の「主治医の意見書」、頼りの医師がホントにいない、という事実がある。大野更紗さんも頼りにしていたクマさん医師にほとんどの支援項目に「必要ない」とされていて、医局に怒鳴り込む。すると医師は「今忙しい!医学的に正しい事を書いた!本人に聞く必要ない!」と答えたのである。確かに、本人に聞く必要はない。しかし、医師は患者の「生活の苦しみ」を「知らない」人種なのである。その人種に、命の綱の「介護認定」に関わらせる事の矛盾‼あゝ思い出しただけで頭にくる! -
闘病記だけど、ただの闘病記ではない。
ただものではない病人の体験記。
ホントにもの凄く大変そうだけど…
励まされます。
福島県ののんびりした所で育った女の子が、フランスに憧れて上智大学へ。
それがアジア難民に興味を持つことになり、ミャンマーの人のために奔走する生活に。タイやビルマにも何度も足を運ぶ。
大学院に入ったばかりの2008年の夏、突然、身体に異変が!
自分が難民ならぬ~苦難にあう人になってしまったのだ。
病院へ行くことも大変な体調。
検査すること自体、また大変という。
病名がわかるまでに、病院を点々とする1年。
(…こんなものすごい症状ではないけれど、病院へ行くことも出来ない体調というのは経験あります。
待たされて具合悪くなったり、結局治す手だてもはっきりしなかったりね。やはり自己免疫疾患で難病の端くれだったうちの母にも付き添いました。)
著者の病名は、筋膜炎脂肪織炎症候群。プラス皮膚筋炎。
難病専門の病院に入院して9ヶ月、本格的な治療がまた大変。
麻酔をかけると組織が変わってしまうので、麻酔なしの検査…げげっ。
最初は、他の入院患者の様子にもショックを受けた著者。
難病を抱えて生きてきた先輩を尊敬するようになるのでした。
活気のある文章でテンポ良く描かれるので、ただ暗いということはありませんよ。
故郷はムーミン谷のような山間ののどかな田舎で、原発の避難区域ギリギリという。
一番近いコンビニに行くにも15分。
ムーミンパパママのようだという両親に、ほっこり。
でも故郷から病院へ行ったり、一時退院したりするのは何と大変な事か。
お医者さんは素晴らしい人たちなのだが、やや浮世離れもしているので、そういう具体的な大変さは理解の他という面もあった。
難病の男性と思いがけなく、ほのかな恋が芽生える。
重病人同士では諦めなければならない、思い出を一つ作るだけにしようと、ただ庭で桜の花を見上げたひととき。
ところが、恋のパワー恐るべし。
病気とは、長く付き合わなければならないと覚悟する。
しかるべく援助を受けるために、ややこしい書類の山と格闘。
自立をめざして、ずっとほったらかしだった遠い小平の自分のアパートから、病院に近い所に部屋を探す。
引っ越し手続きを出来るだけ速やかに終わらせるための、決死の準備。
そして、友達を総動員しての引っ越しの日が来る。
彼の人は実はDIYが得意で、いろいろ手配も手伝ってくれた。
やったね!
それでもまだまだ大変そうだけど…
どうしていらっしゃるでしょうか。
少しは楽でしょうか。
著者は1984生まれ。
2010年にこの本の執筆を始める。
ウェブマガジン「ポプラビーチ」に連載されていたそう。
こんなに大変でも大丈夫だよ!と伝えたいそうです。 -
死にたい気持ちまであからさまに書きながら、そこに人を引きずり込まないのは、自分を俯瞰する視点を保ち続けて書いているからだと思う。そんなこと、誰にでもできることじゃなくて、例えば私がこんな状況に陥ったら、自分をあきらめるか、自分を投げ出すか、あるいは自分に酔ってしまうと思う。
知性とか自律とか、そういう心持ちは、生き方の魅力そのものにこんなにもつながるんだなと背筋が伸びる心地がした。
この文章を本にしてくれてありがとうございました。 -
昨年読んだ本なのに、本棚に登録し忘れていた。
これだけの濃い内容の本を、どうして忘れていたのか。
まぁ、今からでも思い出しながら、また時々ぱらぱらとめくってみながら、
感想をしるしておこう。
小説だのノンフィクションだの闘病記録だの、どう言っても言い足りない
壮絶な著者の病の記録である。
読んでいる側も、じゅうぶんに痛いし、辛い。
しかも著者は、まだうら若い女性で独身。
ひとりでこの難病と向かい合っていたことを思うと、胸がふさがれるようだ。
ネット連載時からツイッター上で絶賛の嵐だったというが、それは著者が
恨みつらみを手放して、病を客観的にとらえる公平なまなざしを持っているからでもある。
くわえて、明るいポップな文章でさくさくとページを進めてくれる。
自虐的なまでのサービス精神は、まるで難病をネタにしているお笑い芸人の
ようでもあり、ユーモアとは知性なのだと思い知らされる。
読む前はこのタイトルの意味するところが分からないが、読み終える頃には分かってくる。
彼女はまさしく「困っている」のだ。
難病患者を追い詰める国のしくみそのものと、彼女は闘おうとしている。
困ってはいるが、絶望はしていないという著者を、私は心から尊敬する。
私も難病を抱えているが、とてもじゃないがこの本の前ではそんなことは言えなくなった。
そして、月並みではあるけれど「頑張って」としか言葉が出ない。 -
わずか20代で、杖にすがらなければ動くこともできず、おしりの肉は液状化して流れ出し、ステロイドの副作用で白内障。実に想像を絶する「難病女子」ライフを、かえって痛々しいほどに軽く明るい口調で語るこの本を読みながら、「いわゆる難病もの」はもう歓迎されない時代なのだなあ、と思う。
かつては人々の同情と涙をさそう存在であった難病患者も、「自己責任」という脅迫と「こんなにがんばってるのに」という怨嗟の声が充満する今の社会では、眼をそむけられるどころか、「はたらかずに生活保護もらいやがって」と八つ当たりさえぶつけられかねない。この軽い筆致と絶妙なタイトルや装丁なしでは、本書がここまで広く読まれることはなかっただろう。
しかし、難病患者がことさらに同情の対象とならないのは、悪いことばかりでもない。著者が書いているように、「自分はけして同情される側にはならない」という思い込みは、いともたやすく突き崩されるのが現実だからだ。彼女は「困っている人」であって、「かわいそうな人」でも、「怠けている人」でもない。そして「困っている」のはかならずしも病気のせいばかりともいえず、膨大なペーパーワークをはじめとする、社会制度の側にかなりの原因があることも見えてくる。
そうした制度を代表する諸個人のなかには、当然ながら医師たちも含まれる。「パパ先生」「クマ先生」と親しみをこめたニックネームをつけた主治医らとの壮絶な、文字どおり命をかけた格闘の記述は、あいかわらず軽いノリを装っているとはいえ、本書で最もおどろかされ、胸を衝かれる部分だ。
難病患者は、数少ない医師を信頼し依存しなければならない。そうしなければ生きていけないのだから。しかし同時に、その支配に対して必死に闘わなければ、やはり生きていけない。この真実を、これからも関係を依存せねばならない医師たちに向けてはっきりと伝えている本書を、私は、著者の遺言だと思って読んだ。それは、他の支援者として現れてくるワーカーや友人知人たちに対しても同じだろう。彼女が文字通り命をけずって書いたこの本は、たしかに「いわゆる難病もの」として消費されてはならない。 -
医療職の人間です。この本を読んで、入院生活って僕らにしたら日常なんだけれど、患者さんにとっては非日常だということが改めてよく分かりました。
以来、若手のスタッフに事あるごとに紹介しています。笑いあり、涙ありの素敵な本です。オススメ! -
今現在施行されている法律には、時代錯誤なものや、現状に則していないいわば机上の空論なものが多いよな、とは常日頃から感じていること。
これを読んだところで、大野さんが日々感じている痛みや苦労を本当に理解することはできないのだけれど、
それでも想像を絶する痛みとの終わりなき闘いと、
自分の生きる道を開拓し続けるその精神力の強さに脱帽するほかない。
自分だったら、その痛みに耐えられるのだろうか。。。
おこがましくて、これ以上のレビューは、とても書けない。 -
これも祖父がくれた本。
大野さんは超稀な難病にかかり、体の異変が分かってからの闘病記。壮絶なのに、くすっと笑える。今まで闘病記ってだけで敬遠してたけど、今読んで良かったと思える本でした。
病気を抱える人間として、女性として、共感できるところがあったり、制度を利用するために複雑な書類たちだるいよね!と共感したり、、
ノンフィクションとして面白い。闘病記として面白い。ブログを始めたばっかりで参考になりました。 -
難病の闘病記なのに、暗くならない。
好きな人とのデートが、一人暮らしをするパワーになったり
両親の生活を思ったり、将来に不安を感じていたり、人間関係に、思慮したり
それでも前を向いて進んでいく
当たり前だけど、難病と戦いながら
とっても人間らしくて。
なんて強いんだろうって
人って心持ちでこんなに行動が出来るものなんだって。
恋って凄いなぁ~ってのが
この本読んで一番の感想だった。
すごいね、この本!-
2013/05/17
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いますね~♪
後ろ向こうとすると、前を向かせてくれる人
力をくれて
とっても面倒見のよい人が♪いますね~♪
後ろ向こうとすると、前を向かせてくれる人
力をくれて
とっても面倒見のよい人が♪2013/05/21
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こういう言い方が正しいのか分からないけれど、すごく面白かった。
そして興味深かった。
そして自分のことを考えさせられた本だった。
大学院でビルマのことを研究していたら、突如難病に侵されてしまった大学院生。
その闘病記…ではなく身の回りのエッセイ。
すごく文章を書くのが上手なのでサクサク読める。
そしてサクサク読めるし軽いタッチで書かれているが、彼女の置かれている状況はとても厳しい。
でも、めげてない。いや、めげてるんだけどめげないように頑張っていると書くべきだろうか。
とにかく読んでいて、難病とかにありがちな暗い気分にならない。
タッチ的には五体不満足に似ているのかもしれない。
それでも、しっかりと難病と共に生きている人にとって何が大変なのかきちんと書かれている。
医者は聖人君子ではなく人間で、日本の制度は病人にとって辛いものである。
いや、きっとどこの国の制度も難病を抱える人にとっては大変だろう。
いろいろ考えさせられた本。
いろんな人に読んでほしいと思う。
大野更紗の作品






私も、この本読んで、同じところで腹がたちました!
大野さん、TVで拝見したことが、あります。本に書かれていた頃よりも、...
私も、この本読んで、同じところで腹がたちました!
大野さん、TVで拝見したことが、あります。本に書かれていた頃よりも、御病気が良くなられていて、良かった、と思いました。(数年前に、見たのですが)2021.1.10.