なでし子物語

著者 :
  • ポプラ社
4.12
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本棚登録 : 579
レビュー : 121
  • Amazon.co.jp ・本 (389ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591131428

作品紹介・あらすじ

父を亡くし母に捨てられ、祖父に引き取られたものの、学校ではいじめに遭っている耀子。夫を若くして亡くした後、舅や息子と心が添わず、過去の思い出の中にだけ生きている照子。そして、照子の舅が愛人に生ませた男の子、立海。彼もまた、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しんでいる。時は一九八〇年、撫子の咲く地での三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かしはじめる-『四十九日のレシピ』の著者が放つ、あたたかな感動に満ちた物語。

感想・レビュー・書評

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  • 家庭教師の青井先生が耀子にくれた、今を変える魔法の言葉。
    「どうして、って思いそうになったら、どうしたらって言い換えるの」

    入院の合間に幼稚園に行っても、いつもぽつんとひとりぼっちだった小さな私にも
    今、居場所がなくてつらい思いをしている子どもたちにも
    もちろん、子どもを守る世代となっても、
    やっぱり世の中の理不尽と戦わねばならない大人たちにも、
    この言葉をかけてあげられたら、と思いました。
    「どうして」と自分を責めることなく、「どうしたら」なりたい自分になれるのか
    未来を見つめ、必死でもがいて戦う。その凛々しさが胸を打つ物語です。

    母に捨てられたのは、頭のねじが取れていてグズだからだ、と自分を責める9歳の耀子。
    権力者の父と年若い愛人の間に生まれ、その母にも去られた病弱な少年、立海。
    最愛の夫を若くして亡くし、忘れ形見の息子とは心が通い合わず、諦めの中で生きる照子。
    血の繋がった家族とは哀しいほど縁の薄い3人が、峰生の山奥の常夏荘で
    おずおずと手を差し伸べあいながら繋がっていくのが、切なくて、そしてうれしくて。

    感動作でありながら、表紙のイメージから
    「きっと、昭和初期の少女ふたりを描いたノスタルジックな物語なのね」
    と抱いていた予想を、軽やかに裏切られて驚く本でもあります。
    まさかもう、80年代が郷愁を帯びた時代として描かれようとは。。。

    2本とも一気に食べると叱られたパピコとか
    教育上見せたくない番組の筆頭だったドリフとか
    ラジオから流れるオリビア・ニュートン・ジョンの『ザナドゥ』とか、
    確かに懐かしいのだけれど、あの頃がもう、昔の範疇に入ってしまったかと思うと
    急に自分がおばあさんになってしまったようで、なんだかちょっとせつないような。

    でも、大人の事情に振り回されながらも、ノートに
    「自立、かおをあげて生きること。
    自律、うつくしく生きること、あたらしいじぶんをつくること」
    と書きつけて生き抜こうとする耀子に、
    いやいや、老け込んではいられないわ! と、勇気をもらって。

    離れたくない!と一生懸命小さな手を伸ばし合う燿子と立海は
    なんだか性格を逆転させたハイジとクララのようで
    未亡人である照子の視点を交えた分、ほろ苦いエッセンスが加わった
    日本版『アルプスの少女ハイジ』とも言うべき名作です。

    • だいさん
      『ザナドゥ』
      私はこの理想郷を今でも追い求めています。
      (テッドネルソンやオーソンウェルズ)
      『ザナドゥ』
      私はこの理想郷を今でも追い求めています。
      (テッドネルソンやオーソンウェルズ)
      2013/03/30
    • まろんさん
      だいさん☆

      オーソンウェルズは、『市民ケーン』でしょうか?
      不勉強な私は、テッドネルソンを知らなかったので
      検索してみたところ、コンピュー...
      だいさん☆

      オーソンウェルズは、『市民ケーン』でしょうか?
      不勉強な私は、テッドネルソンを知らなかったので
      検索してみたところ、コンピュータネットワークについて
      なんと1960年代に、画期的な目標を掲げて
      それを「ザナドゥ計画」と名付けた方なんですね。
      こんな昔に!と感動しました。
      2013/03/31
  • 小泉今日子さんの『書評』で読みたくなった作品。

    耀子と立海──。
    どんな理不尽なことも、受け入れなければならない幼い子供。
    耀子の生い立ちが痛々しくて、読むのがつらかったです。
    また、ひ弱ですぐに倒れてしまい、周囲に迷惑をかけることを恐れる立海の気持ちもすごくわかりました。

    そして青井先生がとてもいい。 
    耀子が自分のことを「グズだから」と卑下したときに、「丁寧だから人よりゆっくりなのかもね」と言ってあげた場面が好きです。
    洗濯物の畳み方を例に出して「丁寧で慎重なのはとても良いことなのよ」と、
    一つ一つ勉強していけば無理なことなんてないのだと。

    「自律」とは自らを律すること。
    美しく生きるということ。新しい自分を作ること。
    「自立」とは、自分の力で立つということ。
    うつむかずに顔を上げて生きること。

    「やらまいか」すごくいいです。
    「どうして」ではなく「どうしたら」と考える。

    「あぁ、もう、どうしてこうなっちゃうんだろう…」
    と、すぐに弱音を吐いてしまう自分への教訓にしたい。

  • とてもよかったです!
    幼い子の孤独には胸が詰まりますが、しだいに機会を得て認められ、育っていく‥
    見守る大人達もまた、動かされていくのです。

    峰生の大地主の遠藤家。
    跡取りの長男は早世し、その嫁で未亡人となったテルコは一人息子に反発され、心もとない寂しさを抱えつつも、その地で暮らしていた。
    遠藤家の林業を支えて働いている祖父のもとへ、幼い孫の耀子が引き取られてくる。
    耀子は父に死なれ、母には育児放棄されて、自分をクズだと思い、学校でいじめられても蹲っているだけの子だった。

    遠藤家の御曹司の立海(リュウカ)が峰生にやってくる。
    立海は当主が愛人に生ませた次男で、病弱だった。
    一見恵まれた立場のようでも、若い母から引き離され、祖父のように年の差がある父親の意のままに動かされる立海。
    孤独な二人の子供が出会い、無邪気な友情をひたむきに育んでいきます。
    お館の当主の跡取りと、雇い人の孫娘という立場の違いにも、しだいに気づかされるのですが‥

    立海の家庭教師の青井先生が、最初のうちはどれぐらい関わってくるのかわからないのですが、彼女が素晴らしい先生なのです。
    自立と自律ということを教え、「どうして」と思ったら「どうしたらいいか」考えるように、と教える。
    子供たちの前途がただ幸福なだけではないとわかっても、ここでの思い出と学んだことは、この先をまったく違う光で照らし続けることでしょう。
    ひとかけらの胸の痛みと共に、ひとかけらの勇気を分けてくれる物語でした。

  • 以前から評判を聞きながら読んでいなかったことを後悔する位、夢中で読んだ。
    今まで読んだ伊吹作品の中で一番感動した。

    血の繋がりもなく年齢も立場も違う耀子・立海・照子の3人は一時を常夏荘で共に過ごす。
    特に耀子は私と同じ歳。自分の小学4年の頃と照らし合わせて読んだ。ドリフの髭ダンスや漫才ブーム等とても懐かしい。

    幼い頃から家族の縁が薄く、人付き合いが苦手で周りから孤立し、いつも下ばかり向いていた。
    家庭教師の青井先生の教え「自立:かおをあげていきること、自律:うつくしくいきること」により、耀子は徐々に新しい自分をつくっていく。
    耀子の成長していく姿が生き生きと描かれていて、自分のことのように嬉しい。
    新しい自分をつくる喜びを知った耀子は、もう、うつむかない。
    両足に力を込めて前を向く。
    「やらまいか」
    勇気の出る言葉を貰えて、私もとても嬉しい。
    何度も泣けたけれど、何度も励まされた清々しい素敵な物語だった。
    耀子のその後がとても気になるので、続編も必ず読む!

  • 自然がのどかで豊かな常夏荘での、夏から秋の物語。
    山を管理する祖父に引き取られ使用人長屋で暮らす耀子と
    本家の嫡男で療養に訪れた立海の、小さな恋未満の物語。
    二人とも母親の愛情に恵まれずに育って、吐き出せない思いを小さな体にため込んで痛々しい。
    普通なら、他の誰にも邪魔されない二人だけの世界に逃げ込んでしまいそうだけど、そうならなかったのは峰生の土地のせいなのか。
    常夏荘の人たちが、みんなあたたかくて素朴で、ノスタルジックな味わいがありました。

    旧時代的な名家は、神秘的な別世界の様相ですが
    体を丈夫にするために女の子して育てるだとか
    一生分の肌着を用意しておくだとか。
    でも凛としたおあんさんはとても素敵。
    彼女の母として女としての目線が、愛おしくて切ない。
    青井先生も、最初やな感じの女?と思ったけど、かっこいい。
    ゆっくりじっくり、噛みしめて読みたい本です。

    劣等感に脅えていたヨウヨが、自分を認めて顔をあげて生きていこうとする。
    この世の理不尽を乗り越えて、やらまいか、というラストが好き。

  • とても良い話だった。先が気になり一気読み。子供が元気な姿を見るのは気持ちがいい。ネグレクト・いじめを受けている小4の耀子と病弱な地方の名家の年下の坊ちゃん・立海。そんな彼らを取り巻く大人たちも互いに影響しあって『新しい自分』になって行く。耀子と立海が子供の約束を忘れることなく繋がっていってくれたらと願う。彼らはどんな青春期を迎えるのだろう。読み終えても余韻が残ってる。

  • 一気に読んでしまった。世界に引き込まれた。
    大人の都合で切ない想いをいっぱい抱えた子ども二人の出会いと、その二人を受け入れた大人たちの想い。
    すごく丁寧に描かれていた。
    「自立」と「自律」「やらまいか」がとてもいい。

  • 子ども2人がいじらしいのでぎゅっとしてあげたくなってしまいます。複雑な境遇で持てはやされたり疎ましがられたりするのは全く大人の事情。子どもには全然関係ないのだけれど誰の子供だからとか余計な付属物で色眼鏡を掛けてしまうのですよね。
    子どもも残酷。家の事情で服が汚れていたり、お金が無くて食べていなくてガリガリだったりすると、菌扱いや貧乏人扱いでいじめが発生するし、どうしようもない事情というものが理解できずに責めつづける。その時の子供の顔というのはゾッとするほど卑しいものだと思います。でも大人になったらそれが矯められるのかといえばそんなことはなく、表面に出さない狡猾さが産まれるだけなのでしょう。
    そんな中でも絆を結ぶ子供たち、大人達の美しい物語は心揺さぶります。美しい描写と心寒い子供たちの境遇。小さい火を寄せ集めて子供たちを温めようとする心優しい大人達。そんな優しいコミュニティーは心無い身勝手な人間に壊されてしまいます。
    でもいつか自分たちで選んで新たな世界へ歩んで欲しい。そう思います。
    というか、彼らは僕とほぼ同じ年なんだな、1980年に小学生ですから。もしかしたら身の周りで頑張っている同胞たちの一人かもしれないと思うと感慨深い本です。

  • 『四十九日のレシピ』の作家さんの本。

    最初の頃の、いじめの描写が残酷すぎて、読み進めるのが困難だったので
    一旦、ブクログのレビューをみたところ、高い評価だったので
    読み続けました。

    燿子と立海、それぞれの境遇のなかでも、お互いを必要として健気。
    周囲の大人たちが温かく見守っているのもすてきでした。

  • ★4.5

    間宮耀子は、父を早くに亡くし、母から捨てられ…父の故郷で祖父の住む峰生の常夏荘にやって来た。
    祖父は代々林業で栄えてきた遠藤家の山の管理人…常夏荘の長屋に住む。
    耀子は、学校でからかわれたり、嫌な事を言われたりされたら目を閉じて俯く事にしている。無かった事になるから…。
    常夏荘は遠藤家の跡継ぎだった夫を若くして亡くした『おあんさん』こと照子が管理している。
    常夏荘に、病弱で学校を休み療養にお坊ちゃま立海と家庭教師青井が預けられる。
    照子は、義父とも息子ともそりが合わずただ古びてゆく家の様に「しょうがないのやわ…」と、夫の思い出とともに静かに暮らしていた。

    苛めを受けていた耀子と、人の感情を敏感に感じ取り過ぎて吐いてしまう立海
    立海もまた、友達も出来ず苛められていた。
    そんな同じ様な苦しみを抱えた二人は、次第に仲良くなりお互いが無くてはならない
    存在になっていった。
    青井先生の導きもあり、二人は少しずつ成長していきます。
    子供達が大人の理不尽さに振り回され、苦しむ様子は本当に切なくなります。
    大人達にも色々なしがらみがあって…。
    照子も、そんな二人に触れるうち、変わってゆく。
    それは、遠藤家に仕える人々の心もゆっくりと温かみを帯びて変化していく。

    青井先生の言葉が本当に素敵
    自立--かおを上げて生きること
    自律--うつくしく生きること。あたらしいじぶんをつくること。

    立海も耀子も青井先生に巡り会えて本当に良かった。

    ハム兄弟も可愛い…『やらまいか』…良いね。

    照子の亡くなった夫・龍一郎もとても素敵な人だった。
    素敵な言葉を沢山照子に送ってる…。

    耀子の祖父の言葉も武骨だけど、優しさに溢れてる。
    不器用だけど、とても深い愛

    人と人との心が繋がって行く事で愛は深く伝わっていくんだな…。
    強く生きる事の勇気の大切さを感じました。
    とっても、温かい気持ちになれた物語でした。

    耀子と立海の大きくなった未来を知りたいな(❁´ω`❁)


    【撫子】
    花屋にはないちっぽけで、風が吹けばすぐ揺れる
    だけど折れない。いつも懸命に天に仰いでいる。
    天女のご加護

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著者プロフィール

伊吹有喜(いぶき・ゆき)
1969年三重県生まれ。三重県立四日市高等学校、中央大学法学部法律学科卒業。四日市市観光大使。1991年に出版社に入社。雑誌主催のイベント関連業務、着物雑誌編集部、ファッション誌編集部を経て、フリーライターになる。2008年に永島順子(ながしま・じゅんこ)名義で応募した『風待ちのひと』(応募時のタイトルは「夏の終わりのトラヴィアータ」)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞。2009年に筆名とタイトルを改め同作で小説家デビュー。2014年『ミッドナイト・バス』で第27回山本周五郎賞候補、第151回直木賞候補。2017年『彼方の友へ』(実業之日本社)本作で第158回直木賞候補。

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