([お]9-1)困ってるひと (ポプラ文庫)

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 1280
レビュー : 216
  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130216

作品紹介・あらすじ

15万部突破のベストセラー、より多くの「困ってるひと」に届けるため、異例の緊急文庫化!
難民を研究していた大学院生女子がある日突然原因不明の難病を発症。想像を絶する過酷な状況を、澄んだ視点と命がけのユーモアをもって描いた類い稀なエッセイ!

感想・レビュー・書評

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  • 賛否両論、あると思う。
    何故なら、ひとは経験が全てだと思うから。
    難病は治らないから『難病』と言う。
    耐え難い痛みの渦中、今にも心が折れてしまいそうなその苦しいなかで、まずはこの原稿を書き上げた彼女のパワーを讃美したい。

    一般的な風邪を引くとかその程度ならば、生まれてから死ぬまでに多かれ少なかれ、誰でも経験することだと思う。
    けれども大きく重い疾病となってくると、その人の言葉を聞いて想像まではしてみても、実際どう大変なのかは分からない。
    それが、目には見え難い障害だとしたらどうだろう?
    公共の交通機関などで優先席に座っていたとしたら、「お年寄りでもないのに、若いのに」と思わずに 居られるひとはどの位いるのだろう。

    ドクターとの係わり方もそれで、彼等も人間である以上、患者本人の気持ちを全て理解するなど出来ないと思う。
    先が見えず、暗闇の中見つけた一筋の光だけを頼りに、生きる力を懸命に出している彼女の姿。
    それを見極めることが出来なかったのは立場が違うから。
    仕方ない、けれども少しでもいいから分かって欲しい、分かろうとして貰いたい。
    この本は、持病を持っている人々のそんな心の叫びを代弁した作品だと思う。

    私自身、彼女の足元にも及ばないが、特定の医療受給者証を持っている。
    その病気が自分にとって、どう大変なのか説明しても理解を得るのは難しい。

    ただ、病気だけにとどまらずもっと個人に対してひとりひとりが目を向けるような世の中をまずは望んでしまう。
    血縁者でも、家族でも、『他人の心と身体を理解する』というのは本当に難しいのです。
    我ながら支離滅裂なレビューだけれど、日々生きていて心からそう思う。

  • 本書が賛否両論になるのがよくわかる。
    否として指摘されがちな「難であることをネガティブに捉えがち」やら「周囲への感謝がない」やら「闘病記なのに感謝がなくて感動できない」という意見には、所謂闘病ポルノを世間は求めているのだなあ、と言うサメザメとした感想をのみレスポンス。
    賛と指摘されがちな「大変であるはずなのに愉快に書かれていて素敵」的な意見には、ある日突如として自分の身体が自分の常識とかけ離れたところにワープすると、笑い飛ばして自虐することで自分を受け入れていくしかないからなあ...と理屈っぽい自己中気味な感想をレスポンス。
    そんな私が個人的に否だなあと思ったのは、病室内の生花持ち込み隠蔽工作エピソード。や、やめよう??下手したら大野さんも同室の患者も死ぬよ??? 非常に共感したのはステロイド使用開始直後の初恋類似のドキドキモード。これ、なかなか理解されにくいんだよねえ。
    とまあ、これだけ色々と感想を書きたくなるくらいには良い本だと思います。大野さんよりは難易度イージーな同世代難病女子より、長文感想でござんした。

  • ユーモアをめちゃくちゃコーティングしてくれてるおかげで、深刻すぎずに読めるけど、ものすごい難病だよこのひと!
    読後は、難病患者といえども自分の足で立つ必要がある(精神的に)こと、気持ちを強く持つって大切だけど大変なこと、に気づく。
    友情や医者との信頼関係が壊れていく章が切ないけど、真実はこの1000倍つらかったんだろうな。ほんとに、よくこんなにユーモア溢れる文章で綴れるな、著者の精神力に脱帽です。

  • 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    大野/更紗
    1984年、福島県生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒。上智大学大学院グローバルスタディーズ研究科地域研究専攻博士前期課程休学中。学部在学中にビルマ(ミャンマー)難民に出会い、民主化運動や人権問題に関心を抱き研究、NGOでの活動に没頭。大学院に進学した2008年、自己免疫疾患系の難病を発病する。1年間の検査期間、9か月間の入院治療を経て退院するまでを綴った『困ってるひと』で作家デビュー。2012年、第5回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」受賞

    とてつもなく困っている自分自身を綴った手記のようなもので、コミカルな文調で書かれているが、読んでいて時折涙が出てくる位悲惨で、良く生きていたと抱きしめてあげたい本です。自己免疫系の病気は自分ではどうしようもないものなので、完治は無く一生付き合っていかなければならない。それなのに世の中の福祉からは見捨てられたような存在で、難病を抱えて生きるのはまさにコンクリートジャングルをサバイバルするような物だと知りました。ほんのりとした恋の部分では本当に泣けました。また著書を読みたいと思います。

  • 難病に犯され、とにかく辛い、何度も諦めそうだけど、それでも絶望はしない。作者は明るく前向きに困難に立ち向かって行く。作者の感じた困ったこと、例えば書類の手続き、病の為に簡単な生活行動も困難なこと、などなどが正直に赤裸々にときおりギャグなんかも入って語られている。彼女の言うことは決して一時的な苦しさや困難から出たものではなく、他の人も頷くであろう共通の困ってること、不便さだ。根本的な解決は簡単には出来ない。絶対に。分かっているだけにこの理不尽さが悔しい。大学時代福祉を勉強してきたので、彼女の言うことはひとつひとつが全くその通りで正直で、それでも彼女のニーズがそう簡単に満たされるはずもないのがわかり、とにかくそういうことが胸に突き刺さりました。

  • 壮絶の一言。
    痛い、苦しい、辛いの嵐なのに中断出来ず、一気に読み切ってしまった。

    大学院生だった著者が自分の居場所を見つけて、夢中で追いかけるものも見つけて、多忙な日々を過ごしていたそんな時、いきなり動けなくなる。
    高熱と全身の痛みに耐えながら病院に行くも、診断は曖昧で治療の効果もない。
    そんな状態なのにタイに行ってしまう著者のパワーに驚きながらも「ダメだ、やめろ!」と内心で叫んでしまう。

    大野さんはパワフルな方だ、と思う。
    そしてすごくまっすぐな方だ。
    発病前はそのパワーはビルマ一直線だった。彼女の生きる道だった。
    発病後、体が動かなくなって、生き続けることにとんでもないパワーが必要になったけど、それは彼女を生かす力にはならなかった。
    恋をして、生きたいと思えるまでは。

    難病との闘い、社会制度との闘い、彼女を苦しめるものの数は多い。
    では、彼女を支えているものはなんだろう?と考えると、それは人だと気付く。
    「ここを最後にしよう」と決意して単独で乗り込んだ病院で受け入れてくれた医師、普段は離れて暮らす両親、日々の煩雑な手続きや雑用を手伝ってくれる友人、そして彼女に1番力をくれるDIY難病男子。

    この本を読んでいると、「人」の重要性を思い知らされる。
    ギリギリ崖っぷちにいる彼女の目を通すと医者も役所の職員も、誠実かどうか一瞬で見破られてしまう。
    彼女が誠実な人達に出会って、生きていることをとても嬉しく思う。
    そしてそういう「人」がもっと増えることを心から願う。

  • 大野さんの頭の回転の速さ、センスの良さ、キレが好き。
    難病にならなければ見えなかっただろう、手助けがなければ死に至るかもしれない当事者の気持ち。
    そして当事者ではなく、何かしてあげたいと感じる、助ける側の気持ち。
    ビルマ難民の研究をしていたからこそ、
    双方の視点を持つことになった。

    病気そのものだけではなく、それらに向き合った人の心理状況を、描き出している。

  • “その国の「本質」というのは、弱者のすがたにあらわれる。難病患者や病人にかぎった話ではない。あらゆる、弱い立場の姿に、あらわれる。”

    ビルマの難民問題に取り組んでいた大学院生が、ある日、国内でも数人の難病を発症、医療難民となって病院を転々とし、これでダメならもう死のうと思って受診した病院で入院、壮絶な闘病生活を送る。

    病名がわかるまでのただただ痛みに悶える生活と、何の病気か知るための痛みに耐える検査の数々。
    (麻酔注射も痛いというのだけは、実感をもってわかります。指先の簡単な手術の際に受けた麻酔注射が、私の人生最大の痛みでしたので。)
    何でもするよ、と言ってくれるも、徐々に疲弊してゆく友人ら、先行きの見えない不安、絶対的な孤独感。
    難病患者の前に壁のようにそびえる超複雑な福祉制度。

    「エクストリーム困ってるひと」。
    書類にうもれ、ステロイドの副作用と戦い、時に医師と対立し、時に絶望しながらも、何度も何度も立ち上がる。
    そんな彼女の姿に、自分を照らして、健康でいることへの感謝な気持ち、生きることへの前向きな気持ちがわいてくる人も多いと思う。

    実は、私は、途中までは一気に読んだのだけど、信頼して全部を預けているといいながら、このような一方的な本で、担当医師の悪口ともいえる出来事を全国発信するやり口はどうなんだとも思った。
    レビュー読んでいると、同じような感想をもつひといて、
    「まだ若いから感謝の気持ちがない」「自分自分の、自分本位」
    などとも言われている。なるほど、と思う。

    でも、ともう一度考えてみる。
    医師との関係は、双方向のもの。信頼しつつも、互いの言い分が生じるのは仕方のないこと。
    誰だって、自分自分になって当たり前だし、病気でいつまで生きれるかわからない状況では、もっと当たり前。
    「辛かったね、今までよく我慢したね」と絶望の淵から救い出し、
    「さすがにタイツ脱がせて診察するのは大変だ、ははは」という何気ない会話で絶望にたたき落とす。
    医師もひとりの人間で、気心知れた患者についての軽口くらい叩いて不思議はないけど、彼女にとっては世界のすべてで、その世界に否定されたかのような気持ちになるのもわかる。
    なんだろ、うまく言えないけど、そういうのひっくるめて、等身大の彼女で、ひとりの難病女子の体験で、そのまま受け入れて読めばよくて、批判や称賛をするものではないんだろうと思う。

    彼女は、誰かを批判したくて本を書いているのではない。
    ただ、難病だってなんだって、今生きてる!ことを伝えたい。
    読者は、今生きてる!ことを感じる。それでいい。

    日本では、ひとりの難病女子が「エクストリーム困ってるひと」として、今日も絶賛生存中。
    私も、ひとりの「リトル困ってるひと」として、絶賛生存中でありたい。

  • うら若き女性の難病闘病記です。毎日生きること自体が大変なんだけど、彼女の持つ洞察力、面白おかしい表現力で、読み手に苦しさを与えないどころか、おかしく楽しく読めます。ただ、ここに書かれていることは、結構シビアで、いかに日本が弱者に優しくなく、生きにくい国であるかということが書かれています。

    特に印象的だったのが、その国の素性は弱者の姿でわかるということ。お金持ちというのは、たいていどの国でも似たような生活を送っている(例:優しく聡明な妻、海外旅行等)。日本は豊かな国と言われているが、弱者に対してはどうか?補助が出るとは言え、重なる出費。そしてその補助を受けのに必要な膨大な書類の処理。

    最後の方は、担当医師への恨みつらみや文句が増えてきて、読者によっては、ちょっと違和感というかいやな感覚を持つかもしれません。最初、私もそう感じました、が、どちらかというと彼女の心情に近い気持ちを持ちました。医師は患者のことを永遠に理解できないとか言うのではないです。大前提、ゆるぎない事実として、医師は患者ではない。だから彼女が自分で引っ越しを決めたように、自分で自分の道を決める。お医者さんの言いなりではなくて、ということなんだと思います。

    彼女が恋をするところについては、こちらも読んでいて胸が切なくなりました。彼女は今も素敵な恋をしているかしら?一読者として、一女性として応援しています。

  •  とっても軽いノリなのに迫力があるエッセイ。
     この迫力は、全てが「べき論」ではなく、「リアルにどうすれば切り抜けられるか!」という切羽詰まった気持ちで書かれているからこそのものだと思う。
     筆者は、自分が生きることに余念が無いのだ。
     生きることに余念が無いなんて生き物として当たり前なのに、僕を含め多くの人は余念だらけで生きてるんだろうなぁ。
     人生には、余念だらけで全く問題無いほど楽な時期もある。 もしかして、一生、楽に生きられる人もいるかもしれない。 その一方で、一生、日々を生き抜くだけで精一杯の人もいるだろう。
     不平等なのだ。 でも、自分がどんなに「困ってる人」になっても、とにかく生きてゆくしかないのだ。 僕にそれができるだろうか? わからない。 その時にこの本が僕を勇気づけるだろうか? それもわからない。 結局、困っていない人が困ってる人のことを想像するのには限界があるのだ。

     筆者の始終アタフタとしている感じや、いつも自分のことを最優先に考えて行動したり愚痴をこぼしたりするところに違和感を感じる読者もいるかもしれない。 でもそれは、本を書くような「困ってる人」が、しばしば立派すぎるからだと思う。 常に周りへの感謝を忘れず、自分自信を深く知り、穏やかにふるまう強さを持つ・・・そんな立派な「困ってる人」なんて、ほんのひと握りのはず。
     この本は、立派になれない多くの「困ってる人」に「大変だよね。やってらんないよね。でも、がんばるしかないんだよね。」と、同じ「立派になれない困ってる人」ならではの優しい目線で語りかけている。

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