音のない花火

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591125793

作品紹介・あらすじ

ある日突然、末期ガンと宣告された父。その現実と、自分の気持ちに折り合いをつけられず悩む娘。実父の死に正面から取り組んだ話題のドキュメンタリー映画『エンディングノート』から生まれた、もうひとつの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 静かで優しくて、でも現実的で深い、ステキなお話でした。
    父親がもうすぐ亡くなるということが、音のない花火を見てるような、どこか実感として湧いてこないような感覚…。
    そんな意味のタイトルなのかなと…。
    ちなみに映画「エンディングノート」は見ていません。

  • 末期ガンを宣告された父と過ごし、看取った29歳の娘しぐさの話。

    父親への思いを素直に伝えられないしぐさの気持ちが痛いほど伝わり、切なかった。
    大好きだったわけではなくとも、大切だった父。その思いは、自分にも心当たりがあり、とてもリアルです。

    亡くなった直後、亡骸の周りで片付けをしている家族へ、父が言っているかもしれない言葉に、涙腺が崩壊しました。

    エンディングノートは観ていませんが、観れないかも。
    著者のもう一冊の短編は読もうと思います。

  • 「音のない花火」花火が打ちあがる様子は見えていても防音ガラスの内側には音が届かない。確かにあるはず花火が音がないだけで現実感がなくなる。
    そんな不思議なふわふわした感覚はしぐさが感じる父の死と似ているように思ったし、この物語がそんな静かな物語だった。


    私には感情移入しにくい物語だった。

  • 多くの人が日常の些事に気を取られて、自分で見過ごす或いは、やり過ごす感情の芽生え。砂田さんはある意味、自分から少し距離を取って、さらりと客観的に言葉にする力が素晴らしいと思う。人を失う喪失感を言葉にするのも、向き合うのも難しいが、紡ぎだされた言葉が、私自身の親の喪失感に重なる。若いのに、感じて、表現することに秀でた人だな。

  • 静かな本だった。
    ところどころ、自分の不器用さみたいなものを歯痒く感じているようなところに、共感できる。

  • 読み始めてすぐに、
    映画館の大きなスクリーンに映し出されていた、砂田さんのお父さんの顔を思い出しました。
    お茶目で、ちょっと我儘ぽくて、でも仕事はバリバリに有能そうな。
    もう何年も前に見た映画なのに、心に強く残っています。
    癌で余命宣告された父の姿を、ドキュメンタリー作品として娘が撮り続けていた。。。
    『ドキュメンタリー作品』で『娘』だからこそ
    意識的に除かれていた要素が、
    この物語の中には包み隠さず吐き出されています。
    父親の人生を、父の目線で作られた映画に対し
    娘の視点と感情を大っぴらに書き綴った小説、
    どちらも独特のユーモアと父への愛が感じられて秀逸です。
    できれば両方の作品をのぞいて見てほしい。

  • 窓ガラス越しに見る音のない花火。
    音のない花火って幻想的なのか、味気ないのか。
    段取り好きな父親に病死。

  • 両親と同居する29歳の“藤田しずく”の目線で物語は進む。
    -「お父さん。癌だって」まるで日常会話のように姉から聞かされ、そこから家族に何となく広がる言葉にならない感じを、著者と等身大の主人公の視点から描いている。

    父と娘。相手を思い、相手をできるだけ傷つけないようって思いは同じはずなのに、ちょっとした変な感じ(“ずれ”は言い過ぎかもしれないけど、あえてずれと言ってみる)を感じ、それにしずくは戸惑い、思い悩む。

    「寄り添うとは何だろう?その時私の頭にぼんやりとよぎった。あらゆる点において、家族の中に癌患者がいるということは私の想像を超えていた。急によそよそしくするのも憚られるし、甲斐甲斐しく接すれば父のプライドを傷つけてしまう。」(P96)

    「もっともらしい言葉など、何一つ言えなかったのだ…娘として女としてやさしく言葉をかけることは、出来なかったのだ。とても簡単なことなのに、それは私にとって踏み絵のように困難だった。「俺をそんなに早く死なせたいのか」そう言われるのが怖くて、笑っていた。」(P194)

    父といっしょにいる時間で生じた“ずれ”がしずくの内面に広がり、仕事や私生活などの父がいない時間にも影響していく。このずれって何なんだろう。誰もが経験することなのに、マニュアルなんて見たことない。その原因は、当事者にとって日常が過ぎていくだけに過ぎないのに、ほんの少しだけど日常のわくから外れていくような、つまり、日常の姿はしてるけど、日常的じゃない日常の出現(わかりにくい言い回しだけど)なんだと思う。

    それを砂田さんは1つのたとえとして、「音のない花火」のエピソードで私たちに教えてくれる。花火っていう言葉を聞くと、体に響くほどの大きな音とともに夜空に美しく広がる情景が想像できる。
    でもこの本で出てくるのは、高層のオフィスビルの中から見る、窓越しの花火。本物で現実だけど音が遮断されて聞こえない花火は、目の前で起こってる実感がわかない。音のない花火とは、直接的に書いてないけど、父の病気のことを言い表したように思える。

    あと、花火もそうだけど、シーンの選び方が映像作家っぽいなとも思った。八重洲の裏路地にある小さなバー、葉山、神戸、人里離れた教会… まるでロケハンを重ねた結果、気にいった場所を厳選しましたって感じ。読んでいて気持ちいい。

    最後に映画未見の私から一言。朝日新聞2012年10月18日朝刊(大阪版)の「おやじのせなか」で著者の顔を写真で初めて見た。父の顔は、まあるいけど、可愛らしさとの対極(せつないってまで言われてる)として描かれる。でも彼女の写真は、その面影が感じられる、まあるくて愛嬌のあるかわいい女性に見えました。
    (2012/11/5)

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  • ジブリにしのび込んだ マミちゃんの冒険。
    映画『夢と狂気の王国』公式サイト
    http://yumetokyoki.com/

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    「これだけは言っておく。
    あなたは、不幸じゃない。
    ある日突然、末期ガンと宣告された父。
    その現実と、自分の気持ちに折り合いをつけられず悩む娘。
    実父の死に正面から取り組んだ話題のドキュメンタリー映画
    『エンディングノート』から生まれた、もうひとつの物語。

    あれから数十年が過ぎ、私にとって父は物理的にも精神的にも、
    手をつなぐ相手ではなくなった。それでもやっぱり、
    この人がいなくなるっていうのはちょっと想像がつかない。
    この人が消えちゃうなんて、笑えない冗談みたいだ。(本文より抜粋) 」

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