- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591130421
感想・レビュー・書評
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ポプラ文庫の新聞広告を見て、何だか良さげな雰囲気だったので買ってみた。
作者が映画監督であることも、その取材の過程で集めた話が元であることも後で知った。
僻地医療を題材にしたとあるけれど、医療の描かれ方には濃淡あり、むしろそれに纏わる人のあり様を色んなテイストで描く。
澱んだ田舎の日常や老人たちの臭いが立ち上ってくる話があれば、専業主婦となった元看護師の日常の歪みを描いたり、医師の父を軸に夫々の道を歩いた兄弟の話になったり、変幻自在、ある種、捉えどころのない短編集。
読み終わってみたら、巻頭の、村からバスで町の塾に通う小学生のお話が、医療の色は最も薄いけど、一番物語物語していて良かったかなと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ディア・ドクターだけは良かった。あとはどうでも良い感じ。
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短編集。
一番最初の話以外は医療関係が絡んでいて、そういえば私は医療関係の話が好きではないんだった…と思いながら読み進めてなんとか読了。「ノミの愛情」は看護師だった妻目線の話で、少しシニカルな内容が面白かった。
映画『ディア・ドクター』の原作になった話も入っており、これは映画も見てみたくなった。 -
第141回直木賞候補作。
これもなるほど候補作w
映画監督、脚本家でもある著者が、僻地の医療をテーマに取材し、「映画の時間軸では語りきれなかった」ものを小説化。
慣れたり飽きたりした上に積み重ねていける奴もいるんだよ。
病やその治療とともに生きる厳しい日常。
だれにだって訪れる。
神様なんていないって、私は知っている。 -
僻地に勤務したお医者さんの話が主体。
どれもなかなかおもしろかった。
もしかしたら、前の話に出てた人がこの人で、とか連作短編集になってるのか? と思ったけど違いましたね。 -
西川監督の小説。やっぱりいい脚本を書く人は文章も素晴らしい。この人の書く人間、特に兄弟は格別に生々しい。
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若干映画作家の余技的な臭いのする短編集だが上々の出来か。
舞台が現代であることを除けば、一昔前(と言っても昭和です)の或る小説家の短編集と言っても通用するんでは?
人間の内面の暗さ及びそこから来る人間関係の微妙な緊張感の描写、個人的にはこの映画作家の感性を高く評価しておりますが、この短編集もその才能の発現の一つでしょう。 -
別に自分がしなくても誰かがやってくれる。自分が手を上げなくても責められるわけではない。黙っていても誰かから文句を言われることはない。そういうことはたくさんあると思うが、しかし向かって歩きだしてしまうのは人は人の中で生きる生き物である証左だと思う。
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人の卑屈な感情が、巡り巡って救ってくれる。
そんな小さな奇跡の話。
たとえば、自分にしか見せない姿を好きだとも思えなくなってしまった時に自分を認めてくれる言葉を言われたとき。
本当に愛してるからこそ死んでほしいし、生きてほしいと相反する願いを心にもつとき。 -
僻地の医療をテーマにした短編集。
外では立派な医者、家の中ではダメ亭主である夫と、その夫を支える元看護師の妻を描いた「ノミの愛情」が印象深い。どこかで完璧だと、その綻びがどこかに出る、そしてその綻びによる被害を誰かが受けることになるのだ。
先日両親の実家に帰ったばかりだからつくづく思うのだけど、田舎の方がより"生"とか"死"、特に"死"を意識せざるを得ない環境にある。そんな僻地に勤める現実の医者は、やはり思うところがたくさんあるんだろうな。