- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591126653
作品紹介・あらすじ
妻の乙美を亡くし気力を失ってしまった良平のもとへ、娘の百合子もまた傷心を抱え出戻ってきた。そこにやってきたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を伝えにきたのだった。
感想・レビュー・書評
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1年前あたりから私の中ではちょっぴりブームな作者さん。★も良かった初期の作品に行ってみる。
しかし、なんだな、歳を取るとこういう話に弱くて、最初のほうで妻(乙美)に先立たれた熱田が生きる気力もなくした姿を読むと、自分でもそうなってしまうだろうなと心が揺れる。
そこに、亡き妻から頼まれたという日焼けをした黄色い髪の女子(井本)が押しかけて、加えて、夫の不倫から離婚届を置いて家を出て来た娘(百合子)が戻ってきて…と始まる話。
『四十九日には明るくて楽しい大宴会みたいなのができればいいな』という乙美が遺した言葉に従って、井本と彼女が連れてきたブラジル人(ハルミ)にも後押しされ、熱田と百合子はゆるゆると動き出す。
乙美の生涯を綴る年表づくりの中で語られる熱田と乙美の、乙美と百合子の、それぞれの記憶のひとつひとつに、夫婦の愛、親子の愛について考えさせられ身に沁みる。
福祉施設でボランティアだった乙美に教えられたという井本やハルミの行動と、その仲間の人々の心情に、人としての情の深さを感じいる。
見合い話を断られて押しかけてきた乙美が熱田との出会いである夏祭りの豚まんの話を語る場面がとてもあたたかい。
四十九日の宴会に美佳がコロッケサンドを持ってきた場面は、冒頭の弁当の話につながって、通勤電車の中で読んでいたが、泣けてきて困った。(毎日早起きしてお弁当を作ってくれている配偶者に感謝)
井本とハルミの存在がファンタジーのように語られる終い方も話の落ち着け方としては良かった。
百合子の夫(浩之)と相手(亜由美)には我慢ならず、関わらなければよいのにとずっと思っていたので、よりが戻って良さげに終わったのが唯一不満。
物語としてはああ締めざるを得ないのかもしれないが、女癖ってのは簡単には直らないと思うぞ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
妻の乙美が亡くなってから、父良平の家はごみ屋敷のようになり、東京へ嫁いだ娘百合子は、心に傷を抱えて戻ってくる。
乙美がボランティアで絵手紙を教えていた福祉施設の生徒、黄色い髪の少女井本がいきなり熱田家を訪ねてきて、乙美が望んだ、四十九日の大宴会に向けての準備が始まる。
四十九日の間、一緒に過ごした良平と百合子。
良平が乙美と知り合った頃のことや、乙美の人物像がだんだんとわかるにつれて、切なさがこみ上げてきて、涙が出そうになった。
血のつながりはなくても、その人の人生について多くを知らなくても、百合子はずっと継母が好きだった。
乙美の人生、乙美のあしあと、暮らしのレシピ。
幸せな気持ちを作り出す何かを残してくれた乙母に感謝!
少し寂しくて、でも温かい気持ちになれるいいお話だった。-
イイネをありがとうございました。
この作品は大好きで、私的には『彼方の友へ』に匹敵するぐらいでした。
イイネをありがとうございました。
この作品は大好きで、私的には『彼方の友へ』に匹敵するぐらいでした。
2021/06/28 -
しずくさん。
この作品は、私にとって初伊吹さんです。
「彼方の友へ」も気になっていたので、コメントいただけて、とても嬉しいです♪
これからも...しずくさん。
この作品は、私にとって初伊吹さんです。
「彼方の友へ」も気になっていたので、コメントいただけて、とても嬉しいです♪
これからもよろしくお願いします。2021/06/28
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H30.6.25 読了。
・タイトルから勝手に食べ物の物語かなと思って読んでみたが、違っていた。乙美お母さんはふくよかで料理上手で明るくて愛情にあふれていてと書かれていて、昭和の良き母親を連想させてくれました。
乙美さんと良平さんの出会いの場面がとても素敵で印象的でした。井本やハルミもとても良い人たちで楽しく読むことができた作品です。最後まで読んでいくと、タイトルの意味もなるほどって分かると思います。
・「縁談は最近少しいただくんですけど。」「年寄りの世話が上手だろうとか、大家族の賄いがこなせるだろうとか、身寄りがないから我慢強いだろうとか。家族じゃなく、働き手を求めているみたい。贅沢を言ってはいけないけれど、でも私にもやっぱり夢があるんです。」
「好きとか愛とか、アイラブユーとか、そんな言葉はなくていいです。私がこしらえたものをおいしそうに食べてくれる人、それだけで充分に幸せです。」「働き手じゃなくて、好いてもらって妻に迎えられたんだって、自分に自信が持てます。」 -
乙美さんがどれほど愛情深く、優しく、素敵なお母さんだったのか、この物語を通じてひしひしと伝わってきました。
乙美母さんのレシピ集を引き継ぎ、夫と娘を支えてくれた井本とハルミとの別れのシーンでは、ついうるっときてしまいました。
井本の正体は結局はっきりとは分からずじまいでしたが、お父さんの考えの通りだと良いな…と思います。
人との別れは、いつ、どんなタイミングで起こりうるか分かりません。
もしかしたら、その日は急に訪れてしまうかもしれない。。
身近にいる大事な人には惜しまず感謝を伝えよう、そんな風に思われせてくれた作品です。 -
義母の突然の訃報から残された父娘の傷んだ心を義母が残した絆によって再生されていく様を優しく心地よい文章で描かれてます。
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人生の岐路に立った時に死んでしまった継母。
その母親の遺言どおり四十九日に大宴会を開こうとする。
手伝いに来てくれたイモちゃんやハルミ君。
互助施設のリボンハウスの皆。思い返せば苦労ばかりかけたけれど幸せだったかもしれない人生。
継母だけれど、乙母は本当に百合子の母親だったのだと思う。家族に恵まれず、境遇にも容姿にも恵まれなかった乙美だけれど、父親に会って、そして娘の百合子に会って報われた。
別れはいつも唐突で寂しいものだから、後悔のない生き方をしたい。そんな風に強く思った。
しかし彼女の残した「あしあと帳」読んでみたいですね。
ユーモラスな文章と可愛らしいイラストで綴られた物語はさぞ楽しく心躍るものでしょう。
最後に笑って去って行ったみんな。
また笑って出会えますように。 -
素晴らしい物語りで、読み終えて余韻に浸っています。出だしはお笑い系かと思いましたが、中身はずっしり。重苦しいテーマも時たま挿まれるのにトーンは暗くならず、1作前に読んだ不快な本とは異なり、どこからか温かな光が常に射し込んでいました。ご指摘が散見される回収しきれなかったエピソードは自分で勝手に解決しておきました。またこの著者の本は読もうと思います。
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読み始め…11.11.23
読み終わり…11.12.5
テレビドラマを初回だけ何気にほんの少し観ていました。それから続きを気にかけてはいたものの...とうとう一度も観ることはありませんでした。
後妻を亡くし気力を失っていた父の元に娘が出戻ってきます。そこに亡き妻(母)から頼まれていたという陽気な女の子が突然やってきて、四十九日までのお世話をすることになります。
妻(母)乙美は生前に作っていた食事のレシピや家事お掃除の秘訣などを絵つきのカードにして残していたということに、家族は死後になって初めて気づきます。そしてその底抜けに明るいレシピこそが、妻を亡くして失ってしまった夫の生きる力と娘夫婦のかけ違えてしまった生活に明るい光を灯してくれるという心温かな物語。
久々の号泣でした。電車の中でじゃなくてよかった。