ダイナー (ポプラ文庫)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 441
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  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591131176

作品紹介・あらすじ

ほんの出来心から携帯闇サイトのバイトに手を出したオオバカナコは、凄惨な拷問に遭遇したあげく、会員制のダイナーに使い捨てのウェイトレスとして売られてしまう。そこは、プロの殺し屋たちが束の間の憩いを求めて集う食堂だった-ある日突然落ちた、奈落でのお話。

感想・レビュー・書評

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  •  平山夢明さん初読です。平山さんといえば、代表作として本作が直ぐに挙げられ、(グロいのも承知の上ですが)以前から気になっていました。
     
     物語は、出来心から闇バイトに手を出し、身一つで殺し屋専用の会員制ダイナー(定食屋)に売られ、強制的にウエイトレスをするはめになった、オオバカナコ(ん?大莫迦な子?)が主軸で展開されます。

     ホラーとはいえ、殺し屋たちの暴力・殺人の描写が生々しく、グロさを前面に出しドン引きするほど強烈な世界です。まるで"鬼滅の上弦の鬼"みたいです。なんでも、殺害描写が誇張・露骨に表現されるジャンルがスプラッタホラーだって?(へぇー)
     読み進めると感覚がマヒし、心臓はヒマに?なりそうです。これに慣れて癖になったらヤバいんじゃないか、と自分が心配になります。

     ただこのダイナーは、一触即発で危険な店だけでなく、店主の元殺し屋ボンベロが絶品料理を提供するのでした。特に「究極の六倍」というハンバーガーは、味覚や温度も伝わるような描写で、思わずゴクリと喉が鳴る思いです。
     この甘美なまでの料理と残虐な描写の対比が際立ちます。この辺の、生と死の共存が両立している本書の世界が、単なるグロテスク小説ではない裏付けになっている気がしました。

     殺し屋の巣窟で、命懸けの仕事をするオオバカナコは、"大莫迦な子"ではありませんでした。過酷な状況下でも店主や殺し屋たちと交流を図り、成長していく物語でもありました。
     勇気のある方はご一読を‥‥

  • 元殺し屋シェフが営む殺し屋だけが集う会員制ダイナーで、命を懸けてウエイトレスになった女性の物語。

    表紙と内容のギャップたるやいなや。

    グロテスクな描写が多分に含まれているが、総じてエンターテインメントショーの印象が強いのでストーリーがしっかり伝わって楽しめた作品だった。

  • 大型書店で「カリ・モーラ」と一緒に買った。玉城ティナの物憂げというか空虚な表情のウェイトレス姿のカバーに思わず手が伸びてしまった。
    「カリ・モーラ」とは図らずもグロさ対決となってしまったが、圧倒的に「ダイナー」に軍配。

    分厚い文庫本だったけど、一気に読めた。
    面白い。ストーリーは予測可能なほどありふれたもの。
    しかし、残虐シーンとおいしそうな料理の描写がハンパでない。これが交互にくる。猛烈な吐き気のあとに強烈な食欲を感じる。ジェットコースターのように感性を刺激しまくられる。
    平山さんは読者を「殺しにかかる」ような小説を書きたかった、とのことだが、僕は見事この小説に殺しにかかられた。

    しかし、読後感はすっきりしている。主人公オオバカナコの生への執着がとても健全で、物語の消化をよくしたというところか。具材は贅を尽くしていてとても濃厚だけど胸やけしない不思議なハンバーガー。

  • ワンちゃんを殺人の道具に使うのは止めて〜〜〜( *`ω´)
    可哀想過ぎる!( *`ω´)
    殺し屋専門の定食屋さん「キャンティーン」。
    前にヤンジャンで載ってたんで読んだけど、なんちゅう設定なんや?ってのが第一印象。
    もし、私が殺し屋やったら、食べる時ぐらい普通に食べたいと思うけどな。周りが殺し屋ばっかりやったら、落ち着いて食べれんやん^^;
    グロさ満開やけど、あんまり怖いとかは思わんかった。普段から、そんな感じの本ばっか読んでるから?^^;
    とは言え、スイスイ読みやすく、こんなとこにバイトするカナコも一皮剥けて成長⁉︎した!
    ボンベロはどうなったんやろ?続編あるんかな?

  • めっちゃかっこよくて、私好みな物語でした。

    昨年映画化された原作が平山夢明だと知り、いつか読もうと思っていた作品。

    全体的にお洒落で、まるでタランティーノの映画を観ているような感覚でした。

    拷問に次ぐ拷問で、死んだ方がマシという状況が次から次へとやってくる世界に足を踏み入れてしまった主人公「オオバカナコ」。このネーミングセンスも最高です。

    殺し屋専門のダイナーで、ウェイトレスとしてボンベロの元に送り込まれます。
    数々の殺し屋が来店する度に起こるトラブルに毎回命がけで、死んだ方がマシな目に何度も合います。

    ボンベロの天才的な料理さばきや、最高級の道具、食材、殺し屋の舌を唸らせる絶品の料理の描写も想像を膨らませ、次から次へおこる目まぐるしい展開に引き込まれ、没頭して読み終えました。

    芸術的な観点で(絵画や音楽のような)私の中のとても好きな作品の1つに加わりました。

    映画版「ダイナー」は昨年タイミングが悪く見逃していたので、レンタル配信で観てみたいと思いますが、どうやら原作にいない登場人物が出ているようなので、多少違う感覚で見た方が良いのかなと思っています。
    蜷川実花なので、美しい映像も期待しています。

  • 映画→原作は初めて。でも、この作品はそれでよかった。
    そうじゃないとボンベロのイメージがもっとおじさんになっていただろう。
    ボンベロは藤原竜也、スキンは窪田正孝、これはもう絶対。

    客の中には気に入らなくておまえを殺そうとする奴もいれば、気に入ったから殺そうとする奴もいる。
    そんな狂った殺し屋専用の定食屋(ダイナー)で働く、オオバカナコ。30歳、バツイチ。人を殺した経験あり?

    最初のページからグロで困った。爪剥ぎ…ぞぞぞとした。
    そして、アレを食べたり、皮を剥いだり、そんな話ばかりで気絶しそう。
    でも、ダイナーにはそれを上回る面白さがある。

    異常な殺し屋たちが次々と仕掛けてくる罠、駆け引きに緊張しながらも、じつは全てがボンベロの鍋の上で転がされている気がしてならない。
    そんなボンベロの王としての魅力が堪らないのだ。

    ボンベロとカナコ、ふたりの駆け引き微妙な距離がいい。
    ふたりの間にあったものは恋?信頼?やっぱりダイナーやね。

    壮絶な戦いの後に…。
    カナコはボンベロは菊千代は生き残ることができるのか?
    ラストは映画の方が好きかなぁ。


    憎めない殺し屋たち。
    ボンベロの元カノ炎眉がいいわぁ。イメージは菜々緒さん。
    スキンは本当にいい人だな。優しくて病んでいて憂いがあって好みのタイプ。
    キッドは変な武器ばっかり出す悪いドラえもん。
    九もよかったな、どんなお尻しているんだろう。

    • くるたんさん
      けいたん♪
      読了おつかれさま♪
      映画→小説で良かったみたいだね♪

      いきなりグロ⁇私、気絶しそうだよ…(๑•﹏•๑*)でもそれ以上の面白さ?...
      けいたん♪
      読了おつかれさま♪
      映画→小説で良かったみたいだね♪

      いきなりグロ⁇私、気絶しそうだよ…(๑•﹏•๑*)でもそれ以上の面白さ?気になるねー!うーん、まずは映画からかなぁ♪
      2019/08/14
    • あいさん
      くるたん♪

      コメントありがとう(^-^)/
      うん、映画の世界をそのままに原作行った方がいいよ。
      一緒に窪田くんにキュンキュンしようよ〜
      ...
      くるたん♪

      コメントありがとう(^-^)/
      うん、映画の世界をそのままに原作行った方がいいよ。
      一緒に窪田くんにキュンキュンしようよ〜
      映画はキャアかっこいい、原作は男の世界かっこいい、って感じかな。アウトローっていうのかしら。
      どちらも面白かったです!
      2019/08/14
  • 文字通り痛いグロ描写、かと思ったら最高に美味しそうな肉汁たっぷりのハンバーガー、とにかくかっこいいボンベロとの若干の胸キュン展開、そしてキャラの立ったクレイジーな殺し屋達との今回こそは死ぬだろうという攻防の連続がサンドされた、ボリューミーかつ味濃いめな一冊。
    ボンベロは殿堂入りとして、キッドや炎眉がキャラとして好きだった。
    平山夢明さん初読みだけど、大満足。

  • これは星5つじゃ足りないくらい好きな作品です。
    前々から人に勧められていた本だったけど、「殺し屋が訪れる定食屋」というあらすじから、男の子が好きそうだなぁと思っているだけでなかなか手がつけられないでいました。
    でも読んでみたらびっくり!
    (私にとっては)恋愛要素もあると感じ、とても読みやすかったです。

    ボンベロという店の主人ボンベロはもちろん元殺し屋で、主人公のオオバカナコは携帯闇サイトのバイトに手を出してしまったせいで拷問を受ける羽目になり、その後ボンベロへと売られます。
    カナコが店にやって来た時ボンベロは言います
    「俺はここの王だ。ここは俺の宇宙であり、砂糖のひと粒までが俺の命令に従う」
    まさに独裁者。
    少しでも命令に背いたら殺されるという緊張感が漂いました。

    その後カナコは店にある世界一の酒を隠し人質に取ることでボンベロに殺されそうになるところをなんとか逃れます。ボンベロも最初はその大事なお酒を人質にとられているためカナコを殺さずにいましたが、カナコと関わるうちに人質のためではなく自分の意思でカナコを助けているようなシーンが何度もでてきます。
    その中で一番好きなのは、ボンベロが大抗争の中カナコだけをどうにか逃がそうとするシーン

    「やだよ一緒にいるよ」
    「無駄死にするな。なんのために俺が……」
    「わたしにそんな……人を犠牲にして生きる価値なんかないよ!」
    「負け犬のおまえが、なぜ生き残れたのかを知りたい」

    ここではやっとボンベロの本音が出てきて、カナコの存在がボンベロの中でかなり大きなものになっていることが分かります。このあと作中で彼が生き残っていたかどうかは描かれていませんが、ラストのラストまで「お願い!生きてて!」と願わずにはいられませんでした。

    また、ボンベロの他にもカナコに興味を持つ登場人物「スキン」「キッド」が出てきます。この2人の存在がまた、ヒロインを取り合う男的な感じで私にとってはツボでした(笑)

    今回の感想は恋愛要素の部分から書きましたが、この小説にはその他にもたくさん魅力がつまっています。
    食べ物もハンバーガーを食べたくなるくらい美味しく描かれているし、戦闘シーンが映像として頭に浮かぶくらい詳細に書かれているからハラハラして読む手が止まりませんでした。

    今度お腹を空かせてから、マックとかモスバーガーじゃない本格的なハンバーガーを食べに行こうと思います

  • 高額報酬につられ、軽い気持ちで闇サイトの「リスクあり」の仕事に手を出したオオバカナコ。結果、報酬を手にするどころか拉致され、殺されそうになるが、すんでのところで買い手がつき、殺し屋御用達レストランでウェイトレスをすることに。

    なにせ客は皆プロの殺し屋、コックももちろん殺し屋、ウェイトレスは次々潰され人手が足りないのだ…。

    ダイヤモンドで濾過された最高級の酒、ディーヴァ・ウォッカ(1億超え)を人質に、カナコは命の応酬を始める。ヤバい客揃いのダイナー、明日の命の保証もないが労働価値に応じた賄いが付く。子供から老人、ジャン・パトゥの香水を纏った美女に犬…集う奴らは皆いかれている。

    拷問シーンのエグさ、死体のグロテスクさ…顔が引きつるのに、ボンベロが作り出すハンバーガーやデザートには食欲をそそられ…。本能的な部分を揺さぶる作戦か。著者の他の作品も読んでみたい。

  • 2020年11月29日読了。

    【求む運転手。報酬30万。軽リスクあり】
    たまたま目についた携帯闇サイトの募集に応募した『オオバカナコ』だったが、それは危険極まりないバイトだった。
    訳も分からぬままヤクザに捕まり、殴られ、事務所で尋問され酷い目に遭う。
    だけど、地獄はここから。

    連れていかれたのは古い倉庫。
    そこに連れていかれた者は、吐き気がするようなやり方で、痛みからの解放で楽になれるなら早く殺してくれと思うような拷問をされながらゆっくりと殺されていく。
    女はオークションに掛けられ、買い手がつけば買い主の元へ。売れなければ始末される。
    売れたとしても、皮を剥いて壁に飾られるかもしれない。生きたまま解体するのを記録されるのかもしれない。単に豚や犬に喰わせられるのかもしれない。
    どちらにしてもタダでは済まない。

    結局、殴られた顔が酷かったのと歳をとりすぎているという理由で買い手が付かなかった『オオバカナコ』
    自分で掘らされた穴に突き落とされ生き埋めにされる直前、無我夢中で言った。
    「役に立ちます!わたし、料理が得意なんです」
    その言葉で買い手がつき、カナコはある店へと連れていかれる。

    そこは殺し屋達が集う専用のダイナー《キャンティーン》
    元殺し屋の店長『ボンベロ』の下で、ウェイトレスとして365日、24時間、休みなしで働く事に。

    「俺はここの王だ。ここは俺の宇宙であり、砂糖のひと粒までが俺の命令に従う」と豪語する『ボンベロ』や
    次から次へとやってくる様々な殺し屋達に何度も殺されかけながらも《キャンティーン》での日々を過ごしていく。


    平山夢明作品はかなり昔読んだ『メルキオールの惨劇』以来、2作品目。
    『メルキオールの惨劇』はかなりぶっ飛んだ内容だったような…イマイチ楽しめなかった記憶しかないが、今作はストーリー展開もしっかり練られていて楽しめた。

    グロ満載で、最近読んだ本の中ではかなり上位の凄惨さ。
    エゲツない殺戮シーンからの、天才シェフ『ボンベロ』のジューシーで重めなバーガーの調理シーンの振り幅が強烈。
    苦手な人は、その振り幅とか装丁とかアウトかもしれない。
    自分は無性にバーガー喰いたくなりました。

    殺し屋達のキャラクターも多く、ただの狂った奴らかと思いきや、裏では辛い過去や闇を抱えていたりと色々なバックボーン設定がある点も良かった。

    会話の最中に誰が喋っている台詞なのか分からなくなる事が何度かあって、そこは少し残念。

    解説にもあるが、著者の斬新で独特な比喩が多く、
    「象のあそこから小人が出て、それに横っ面を張られたような気分。」
    「味噌汁におしっこを入れられたような顔をしていた。」
    など、日本語の概念を破壊する勢いとはまさにその通りだなと思う。

    原作ファンには悪評高い映画版『ダイナー』だが、蜷川実花作品である事・キャストの豪華さからやはり観ないわけにはいかない気がする。

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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