(P[に]2-5)刺のある樹 仁木兄妹の事件簿 (ポプラ文庫ピュアフル)

著者 :
  • ポプラ社 (2012年9月5日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130780

作品紹介・あらすじ

ミステリマニアの仁木雄太郎、悦子兄妹の下宿に、ひとりの紳士が相談に訪れた。このところ不可解な出来事に次々と見舞われ、命を狙われているのではないかと脅えているらしい。ふたりが調査に乗り出した矢先、紳士の妻が何者かに絞殺されるという事件が起き…。息もつかせぬ展開、二転三転する推理合戦の行方は?「日本のクリスティ」と呼ばれた著者による好評シリーズ第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 仁木兄妹の長編物。
    いつもの同じ他人の家に間借りする兄妹のところに、命を狙われているという依頼主が来て、という出たし。
    作者らしい観察と人間関係の意地悪さはあるとしても、やたらセリフが長い、渡鬼かと思うぐらい長い。
    古い作品だからもあるけれど、これって、だよねぇ、やっぱりが続き、結末もあって2時間サスペンスを見た感覚。

  • 1961(昭和36)年の発表作。長編第3作目。
    任意の時刻まで被害者が生きていたようにみせるトリックって、「犯行推定時間に完璧なアリバイのある奴が怪しい」。もちろんそうだけど、それ以前に「そんな仕掛けの(機会的/技術的に)できる奴が限定されてくる」場合もあるんだったわー。

    巻末の作品ノートにあるんだけど、この小説、河出書房の長編推理小説全集の公募に当選したのに、倒産して返却された作品だったとか。名編集者・坂本一亀(坂本龍一の父親)の推敲がガッツリ入っていたそう。更にその後、審査員だった江戸川乱歩から速達が来て、乱歩賞への応募を勧められたという。すごくないっすか?

  • 面白かった。仁木作品を読むたびに、物の値段や社会風俗の描写などではやはり時代を感じるんだけど、それはそれとして、文体がみずみずしく、悦子も雄太郎も自然な人間らしい感情を発露させ、古臭い、かび臭いような感じが全然しないことに驚く。

    「誰かに命を狙われている」と警察に訴えた男が、相手にされずに仁木雄太郎を紹介され、水原家の温室で話を始めるところから物語がスタートする。
    スタートしたと思いきや、一緒に命を狙われている依頼者の細君が、登場する間もなく殺される。物語の展開の速いこと速いこと!
    行きつく間もなく推理また推理で、本当に面白かった。

    そして、やっぱり、フェア。真相はフェアに明かされ、そして、罰されるところまでは描写されない。本当の動機は明らかにされない。ただ、雄太郎がこうだろうと悦子に示すのみ。これもまた、兄妹探偵ものであるからこその幕引きなのかなと思った。

    仁木兄妹、ほんとうにいいなあ。好きだな。

  • 誰かに狙われているらしい裕福な夫婦。その夫の依頼を受けて仁木兄妹が事件解決に乗り出す。
    仁木作品は、ファッションや生活を女性ならではの視点で描くことでほのぼのとした感じを抱かせるけれど、事件やその動機は暗くてエグいという点があり、この作品もそれに漏れない後味の悪さでした。ぼんくら面の下に隠れた卑劣な精神。難病で外出がままならなかった作者が実生活のどこかでそんなものに触れることがあったのかと想像してしまいます。
    作者がどんなふうにミステリを読んできたかの一端が書かれているあとがきも楽しめました。

  • 何度目かの再読。初めて読んだのはいつだろう。理由は分からないけど、なぜか実家の本棚にあって、夢中になって読んだ記憶がある。

    やっぱり面白い。すっきりー。ほかの作品もそうだけど、伏線の回収の仕方が見事。

    そういえば、この本のおかげでサーモスタットの存在を知ったんだよなあ。

  • 仁木さんの小説は、この仁木兄妹ものしか読んだことがないという前提があってのことですが。
    殺人事件が起きている。そしてその犯人の犯行に至った動機は素直に同情できるようなものではないと思う。だけれど、読後に不快感を感じたりもやもやしたり、そういうことをあまり思わないというのは、登場人物が皆、どこかしら生々しいからなのかな。ここに登場する「悪人」は、純粋に悪というわけではなく、それまではひねたり妬んだりしたとしてもあくまで一市民だ。そして探偵側も完全な「善」の人ではない。殺人事件かしらとわくわくしたり、巻き込まれたり、落ち込んだり。彼らは決して完璧ではない。
    誰もが大なり小なり裏表の二面性を持ち合わせている。
    その欠けた部分が、愛しく、彼らの生を感じさせてくれる。

  • 2012年9月14日購入。

  • 昭和の匂いがする大好きなシリーズ。
    今まで気づかなかったけど、大団円のシーンの雄太郎はなんだかちょっと伊集院大介みたいだな。そういえばルックスも近いか。

  • 仁木兄妹シリーズ

    何者かに命をねらわれていると相談にやってきた尾永益治。車でひかれかけ家の中をのぞかれたとの話。仁木兄妹の家を訪問中に殺害された尾永の妻・多満子。多満子の妹・比那子と友人で同居中の雪江。死の直前まで使用されていたミシン。雪江が秘密で通っていた自動車教習所。終戦直前に尾永の陰謀で前線に送られた梨森。梨森の行方を追う仁木兄妹。尾永の秘密を握った比那子。仁木兄妹と会話中に何者かに毒殺された尾永。

  • 兄の雄太郎が探偵役として、妹の悦子がワトソン役として活躍する仁木兄妹のシリーズ。

    「命を狙われているかもしれない」という紳士の相談を仁木兄妹が受けることから事件が始まります。
    ひとつの屋敷を舞台に起こる殺人事件、傷害事件。疑惑の家族。謎の男。
    怪しい雰囲気の漂う本格ミステリーですが、相変わらず仁木兄妹が仲睦まじくて良いです。

    事件のトリックはおもしろいですが推理のしようがない上にわたしには難しかったです。謎解きはあっさりしていていまいちインパクトに欠けました。
    しかしやたらと怪しい人物が登場するミスリードと、兄妹があっちこっちと動き回るのは楽しい。
    次々と新たな証言やら証拠やらが出てきてテンポ良く二転三転していきました。

    それにしてもこの兄妹は魅力的です。冷静で頭が切れるがのほほんとした兄はかっこいいし、お転婆でしっかり者の妹は可愛らしい。
    冒頭でサボテンをいじっている二人のやり取りは微笑ましかったです。
    殺人事件を扱ったミステリー小説でドロドロとし人間関係、ラストも決して後味は良くないですし作者の厳しさも見えるものの、この兄妹は読んでいて温かい気持ちになります。

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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