ダイナー (ポプラ文庫)

著者 :
  • ポプラ社
3.86
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本棚登録 : 2011
レビュー : 303
  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591131176

作品紹介・あらすじ

ほんの出来心から携帯闇サイトのバイトに手を出したオオバカナコは、凄惨な拷問に遭遇したあげく、会員制のダイナーに使い捨てのウェイトレスとして売られてしまう。そこは、プロの殺し屋たちが束の間の憩いを求めて集う食堂だった-ある日突然落ちた、奈落でのお話。

感想・レビュー・書評

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  • 高額報酬につられ、軽い気持ちで闇サイトの「リスクあり」の仕事に手を出したオオバカナコ。結果、報酬を手にするどころか拉致され、殺されそうになるが、すんでのところで買い手がつき、殺し屋御用達レストランでウェイトレスをすることに。

    なにせ客は皆プロの殺し屋、コックももちろん殺し屋、ウェイトレスは次々潰され人手が足りないのだ…。

    ダイヤモンドで濾過された最高級の酒、ディーヴァ・ウォッカ(1億超え)を人質に、カナコは命の応酬を始める。ヤバい客揃いのダイナー、明日の命の保証もないが労働価値に応じた賄いが付く。子供から老人、ジャン・パトゥの香水を纏った美女に犬…集う奴らは皆いかれている。

    拷問シーンのエグさ、死体のグロテスクさ…顔が引きつるのに、ボンベロが作り出すハンバーガーやデザートには食欲をそそられ…。本能的な部分を揺さぶる作戦か。著者の他の作品も読んでみたい。

  • 人がズタズタに殺されるのを目の前で見たことは無いし、殺し屋の幼稚園レベルの常識なんてものは私は知らないけれど、注射待ちのあの嫌な感じや母の嗚咽は知っているし、借金で首が回らなくなったのは私の父だ。
    ダイナーの世界は普段の生活からは程遠いような残虐さがあるけれど、どこか自分と隣り合わせのような気がして、もしかすると片足をそちら側に突っ込んでいるのではないか...と思えてしまう。読んでいると何かの拍子でぐっと脚を引っ張られて、ズブズブと落ち続けていくようだ。
    ダイナーは私が全く知らない部分と分かりすぎる部分とでできていて、それがあまりに極端すぎるからなのか小説を読み進めていくにつれ、登場人物たちのなかで「私」の境界線が曖昧になっていく。そしてどこからどこまでが私が知っていて知らなかったことなのか分からなくなって、体験するのだ。月並みの感想だがエンターテインメントというのはきっとそういうものがいいんだな、と思う。リアルとフィクションの匙加減が絶妙であればあるほど、その世界にのめり込むことができる。

    正気じゃやっていけないような生活のなかで、どうにか帳尻を合わせて生きていくためにスイーツを食べすぎたりバカみたいに買い物をしたり、クスリをやったり人形や子供の目を抉ったりして生きているのだろう、彼らも私たちも。
    彼らと私は似ているけれど私の人生が濃縮還元100%のオレンジジュースだとしたら彼らの人生はその原液のようである。

  • 風邪に悩まされ、体調が芳しくない状態にも関わらず、すらすらと文字が頭の中に入ってきて、文章に引き込まれました。
    久し振りの一気読みです。
    こういった本に出会えるから、小説を読むのを止められないんだなあ〜と、しみじみと思いました。とても面白かったです。

  • 殺し屋御用達の店で働くことになった女性の成長譚ですが、話のなかに色々な要素が盛り込まれています。特に流石平山夢明だけあってグロテスクな描写はピカイチです。
    飽きない、まさにジェットコースターのような展開で一気に読みきってしまいました。
    出てくる料理がどれも物凄く美味しそう!おなかがへります。
    最後ちょっと切ないのもまたいいです。とても面白い本でした。

  • 高給に釣られて闇サイトの仕事に飛びついたオオバカナコ。
    まともな仕事ではない上、仕事は失敗、逆に拉致されてしまう。
    埋められる寸前にオークションで買い手がつき、命だけは取りあえず救われる。

    買われた先は定食屋(DINER)。
    ところがこのダイナーは会員制。
    それも殺し屋専門。

    常識が通じない、それぞれがそれぞれの流儀で生きてる。
    一触即発の連続、オオバカナコは生き残れる?

    "生"を繋ぐべく食す場所ダイナー
    "生"を断ち切る事を営む人間達が客。
    ある意味、二律背反。
    だからこその狂気、侠気、凶気、ついでに猟奇。

    ノワールといえばノワール。
    キャラ立ちし過ぎな殺し屋の面々。
    暴力につぐ暴力。
    殺戮、暴行シーンの連続
    しかし、全く食傷気味にならない(dinerなのに)。
    緻密でスピード感ある描写に圧倒されまくり。

    ホラーな部分、ミステリーな部分、そして成長譚であって、恋愛も。
    500ページを越えるボリュームを一気読みさせたのはジャンルを超越したエンターテーメント性だと思う。

  • 非常に嫌悪感を感じさせる導入なのに、読み進めるにあたって極限状態の中の主人公とダイナーの主人の愛を感じる。これは恋愛小説だ。
    狂人の中に、普通の人間が入ったときに感じる違和感と魅力。それまでにあったことのない普通の心を持った人間が、生きのびるために必死であることに対し、客は全てあっさりと人を殺す倫理観の違いが、主人公を主人公たるものにしている。
    登場人物の表現自体はグロテスクだし、血なまぐさい話が8割だが、それでも救いがどこかにある。皆、許しを求め、このダイナーに集まる。簡単に人を殺傷する人たちが、自分が生きるための食事を楽しくとる様は、非常に現実的だ。殺し屋達は殺し屋達の悩みを持ち、正常な感覚を持つ人間は特異であるが、皆、本当は平穏な生活を求めている。
    原因があって結果が生まれるのだけれども、ただ生き延びるために努力する主人公はぎりぎりの状態でも最善を尽くす。
    まるで「セーラー服と機関銃」のような倒錯感をもちながら、周りの生き物(人間と犬)に生殺与奪をもたれなが主人公は生かされ、そして生きる意味を知る。
    最後は、野生の証明のようなクライマックスを迎えるが、それでもわずかな救いが生まれる。まぁ一人称で始まる小説は生き残ることが多いのだけれど。
    殺傷の表現が多いので★を一つ減らしたが、それでも揺れ動く人間の心の機微を描くのに成功している。
    ただ、この本、注意して読まなくてはいけないのは読む場所だ。絶対に飲食店では読むべきではない。吉本ばななのキッチンは台所でよめるけれど、このダイナーは、絶対に飲食店で読むものではない。(僕は読んだけど)読む場所を選択させるこの本。名著といって差し支えないのではないだろうか?グロイけど、なぜか生きる執着心が感じられる作家の世界観は非常に魅力的で、中毒性をもたせる。
    好き嫌いがはっきりするけれど、読み勧める読書としては非常に高いレベルで構成されている稀有な一冊。

  • "一気読み。
    初めて暴力を受けた経験がある人はわかると思うが、アドレナリンが噴き出て体がとっさに動くが、喧騒が終わった後、手が震えたり足がすくんだりするもの。
    本を読んで、その感覚がよみがえってくる。
    平山さんの本を読むと、読書をしているだけなのに体があたかも主人公とともに現場にいるような反応をする。もう無理、こんな話についていけない。と思いつつページをめくらずにはいられない中毒性がある。
    大藪晴彦賞
    日本冒険小説協会大賞
    2つの賞を受賞している文句なしの傑作。"

  •  「ホラー小説の人」だという認識をしていたが、本作はホラーではなくノワールだ。それも、馳星周の諸作などとはまったく異質な、斬新このうえないノワール。第28回日本冒険小説協会大賞受賞作でもある。

     人生に疲れたOLの主人公・オオバカナコが、ふと魔が差して手を出した、携帯闇サイトで探した危ないバイト。その失敗から犯罪組織に拉致られ、プロの殺し屋専門の会員制ダイナーでウェイトレスとして働かされる羽目になる。怪物のような殺し屋たちばかりが客としてやってくるその店では、ささいなことでウェイトレスは命を落とし、長続きしない。

     だが、冴えない普通の女だったカナコは、毎日が修羅場のそのダイナーで働くうち、少しずつたくましさを増していく。
     次から次へと事件が起こり、日替わりのように客が死ぬ恐怖のダイナーで、カナコは生き残って娑婆に戻ることができるのか……。

     ……と、いうような話。思いっきり荒唐無稽な設定ではあるが、テンポのよい展開とキャラの立たせ方のうまさでグイグイ読者を引っぱり、リアリティのなさが少しも気にならない。
     ダイナーの店長で自らも元殺し屋である副主人公・ボンベロが魅力的だし、店にやってくる殺し屋たちは全員キャラが立っている。

     たとえば、美貌の女殺し屋・炎眉(えんび)。彼女はカナコに、「あなた、生きたまま自分の腸で首を絞められるのがどんなに辛いかわかる?」などとゾッとすることを言ったりする。そして、彼女の爪には「ダマスカス鋼をベースにした合金で作られた極薄の剃刀が仕込まれて」おり、ピアスには「合金製のワイヤーソーが仕込まれている」。

     意外なことにエロ要素は皆無に等しい作品だが、そのかわり、グロ要素とバイオレンスはてんこ盛り。スタイルはノワールだが、キャラの立ちかげんと暴力シーンのアイデアの豊富さは、むしろ山田風太郎の忍法帖シリーズを彷彿とさせる。

     セリフも魅力的だ。どぎついカッコよさ満点の名セリフが、随所にちりばめられている。たとえば――。

    《「せいぜい気をつけることだ。今日も客がやってくる。客のなかには気に入らなくておまえを殺そうとする奴もいれば、気に入ったから殺そうとする奴もいるだろう」》

    《「死体に重りをつけて捨てるのは素人だ。プロは魚が通れる程度の隙間のある金網に入れる。網なら潮の影響も受けにくいし、腐敗ガスが充満しても浮かび上がることもない。身は魚が綺麗に骨にしてくれるし、網が錆びて壊れる頃には骨も崩れて跡形もない」》

     かなり読者を選ぶ作品だが、暴力描写に免疫がある人ならまちがいなく楽しめるノンストップ・エンタテインメントだ。グロ描写が多いわりに、読後感は意外にさわやかだし、感動もある。

  • 殺し屋が集うダイナーのウェイトレスとして買われたカナコと客との日常を描くエンタメ系。
    グロテスクな表現が多いが、爽快感を得られる。
    サクサクと読める。
    最後のボンベロとの別れが胸をうった。

  • 知人に「面白すぎて一気に読んでしまった本があるから、是非読んでみてよ」と言われ、購入。

    平凡な女性が、軽い気持ちで応募した闇バイトで失態を犯し、なんだかんだあって殺し屋の集うダイナーのウェイトレスになる。
    というぶっ飛んだ話。

    プロローグの時点で、残酷でグロい描写より主人公の頭の悪さに嫌気が差し、一旦読むのを辞めた。
    「本当に面白いのかなぁ」と不安になりつつも、約1ヶ月放置してから続きを読み始めた。
    そしたら一気に最後まで読んでしまった。
    521Pという普通の文庫本より分厚いのにも関わらず。

    しかし、面白いかというと疑問が残る。
    人を選ぶ物語だというのは間違いない。
    出てくる全てが非現実的だし、登場人物は多いのに、誰にも感情移入が出来ない。
    ひたすらに痛く、グロく、美味しく、莫迦で、嘔吐。
    話も矛盾が多く、唐突だったり、伏線は全く回収されなかったりで、ラスト周辺は頭にクエスチョンマークが付いたまま、まるで濁流に飲み込まれたかのように流され、気付いたら川のほとりで寝ていた。といった感じだった。
    じゃあ、つまらない話だったのかというと、そうではなく、この感想はどう伝えて良いものか難しい。

    ただ、滅茶苦茶なグロシーンの合間に、美味しそうな料理が出てきて、またすぐに嘔吐の酸っぱい感じが出てきて、誰かが死んで、また美味しそうなシーン……
    と繰り返されるのに何も違和感を抱かないのは凄い。
    この異常な世界観に一瞬で溶け込んでしまう。
    『頭を空っぽにして読める作品』
    というのが、絞り出した自分の答え……かな。

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著者プロフィール

ひらやま・ゆめあき
1961年、神奈川県生まれ。デルモンテ平山名義で、映画・ビデオ批評から執筆活動をスタートし、1996年、『SINKER―沈むもの』で小説家としてデビュー。2006年、短編「独白するユニバーサル横メルカトル」で、第59回日本推理作家協会賞を受賞。また、同作を表題作とした短編集は、2007年版「このミステリーがすごい!」で1位を獲得。2010年、『ダイナー』で第31回吉川英治文学新人賞候補、第28回日本冒険小説協会大賞、翌2011年に第13回大藪春彦賞を受賞。近著に『或るろくでなしの死』『暗くて静かでロックな娘(チャンネー)』『こめかみ草紙 歪み』『デブを捨てに』『ヤギより上、猿より下』などがある。

「2017年 『大江戸怪談どたんばたん(土壇場譚) 魂豆腐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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