おもかげ復元師

著者 :
  • ポプラ社
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本棚登録 : 407
感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130377

作品紹介・あらすじ

なきがらに笑顔を戻し、遺族の深い悲しみを、生きていく力に変える。東日本大震災後、300人以上をボランティアで復元した女性納棺師が綴る、生と死のドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 笹原留似子さんは岩手県で会社の代表を務める納棺師の方。
    この本は納棺師というよりも遺体を復元する復元師としての活動記録と言ったところだろうか。

    東日本大震災でご自身も被災されたにも関わらず、自分にできる事はないだろうかと底をつきそうなガソリンを心配しながらも被害の甚大だった地域へ車を走らせる。
    遺体安置所を訪れた彼女は小さな小さな女の子の遺体と対面し、彼女を元に戻してあげたいと切望するが法的に叶わず。
    この悔しさが原動力となって彼女は復元ボランティアとして数百の遺体を復元することになる。

    凄まじい遺体の状態の記述を読むと、いかに震災の被害が甚大であったのか改めて思い知らされた。
    藻にまみれた髪の毛、砂がいっぱい詰まってしまった口、裂傷の激しい体・・・。
    笹原さん曰く、蛆虫の湧いてしまった遺体を復元するのは日本でも彼女一人きりだそう。
    通常なら諦めてしまう所を彼女は何時間もかけて丁寧に丁寧に復元して行く。
    本来の姿に戻して家族にお別れをしてもらいたいと言うのが彼女の思いなのだ。

    笹原さんの真摯な姿には胸を打たれ、ただただ頭が下がる。
    自らも家族を持ちながら昼夜を惜しんで活動された笹原さん。
    それに引き換え・・・、と自らを省みる。
    今からでも出来る事はないだろうか。
    もう一度考えてみる時期なのかもしれない。

    • 円軌道の外さん

      はじめまして(^O^)
      フォローありがとうございました!

      自分は阪神淡路大震災で被災した経験があるので、
      東日本大震災が起きた...

      はじめまして(^O^)
      フォローありがとうございました!

      自分は阪神淡路大震災で被災した経験があるので、
      東日本大震災が起きた時も
      いても立ってもおられず
      会社のトラックで
      福島や宮城に出向き、
      壊れた家の泥やガラ出しや
      思い出の詰まった写真の復元などの
      ボランティア活動を2ヶ月間してました。



      いまだに家に帰れない人や
      大切な人を亡くし
      途方に暮れている人。

      そんな人たちがいる限り、
      その場しのぎではない
      継続的支援を意識して続けていかなきゃですよね。



      大切な人とご飯を食べ、
      好きなものと過ごし
      自然に笑える、

      そんな当たり前の日常が
      1日でも早く戻りますように。



      素晴らしいレビュー読ませてもらって
      自分ができる音楽や
      ボクシングで、
      これからもできることを
      自分なりに示していかなきゃって
      改めて思いました。

      今後とも
      よろしくお願いします(^_^)v

      コメントやお気に入りポチ頂ければ
      必ずお返しに参ります!


      2013/04/09
    • vilureefさん
      円軌道の外さん、こんにちは。

      ご丁寧なコメントと、たくさんの花丸をありがとうございます♪
      円軌道の外さんのことは以前から気になっては...
      円軌道の外さん、こんにちは。

      ご丁寧なコメントと、たくさんの花丸をありがとうございます♪
      円軌道の外さんのことは以前から気になってはいましたが、いよいよフォローさせていただきます。
      よろしくお願いします。

      そうですか、ボランティアされていたのですね。現場に行かれた方がこの本を読むとまた違った思いを持つのかも知れませんね。

      全然話は変わりますが、私も角田さんの大ファンです。円軌道の外さんの「空の拳」のレビュー読みたいです!
      お待ちしております(^_-)-☆
      2013/04/10
  • とにかく心が痛い。涙なしには読めない話ばかりです。
    でも、ここに記された大切な方々を亡くされた人の痛みを思えば
    読むばかりのこちらがそう簡単に滂沱の涙にくれてはいけないと
    いう気もちにもさせられます。それ程壮絶です。

    この著者の方は仏様でしょうか。
    誰にでも出来る仕事ではない、どころか他にここまで出来る人が
    いるだろうかという気持ちにさせられます。
    まだ現在40歳。この若さでどうしてこの仕事をしようと思ったのか。
    続けてこられたのか。もっとこの著者の方自身の物語りも知りたいと
    思いました。

    そして震災から1年半を過ぎた今、これからどんどんあの出来事が、
    過去のことになっていくからこそやっていかなければいけないことが
    私たちにもあるのではないかと考えさせられました。

  • 読みながら何度涙をこらえたかわかりません。

    復元納棺師として、故人のおもかげを復元して、生前の姿に近付けてあげる著者。
    東日本大震災では津波の被害にあって、損傷の激しい亡骸を元の元気な姿にするボランティアをされていました。

    おもかげがなくなって、死を受け入れられない家族に、復元をしてあげて、「お父さんだ!」と家族みんなが泣き出した話を始め、納棺師としての話から復元ボランティアの話までが書かれています。

    短編集で軽すぎると評する人もいるようですが、児童書も出しているポプラ社だけに、中高生にも読みやすいという点でよいと思います。

  • 笹原さんが亡くなった方の顔にそっと触れて。心をこめてマッサージをして紅をさすとき、きっとそこに命への希望の灯がともる。
    亡くなった身体の冷たさは、残された家族に非情な現実を突きつける。心の整理のできていない状態で触れるその冷たさに、言いようのない拒絶を感じてしまう。
    笹原さんの手が温めたその頬は、残された人間の心に赦しを与えてくれる。神の手なのだ、きっと。
    被災地から遠く離れていたとしても、何も被害を受けていなかったとしても、今、この瞬間ここに生きている人間として、私たちはやはりあの日を忘れてはいけない。

  • 数年前に父を亡くした時も、先月の祖母の死の際も、泣かなかったし遺体に触れもしなかった。
    だけど、隣のおばちゃんの葬儀では涙が出てきた。
    多分私は、身内の死を受け入れたくなくて、きちんと向き合えていないんだろう。

    著者の笹原さんは、「復元」を通じて、遺族を大切な人の死に向き合わせてくれています。
    後半の復元ボランティアについても凄まじい内容ですが、前半の色んなエピソードから読み取れる、笹原さんのカウンセラーとしての役割が非常に素晴らしいと思います。

    小さな子供でも、大好きな人の死をしっかりと受け止めているのに、シャンとしろよ、俺!

  • 涙がぼろぼろと止まらなかった。
    生あるもの必ず死は訪れるものだが、旅立つときに旅立つ側と見送る側が死を受け入れてはじめて美しい別れとなる。
    死を認めたくないながらも、思い出を噛みしめて目一杯悲しみ、死を受け入れ、明日へ向かっていく。その別れの場を創るために尽力する納棺師という仕事に頭が下がった。
    本書はそんな納棺師である筆者の純粋なまでに相手を思う気持ちが痛いほど感じられるエピソードばかりだった。筆者のどんな状況でも相手を思いやる気持ち、しかも無為自然に行う姿勢、本当にすごいことだと思った。そんな筆者だからこそ、多くの人の心の掛け橋になれたのだろうなと思った。
    とはいえ、時には心が折れそうになる筆者もいて、そんな彼女を支える周囲の思いやりもまた心が温まった。人のつながりってほんとに素敵だと感じられる良本だった。
    どの話も胸が締め付けられながらも感動するものばかりであったが、終章で筆者に優しく声をかけたおばあちゃんの話は何とも言えないぐらい感動した。人ってどんな窮地にいても他者へ優しくできるんだな。
    是非たくさんの人に読んでもらいたい。

  • 本当に素晴らしい本に出会えました。
    おもかげ復元師 笹原留似子さんという
    心やさしく、立派な方の存在を知ることができ
    そのご活躍の様子や笹原さんを通して震災のすざましい現実と
    多くの人の命が奪われたこと。
    死とどう向き合っていくのか?
    そして、いかに生きていくべきなのか考えさせられました。
    大切な大切な人との別れの時、わたしもしっかり見送りたいと思いました。
    笹原さんのような方に見送っていただけるといいなと思いました。
    それがかなわなくても、この本に出会えたことで
    いいお別れができそうです。

  • 読み手にも配慮されて、やさしい文章です。読むたびに、優しさや愛情や苦しみに涙しました。読んで良かった。
    遺体と向き合えることは大切ですね。いつか来たるときには、最後にきちんとお別れが出来ますように。

  • 亡くなった人と残された人がちゃんと向き合うことができるように、
    遺体の損傷や死後の現象をケアをされている筆者。
    東日本大震災の時は、ボランティアで寝る間も惜しむほどのケアをされていたそうです。

    記述されていること自体もとても感動的なエピソードばかりなのですが、
    それにも増して筆者の優しさに心を動かされます。

  • 笹原さんの存在はこの本で初めて知りました。ただの?納棺師ではなく、お体を元気だった時の状態に戻して差し上げるという、素晴らしいお仕事をされてます。東日本大震災の時も、現地入りされて、ご自分の本業はおいてボランティアとして、復元をされておられたとのことで、感銘を受けた方が全国にいたことも初めて知りました。知らなかった自分を恥じるくらいの気持ちです。震災時の被災された方々の胸の内も綴られていて、想像を絶する状態も伝わってきました。多くの方に読んでいただきたい1冊です。

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